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第三十話「ぶんかさい」④

「いやはや、なんと言うか持つべきものはなんとやら……やね。スナダさんやダンさん、シュワさん達とは、クオンで降下キャンプやってなきゃ、出会えんかったんやろけど……。そんな人達が当たり前のように手助けしてくれるってのは、嬉しい話やね……うちらクオンの住民も満更やないって気になってくるわ」


「なのですよ……。でも、さっき見た感じだとユリのところのメイド喫茶と宇宙活動部の展示が、際立って大人気って感じだったのですよ……なんでなのです?」


「せやな、他もそれなりに混んではいたけど、そこまでごった返してない感じやったし……。なんでこんな偏ってるんやろな……? なんかゴツい外国人もやたら多いみたいやしなぁ……。女子校の文化祭にしては、やけに男の人が多かったわ……。去年は外部のお客さんと言っても、保護者や進学予定の中学生くらいで男の人なんて、全然見んかったよなぁ……」


「理由はよく解りませんけど、うちの文化祭の入場チケット一時期一枚10万クレジットで取引されてたらしいですわよ……。結局、理由は誰も解らないみたいですけど……」


 ユリ、理由知ってるのです。

 

 クオンに派遣されたエスクロン宇宙軍第三軌道降下揚陸兵団の皆さんが、命の洗濯場として、サクラダ高校文化祭に参加したいとか言い出したみたいなのですよ……。


 常識的に考えて却下されると思ってたら、まさかのCEOのゴーサインが出たとかで……。

 

 エスクロンの宇宙軍が、サクラダ高校のOBに連絡しまくって、1000人分のチケット買い占めー! とかやった上にお金に糸目をつけなかったせいで、謝礼金の相場が10万とかになっちゃったのです……。

 

 ちなみに、チケットについては、原則譲渡転売は禁止ってなってるんだけど。


 チケット発行者への謝礼金は特に明確に禁じられてなくて、いつの間にかチケット代金ではなく、謝礼金と言う名目でお金が支払われる事になってしまったのですよ。

 

 おまけに、想定以上の需要が発生し……相場ってものが自然発生しちゃったのです。


 ちなみに、学校側も慌てて厳格化やチケットコードと個人情報の紐付けとかで対応しようとしたんだけど。

 学生はともかく、OBからクレームが来て、学生のチケット発行権限だけを縮小……保護者限定って形にしたらしいのです。


 なにせ、軽く億単位のお金が動くような事態になってのはもう確実で……。

 学生が犯罪に巻き込まれたり、大金を手に入れてしまったりとか、恐喝だの強請り集りなどなど……いろいろな問題が想定されたので、そこら辺はきっちり対策。


 賢明な判断だったのですよ……。

 OBの皆さんは……皆大人なので、そこら辺はちゃんと自己責任でって事で。

 

「あれかなぁ……みんな、お祭りに飢えとったのかな? ほら、他の国では新年になると花火打ち上げたり、バカ騒ぎとかしたり、季節の変わり目とか何かに付けて、イベントやったり、お祭り騒ぎになったりするらしいやん。クオンじゃこう言う馬鹿騒ぎってのうなって久しいんよ……」


 ……それって、エスクロンの事かな?

 お祭り自体は、あんまり行ったこと無いけど、知識としては知ってるし、訓練名目でお祭りの会場警備なんかに動員された事があるから、間接的に見たことあるのもある。


「エスクロンだと、割と年中、毎月一回はどこかで大きなお祭りやイベントやってるのですよ。特に夏の先祖祭りとお正月の宇宙花火大会は見ものなのですよ……クオンでは、そう言うのやらないのです?」


 ……先祖祭りってのは、8月の半ばくらいにオボンってお休みウィークがあって、その期間はご先祖様を敬って、親戚一同集まって、オボンの間だけ入場出来るメモリアルパレスに集まって、ご先祖様やすでに故人となった一族の人達の逸話や思い出話でもしながら、皆で騒ごうって感じ?


 他にも年始年末にもお休み週間があって、里帰りしたりする習慣もある。

 

 一年の最後の日、オオミソカの夜は皆で麺類を食べて、年明けたらお饅頭やお団子を食べて一眠りしたら、オセチって言う豪華料理があちこちのお店や一般家庭で振る舞われるので、皆で取皿とお箸もってお出かけして、食べ歩きするのです。

 

 オセチは、食べてみてとっても美味しかったら、お年玉って言うビー玉みたいなのをお返しに手渡す……オセチを作る側はお年玉の数を競って、優勝者には特別な栄誉……「あけましておめでとう!」って音頭を取る役割が与えられるのですよ。

 

 除夜の鐘ってイベントもあって、皆でガンガン鐘鳴らして、ロケット花火打ち上げたり大騒ぎして、年越しカウントダウンして、ゼロになる瞬間は皆で一斉にジャンプするのですよー。

