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第三話「宇宙活動部っ!」②

 思案に耽っていると、困ったような様子で二人が私のことをじっと見つめてるのに気づく。

 

 ……ああ、ダイブアクセス中って、傍目にはボケーと遠く見てるような感じになるんだった。

 ユリが今見てるのは、ユリの脳内にダイレクトに送信された情報を、サブシステムで視覚情報化してるから、外からは見えない。

 

 唐突に人前で、こう言う事するから駄目なんだよね……。

 

「……これ……活動記録、一緒……見る?」

 

 言いながら、二人にも何を見てるのか、解かりやすく携帯端末の空間投影モニター機能で、今見ていた宇宙活動部の活動記録を表示させる。

 

「おおーっ! 空間投影式の携帯端末とか、ええの使っとるんやな。あ、これOBのハセガワ先輩が写っとるやん! これどうしたん?」


「……学校……データベース……あっ」


 それっきり、思わず押し黙る。


「……あっ……ってなんやーっ!」


「そ、そうですのっ! 今のあっ……って……何か重大なことに気付いたとかそれ系ですわ!」


 先輩方、テンション高いです。

 けど、学校のデータベースに強制侵入して、過去の活動記録データをかっぱらってきたと説明するのは、ちょっと語弊があるような。

 

 と言うか、これ良かったのかなぁ。

 

 一応、生徒でもアクセス出来るみたいだけど、生徒権限だとめっちゃ権限限定されてるからって、ちょっとイラッとして、権限を教員レベルに書き換えちゃったけど……強制電子介入システム使って、無理やりやっちゃって良かったのだろうか?

 

 なんか、生徒の個人情報とか成績データとかにもアクセス出来ちゃってるって、これってどうなのかな?


 今、解った……多分、これ人に言ったらダメなやつだよ。

 エスクロンじゃ、こう言うハッキングって、防げない方がみっともない……「恥」とされる。


 逆に高度なセキュリティを突破するような技術を持つ側が、むしろ称賛される……そんな風潮があるんだけど。

 

 一般的には、ハッキングってあんまり、良くない……星系によっては、犯罪扱いにもなるんだった。

 

 速やかにアクセス権限を生徒権限に戻して、アクセスログも削除。

 管理者IDに偽装した上で、電子ステルスアクセスモードに移行……コレでよし。


 ……バレなきゃ、犯罪にもならないのですよ! 


「うん、気にしないで欲しいよ。大したことないから」


 凄い……珍しくスラスラ喋れた。

 

 ユリちゃん、クールに流せたよ。キリッ。

 ほっぺの辺りにツーッと汗が流れるんだけど、ハンカチでさっと拭く……うん、多分問題ない。


「エリー……この子って……」


「……めちゃくちゃ面白い子よね。いいからここは話、合わせときなさいな」


「はいなー! うん、解ったで! ユリちゃん、なんでもないんやな?」


「なんでも無いのですよー!」


 何だか良く解らないけど、流してもらえたようだった。

 

 いくつかの記録映像を三人で見る。

 野外生活って、割には何だか凄く楽しそう……確かに、これはお気楽、お遊び感覚って感じ。

 

 先輩達もこんな風にまとまった活動記録を見る機会はなかったみたいで、もうテンション上がりっぱなし!

 

 コロニー生活なんてやってると、どうしても付きまとう閉塞感。

 何処へ行っても、管理されてるような窮屈な生活。

 

 それから、解放される……記録に残された彼女達の笑顔は、心からのもので……。


 見てるこっちも楽しくなってくる……。

 

 先輩達のハイテンションもそれ故にで、ユリもちょっと楽しそうって思い始めてきた。

 

 ユリの知る野外生活ってのは、ちょっと都市から離れるととっても過酷なエスクロンでの地上生活サバイバル。


 お父さんが趣味で、最小限の装備で自然環境で一週間過ごすとか、そう言うのが好きで、付き合わされてたんだけどね。

 

 キャンプとかアウトドアとか生易しいものじゃなく、サバイバル訓練だったような気がする……あれって。

 

 実際、軍事教練でそんな感じの訓練もやったけど、そっちの方がまだ生易しかった。

 少なくとも軍事教練は、若い女性への気遣いってことで、演習場に屋外トイレくらいは設置してくれてたし、シャワーもキャンピングカーみたいなのを用意して、全員に使わせてくれた。

 

