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第二十七話「宇宙の上の浮遊体験」①

 ……そんな訳で、試練の時は終わったのですよ!

 

 メイド服でのトラム旅を終えて、すでに宇宙港の移送カーゴに乗り換えたのです!


 いつも通り、あっちこっち上へ下へと移動中。

 キリコ姉と、トラムで知り合ったユズコちゃんともお別れして、冴さん達と一緒なのです。


 ユズコちゃん、小学生らしいんだけど……。

 ユリのメイド服姿が珍しかったみたいで、超見てて、おまけにとっても可愛いかったので、思わず、話しかけちゃって……。


 怖がられるかと思ったら、むしろ懐かれて、すっかり仲良しになっちゃったのです!

 

 ちっこくって可愛い子! キャンプの話とかもノリノリで付いてきて、行きたーいとか言ってた。

 文化祭にも来たいって言ってたから、思わずチケットあげちゃった!


「いやぁ、ユリちゃんすっかり有名人だねぇ……。さっきの子なんて、ファンですとか言ってたし。でも、なんか途中のステーションで、色々揉めてたみたいだったけど何だったんだろね……アレ」


「さぁ? と言うか、北十六番線があんなガラガラに空いてるのって始めてみたわ……。いつもああなら、楽なのにね……」


 どうも、警護の都合であちこちで普通のお客さんの足止めとかやってたみたいなのです……。

 何気に、ユリ……大迷惑。


 やがて、エトランゼの格納庫につくと、いつも通りエトランゼ号の前にテーブルとイスを並べて、エリー先輩たちが寛いでる。


「お、一年とユリちゃんやっと来よったね!……随分と遅かったなぁ。って、ユリちゃんそのカッコなんや?」


 まぁ、言われるよね。

 と言うか、こんなカッコで街中を歩くとか。


 なんか、すっかり慣れてる自分がいるけど、冷静に考えたら、何やってんだか。

 けど、精神の修行にはなった気がするのです!


「今日のユリは、メイドさんなんですニャン!」


 会心の決め台詞と覚えたての猫にゃんポーズを決めてみた。


 手首をクイックイってやるのがチャームポイント!


 でも、アヤメさんがブホォとか言って吹き出して、すかさずマリネさんがカシャカシャと携帯端末で写真撮ってる。


 ……ちょっと恥ずかしくなってきたよ。


『良く解りませんが。相変わらず、お美しいですな……ユリコ様』


 エルトランがお世辞っぽい挨拶をしてくれる。


「エルトラン、お久しぶりなのです。御機嫌ようなのです!」


 言いながら、スカートの両端をちょいっとつまみ上げる。

 淑女の挨拶なのです。


『どう致しまして……。さて、皆様……ユリコ様が戻られたのであれば、そろそろ次回のフライトプランでも立てませんか? ああそうです……なんなら、軽くそこらを一回りしつつ、お茶会と言うのはどうでしょう?』


 ……そう言えば、しばらく飛んでなかったのですよ。

 エルトランも心持ち、不貞腐れ気味?


「そうね。私達も、放課後毎日ここに集まって、駄弁ってるだけだったし……。どう? 皆、ちょっと軽く宇宙飛行……無重力お茶会とか悪くないんじゃないかしら?」


 エリー部長の提案に皆、頷く。

 まぁ、軽く近くを飛んでコロニーでも見ながら、お茶を飲む……そんなのでも悪くないかな。


「じゃあ、早速スタンバイなのです! あ、エルトラン……宇宙港の出港許可やフライトプラン提出はどうなってるのです?」


『誠に勝手だとは思いましたが、本日ユリコ様が来られるという話でしたので、すでにゲートの仮予約申請済み、フライトプランも制定済みです。今すぐにでも出れますよ?』


 さすが、エルトラン……用意周到なのですよ。

 宇宙港に照会しても、きっちり申請済み。


 すでに、出港手続きが動いてるのです。

 フライトスーツもエルトランに預かっててもらってるから、パパっと着替えるだけで済みそう。


「さ、さすが……としか、言いようないわぁ。ほな、皆……宇宙の旅に出発やで! テーブルも椅子もしまって、ちゃっちゃと乗った乗った!」


「ええっ! そんなドライブ行くぞーみたいなノリでっ! あの……アタシ、ジャージなんですけど! 学校戻って着替えてきていい?」


『……そのままでよろしいかと。なぁに、ライフジャケットでも着ていただければ、宇宙空間安全基準もクリア出来ますから、問題ありません』


 ちなみに、いつもの学校の制服は、簡易宇宙服にもなるようなスグレモノ。

 マリネさん以外は、皆制服着てるから、実はこの時点でいきなり宇宙に出るのも大丈夫。

 

