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第三十三話「たったひとつの命を賭けて!」②

 834:名前:ホワイトクロック


 重ね重ね、すまんな。

 一応、俺達の手はずを改めて説明しとくぜ? いわばこれは最終ブリーフィングだ。

 

 まずこのあと、クオンコロニーの天蓋照明が一斉に消えて、このブロックの給電も一時的に停止する事になってるからな……間違いなく、手元も見えねぇくらいの真っ暗闇になる。

 

 それが合図でもあるから、真っ暗になったらすぐさま行動開始だ。

 暗視システムの準備は出来てるな?


 相手は強化人間だから、暗視システム程度は当たり前だろうが、10秒後に照明を復旧させ、フラッシュバンをたたっこむ事で、ヤツの目を潰す。

 

 さすがに、暗順応から明順応への過順応タイムラグと言う隙が出来るはずだ。

 

 連中、暗順応は即時で対応できるが、そこからいきなり明るくなると暗視モードから通常視覚モードへの即時切り替えを強要される事になる。

 その上でフラッシュバンなんぞ炊かれたら、さすがに即座には対応しきれないはずだ。


 ルシフェルのスペックははっきりしないが、先の戦闘での敵サイド強化人間の戦力評価として、第二世代以上第三世代未満ってところだと推測されている。

 

 こっちの最新型の第三世代強化人間でも、この条件なら視覚順応に5秒はかかるとの事だから、それ以上の能力は備えていないはずだ。

 

 その隙に一般人を伏せさせて、シールドを展開し、ALスモークも焚く。

 

 ルシフェルは一見丸腰に見えるが、腕部にレーザーブレード発振器らしきものを装備してる。

 厄介なことに近接戦闘型って訳だ。

 

 レーザーブレードはレーザーキャノンとしても使えるから、個体戦闘力は相当高いと見ていいだろう。

 

 障壁シールドはレーザーまでは防ぎきれないからな……ALスモーク頼みってのは心許ないが、いざって時はてめぇらの身体を張ってでも止めろ。

 

 一般人の死傷者はゼロで済ます……これは本作戦における絶対条件なのは言うまでもねぇ。

 

 まぁ、訓練の時のシールド展開最高タイムは30秒台だったが、ここはひとつド根性で最短記録を更新するって事で頼むわ。

 

 第二段階として、一般人へのシールド展開後に、校舎の屋上に配置したスナイパー隊によるアンチマテリアルレールガンでの一斉狙撃を行う。


 強化人間の反応速度なら、それすらも回避するかもしれんがな。

 長距離狙撃が駄目なら、隠蔽装置で控えてる抜刀隊による直接白兵戦を仕掛ける……いくら近接戦闘用強化人間でも、ケルベロス率いる近接特化の5人の重サイボーグ総掛かりなら討ち果たせるだろう。


 それと例の奴らの増援の可能性もある。

 周辺警戒要員は、せいぜい気張れよ……隠蔽装置使われてても、ちょっとした大気の揺らぎや風景の屈折で判別出来るからな。

 

 835:名前:名もなき紳士


 天蓋照明って……空が消えるってことか!

 よく、そんな無茶な事、政府が許したな。


 836:名前:ホワイトクロック


 新政権のクオン貴族会の連中は前のアホども違って、物分りがいいしな。

 うちのCEOが先回りでクオン政府と直接交渉して、本プロジェクトへの全面協力の言質を引き出してくれたから、なんら問題ない。


 やっこさん……昼行灯のお飾りCEOなんて言われてたが、さっきの決断と言い、おっそろしく有能じゃねぇか……。

 まったく、頼もしい限りだぜ。


 天蓋照明の消灯については、すでにここら以外の区画では、今現在、緊急メンテナンスによる天蓋部の一斉消灯実施のお知らせが回ってるからな。

 

 一般市民にとっては、直前のお知らせではあるものの、予定通りの事で時間も極めて短時間だからな。

 さしたる混乱もないだろう。


 消灯時の事故対策の名目で、治安維持局もわんさかパトロイドを出してるし、外もエグザバイトの留守番組が戦闘態勢に入ってるからな。

 万が一取り逃しても、逃げ場なんてねぇよ。


 ……んじゃま、野郎共気張れよ!

 ぼちぼち、作戦開始時刻……180秒前。


 エンジェルには、戦闘モード強制起動コマンドをプライマリーオーダーとして送信!

 これで各種装備のロックも解除されるだろうから、最低限、自分の身は守れるはずだ。


 もっとも、コマンド送信は直前で構わん……早すぎると、なんかやらかしそうだからな。

 

 各員、シールド起動準備! 構えっ! 覚悟決めろよっ!


 837:名前:メディック


 大将っ! ストップ! ストップ! ちょっと待った!

 今、こっちの軍用データ回線にルシフェルからのメッセージと思わしきものが送信されて来たのっ!


 内容読み上げるから、皆、ちょっとだけ待って!


「当方に投降の意思あり。この場で事を荒立てるつもりは無い。せっかくのお祭りなのだから、今日という日を平和裏に終わらせたい。そちらの指示を待つ、どうか貴官らの賢明なる判断を心から願う」


 ……ど、どうしますか? これは事実上の降伏宣言ではないかと。

 

 それにこんな所で、強制的に戦闘モードへの切り替えなんてやったら、エンジェルの精神的ダメージが計り知れない……。


 あの子……自分が戦う所を友達に見せたくないみたいなのよ。

 だから、考え直して!