 食事も現地調達の、訳の解らない植物やら謎の生物を解体……なんて事もなく、ちょっと味気ない軍用レーション。


 そんなでも、湯気の出てるちゃんと温めた物で、お菓子やジュースなんかも支給された。


 兵士に粗末な食事なんてさせると、あからさまに士気……皆のやる気がなくなるので、戦場でこそ、食事は楽しく元気が出るようにって色々工夫してるんだとか。

 

 お父さんサバイバルは、トイレもアウトドア、シャワーも雨降ったら服脱いで、全裸で浴びろとかそんな調子。

 お父さん……あれってば、女の子には、とってもハードでした。

 

 食料も現地調達が基本……何だか良く解らない生き物とか、毒々しい色だったり、へんてこな味の果物や、木の実だって食べた。


 背に腹は代えられないのです……ううっ、あんなモノやこんなモノ……飢えてなきゃ、絶対食べなかったけど。

 それしか食べられないなら、食べるしか無かったのですよ……。

 

 でも、シゴキ目的の軍事教練の方が全然まともって、どう言うこと?

 お父さんって、とっても優しくて、いいお父さんなんだけど、あの趣味だけはいただけない……。


 他の姉二人も、お母さんも頑として付き合わなくて、寂しそうだったからなんとなく、たびたび付き合ってたけど……ユリってば、親孝行娘だよね……。

 

 惑星クオンは、ちょっと酸素濃度が低いくらいで、環境保護シールドがあるなら、なんとかなるレベル……。


 エスクロンみたいに、軽い気持ちで誰かが放した虫が巨大化してたりとか、新種の生物クリーチャーが自然発生して、襲いかかってくるとか、そんなのは無いと思う。

 

 いろいろ調べてみると、地上にもいくつか娯楽施設やレクリエーション施設なんかもあって、そこらへんはそれなりの環境が維持されていて、観光や遊びに行く感覚で結構な人が訪れているらしい。

 

 定期便は流石にないみたいだけど、衛星軌道上に無人管制ステーションも設置されてるから、亜光速ドライブ艦の発着も問題ない。


 旅行会社とかが企画して、航宙艦をチャーターして団体さんで降りてったり、開発公団の連絡船に便乗って形で、民間人の立ち入りも割とフリーダムな様子だった。

 

 どうもコロニーの人々も、コロニーに引き篭もってる訳じゃなくて、割と積極的に地上世界に降りていっているようだった。

 

 なんだかんだで、コロニー生活なんてやってると、遠い地平線やどこまでも高い空……大自然ってものが恋しくなるのかもしれないね。

 

 気圧や酸素濃度の不安定さ、気温の低さも、場所によりけりみたいだし、その程度の情報なら色々公開してそうだから、下準備と調査をしっかりやっとけば、なんとでもなりそうだった。

 

 この二人だけってなると、もはや不安要素しかないけど、ユリがいれば、いくらでもフォローできる。

 

 と言うか、フォローしなければと言う義務感がフツフツと……。

 優れた者、名誉あるものは、世のため、人のため、義を見て何とかは何とかなのです!


 ユリもエスクロン人の端くれなので、誰かのお役に立ちたいのです!

 

「……宇宙活動……ちょっと楽しそう……」


 色々な思いが凝縮された結果がこれってのもなんだけど。

 

 そう思ったのです。

 

 ちなみに、裸になって池みたいなのに入ってたのは、どうも温泉を見つけて、皆で入ってたとかそんなだったらしい。


 温泉……おっきいお風呂っ!

 視線を遮るものが何も無いお外でってのは、ちょっと恥ずかしいかもけど、お風呂は大好きっ!


 それに開発中惑星なんて誰もいないから、人目とか気にしなくてもいい……。

 実際、スコールのシャワーを裸になって浴びるのも慣れると案外平気だし、とっても気持ちよかった。


 強化人間なんてやってると、検査や調整で人前で裸になるとかもよくあることなので、あんまり気にもならない。

 でもでもっ! ユリは露出狂とかじゃないのですっ!


 一人部屋で夜寝る時はいつも裸で寝てたんだけど、キリコ姉と一緒に住むようになってからは、パジャマくらい着ろってキリコ姉に怒られて、渋々従ってるもんで、地味にストレスになってたりするんだけど……。


 人前で裸になるのが好きって訳じゃないから、ユリは変態さんじゃないのですっ!

 

 とにかく、この子達のはしゃぎっぷりも開放感から……そう考えると理解も出来なくもないのです。


 いいなぁ……。

 女の子同士、人目を気にしないで地上世界の温泉とか……ちょっと憧れちゃうな……なんて思う。


 皆で、火を囲んでご飯食べたり……星空を眺めたり……まさに青春って感じ!

 これ良いんじゃないかな?

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