 

 エスクロンのお正月ってこんな感じ……。

 ユリもお正月は里帰りの予定なので、今から楽しみなのですよ。


 それに春と秋にも黄金週間とか言う大型連休があって、やっぱりあちこちでお祭りをやる。

 

 この辺は、由来は良く解らないんだけど、大昔の日本では5月と10月にそんな感じの連休があって、皆で遊びに行ったりとかしてたらしいのです。


 1月、5月、8月、10月……一年に四回のお休み週間。

 ホントは間隔的に5月より4月の方がって思うんだけど。


 3月、4月は、年度の切り替わりでどこも休みどころじゃないんで、それが一息ついたタイミングってのは、悪くないってんで、5月に連休を取るって事で習慣化したらしいのです。


 地域によっては、子供祭りって言う小学生未満の子ども達主催のお祭りをやるのですよ?

 予算はあげるから、皆で好きにお祭り企画してって丸投げするお祭りなので、大抵グダグダになるけど、大人も一緒になってグダグダ感を楽しむって、ちょっと変なお祭りなのです。

 

 10月は……古来日本の風習でどうもオヒガンって言う収穫感謝祭みたいなのをやってたらしいし、その関係でお祝いの日を設けてたというので、そのまま真似たって感じ。


 合成食材は季節なんて関係ないから、あんまりピンとこないけど。

 天然食材のお米……それも古代農法にこだわった最高級品だと、種撒いてから収穫まで、一年がかりとかそんな調子らしいので、そりゃ神様に感謝して、お祭りもやりたくなるよね。

 

 天然食材、それも穀物や果物系は秋が収穫ってのが多いらしいので、10月は美味しい物を食べよう週間って感じでもあるのです。

 

 いずれにせよ、お休み週間は、大半の部署が一週間ほどお休みになるし、花火とかバンバン打ち上げて、あっちこっちでどんちゃん騒ぎ。

 

 レストランやコンビニみたいな食料品の流通部門や旅館とかホテル経営、レジャー施設運営部門はむしろ稼ぎどきって事で大忙しらしいのです。

 

 それでも中には、喧騒や仕事から離れてまったりしたいって人もいるから、そう言う人向けの寂れた雰囲気のリゾート惑星なんかもあるのですよ。

 

 そう言うところも年配の人達には人気スポットになってたりするのです。

 でも、本気でなにもないので、ユリには何が良いのかさっぱりなのですよ……。

 

 なお、一般部署や学校は皆、お休み……軍隊ですら、半分がお休みになる。

 

 当然ながら人が派手に動くので、交通機関は大忙しで、宇宙港もごった返すし、エスクロンの各島や海中都市を結ぶ海中リニアハイウェイも車両が数珠つなぎになったりする。


 もっとも、銀河連合の一大勢力でもあるエスクロン勢がそんな風に自分達の都合で休み週間作ったり、イベント乱発とかやってるせいで、当然ながら他の星系でも影響が出て、他でも年始年末はお休みとか、夏休みとか同じような時期に取るようになってるらしいのです。


 ちなみに、どこでもお休み週間の経済効果が凄いって事で、黄金週間も真似しようかとかいってるとかなんとか……。

 

 皆でお休みってなって、あちこちでイベントがあると、じゃあお出かけしようってなるし、皆、お金も使うから、休みを増やせば、景気も良くなるのですよ。


 花火祭りとか、ホント惑星規模での大騒ぎなのですよ!

 

 なお、花火と言っても昔のように火薬を打ち上げるんじゃなくて、宇宙空間で小型の太陽衛星を乱舞させる宇宙花火と称するものを、皆で見るのですよ。


 星空を背景にカラフルな光を明滅させながら、編隊組んで乱舞する太陽衛星を明かりを消した地上から見上げる……とってもキレイなのです。


 以上、エスクロンのお祭りとお休み事情、解説終わりっ!

この世界は600年後の未来世界です。

まぁ、日本の風習なんかも変な形で伝わる……なんて普通にあるでしょうね。


なんとなく、単語と断片的なイベントを拾ってきて、いい加減に繋ぎ合わせたって感じですが、まさにその通りだったりします。


エスクロンの人達も、ホントにこんなんでいいのかなぁ……と思いつつも、なんとなく皆、楽しみながら、続けてます。


ちなみに、ユリちゃんはこんな感じで人と話してる最中に連想ゲーム式に、だぁーっと考え込むと言う癖があります。


もっとも、思考速度は一般人の比じゃないので、時間にして数秒くらいで戻ってきてるので、周りからはあんまり違和感ないという。


けど、たまに唐突に話がすっとぶってのは相変わらず。

アヤメさん達は慣れてきてるので、大体察してさらっと流してます。(笑)

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