 

 838:名前:ホワイトクロック


 な、なんだと? た、確かに……今ここで、ドンパチ始めちまったら、文化祭も台無しになる上に、エンジェルとの信頼関係もズタズタになる……か。

 

 ヤツの提案は渡りに船っちゃ渡りに船なんだが……。

 ああ、ちくしょうっ! この期に及んで敵が投降してくるなんて、予想外も良いところだ!


 もういいっ! 解った、解った!


 作戦中止! 作戦中止だっ!

 クオン政府にも作戦中止と天蓋消灯もキャンセルするように至急通達!


 とりあえず、ここを見てる奴ら……。

 

 すまんが、こんな事になっちまったからな。

 俺はやっこさんとじっくりと話し合ってみるから、実況もここまでだ。

 

 なんとも締まらねぇ幕引きだが……こう言うのも悪くはないか。

 そんな訳だ……じゃあなっ! お騒がせしたな!


 839:名前:謎のお兄さん


 ええっ! なに、この展開……これはさすがの僕も予想外だよっ!

 シュバルツのお姉さんも、ここで降伏とかホント、何しに来たっての? 意味分かんないよ!

 

 でもまぁ、現場指揮官が作戦中止を決めたんだから、僕も異論はないかな。


 後追いだけど、交戦規定コードβは緊急解除したよ。

 もうすでにあっちこっちで動いちゃってたけど、僕が皆にごめんなさいすれば、済む話だしね……。

 

 エンジェルちゃんにもバレてないね……よしよし。


 皆もお疲れ様……何か、終わっちゃったみたい。

 

 こう言う誤算はむしろ歓迎だけどね。

 ……いやぁ、僕もまだまだだねぇ……ちょっと頭冷やしてこようっと。


 840:名前:THE紳士


 うひょー、あまりにマジな空気にこれまで敢えて黙ってたんだが。

 え? なにこれ……もしかして、平和エンド?

 

 いやぁ、良かった、良かったー!


 あれかな? その敵の強化人間も天使ちゃんの優しさに触れて、やる気なくなったとかそんななのかな?


 さすがに、これはもう人外バトル勃発の上での文化祭の中止も避けられないかな……って思ってたんだけど。

 まさかの平和的解決……なんて、ドラマティックなんだ!

 

 841:名前:シャクレ


 天使ちゃん……さすがだよ。

 本人意識してやったのか知らないけど、冷酷無比な敵の刺客を武器も使わず、そのピュアハートで問答無用で改心させて投降させちゃうなんて……素晴らしすぎるっ!


 まぁ、あの子と触れ合ったら、戦争とか馬鹿らしくなるだろうからなぁ。

 いやぁ……なんと言うか、まさにハッピーエンドって感じだな。


 えがったえがった……本当に良かった。


 842:名前:砂


 ああ、シャクレ……THE!

 良かった……ホントに良かったぁあああっ!


 実を言うと、俺も志願して、スナイプ隊に助っ人として参加してたんだ。

 

 けど、あんな大一番……トリガーにかけた指がガクブルでさ……。

 おまけにターゲットはあんな美人さん……しかも、なんか思いっきり目が合っちゃったんだ。


 もう、そっから先は頭真っ白……もう、神様に祈っちまったよ。

 頼むから、避けてくれ……ってさ。


 作戦中止の号令が出た時、心底安堵したよ……。

 

 他のスナイパー連中ももう装備投げ出して、揃って屋上で大の字になってるんだけど、全員で馬鹿笑い中さ。

 他の兵隊連中もあっちこっちでへたり込みそうになってるから、似たようなもんみたいだな。

 

 あ、こっちから天使ちゃん達見えてるから、このまま実況を続けてみるわ。


 天使ちゃんは浴衣姿で何事もなかったかのように、お姉さんにベッタリ。

 いいなぁ……その場所、代わりたいんだけどっ!

 

 お姉さんに綿あめ買ってもらって、ご機嫌で食べながら、歩いてたんだけど、お姉さんが急に立ち止まって、何か話したら、涙目になってすっごいがっかりしてる……。

 

 でも、なんかギュッと抱きしめられて、耳元で何か囁かれて、しょうがないって思ったみたいで、一歩離れてビシッと敬礼。


 お姉さんも胸に手を添える堂に入った敬礼みたいなので応えて、踵を揃えて回れ右。

 あれって、古代ドイツ式だっけ?

 

 そして、そのまま時々振り返りながら、手を振って反対方向に向かって静かに歩いていく……。

 

 天使ちゃんもまるで友達にバイバイするみたいに、手を振りながらお姉さんを見送ってる。

 

 けど、泣いてるのかな? 時々、手で目を擦ってる……そっか、すっかり仲良しになれたんだね……。

 敵とか味方とか立場を超えて通じ合えた……か。

 

 なんだか、映画のエンディングみたいな光景だ……。

 天使ちゃんは、天使だった! 異論は認めない。


 845:名前:名もなき紳士


 だなっ! 人知れず、戦いの幕が降りた。

 起こるはずだった悲劇も、戦いも……天使ちゃんの笑顔ひとつで綺麗サッパリ無かった事に……。


 俺は……猛烈に感動してるぞ!


 846:名前:砂


 そうだな……俺もなんだか泣けてきたよ。

 天使ちゃん……君は……やっぱり最高だっ!

 愛してるーっ! 抱いてーっ! マジでっ! 


 847:名前:THE紳士


 砂姐さん……ちょっと落ち着こうな。

 どうどう。

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