 制服なら酸素タブレットと併用することで、二時間はなんとかなるように設計されてるから、宇宙空間安全基準規格は満たしてたりするのです。


 さすがに、ジャージはそこまでじゃないけど。

 半袖のライフジャケットでも着ておけば、緊急時には全身を覆う環境フィールドが展開されるから、万が一真空中に投げ出されても問題ない。

 

 ちなみに、宇宙空間安全基準規格ってのは、最低二時間の間、真空中での生命維持を可能とすると言う割と厳格な基準なのです。

 

 レスキューなんかも要救助者が二時間は生存出来る事を前提に動くし、乗員の装備が安全基準を満たしていないと、宇宙に出る許可自体が出ないのです。


 ちなみにユリの場合は真っ裸でも、二時間くらいなら宇宙空間でもなんとかなるのです。

 さすがに、ホントにやった事はないのですけど……。


「マリネさん、大丈夫なのですよ。ライフジャケット着てれば、真空中でも二時間くらいなら割と余裕で生き延びれますよ? 生身で宇宙とかユリでもキツイですけど、最近の装備は良く出来てるんで、心配しなくても平気なのです」


「……いや、普通の人間は宇宙に生身で出たら、即死するから……」


 アヤメ先輩が白目剥いて呟いてる。


「ふふふ、大丈夫よ! マリネさんも心配しないでいいんじゃないかしら? ユリちゃんとエルトランなんて、ベテラン勢が駆るんだから、エトランゼは事故ったりしない……ですわよね?」


『ふむ、私……これまで50年間、無事故、無違反ですからな。整備も万全、絶対の安全を保証いたします』


「そっか。まぁ、宇宙遊泳とかやったこと無いけど、心配するだけ無駄よね……」


「ああ、なんなら……ちょっとそこらで、宇宙遊泳体験ってのも面白そうじゃない? 私もちょっと興味あるよー」


「せやな! うちら……宇宙コロニー住まいなのに、そう言う機会って全然あらへんもんなぁ……」


 アヤメ先輩の一言に、思わず嫌な汗がドバっと出る。

 

 え? クオンの人達って、コロニーに住んでるのに、宇宙遊泳訓練とかやらないの?


 エスクロンじゃ、幼稚園くらいで無重力室での浮遊体験とかやるし、小学校とかで非常時の宇宙遊泳訓練だってやらされるんだけど……。


 無重力空間で、ワイヤーガンやガスガンでの移動とか、手足を勢いよく動かすことでの、慣性モーメントを使った姿勢制御技術なんかも死活問題になるから、必修科目なんだけど……そう言うのもない?


 ……データベースアクセスしてみたら、アヤメさんの言ってることは本当で、10年くらい前まではその手の非常時対応訓練なんかも定期的に行われてみたいなんだけど。

 

 コロニー自体は外宇宙航行を想定してたような冗長性がやたら高い設計で、全然事故も起きない上に、好き好んで宇宙空間で活動するような機会も無く、むしろ訓練中の事故リスクなども考慮した結果、救命装備だけ持たせておいて、宇宙空間行動訓練はしないって方針に切り替えてしまったらしい。


 その結果、今のクオンの10代は宇宙空間での行動スキルは一切持ってないらしい……。


 んー、どうなの? それ。 

 エスクロン人とかだと、地上に住んでる人達でも無重力室での定期訓練とか、皆普通にやってるんだけど……。


 そりゃ、訓練で事故とか怪我したりとか少なからずあるけど……事故対応も含めた訓練って考え方もあるし、人間訓練してないことなんて、ぶっつけで出来るようなもんじゃないのですよ。


 ……む、無謀だよっ! いきなり宇宙遊泳とか……。

 と、止めるべきだよ! これはっ!

 

 でも、なんだか話が盛り上がって、もう止められなさそう……。

 ま、またこのパターンなのです……。


 かくして、ユリ達宇宙活動部は、なりゆきで宇宙空間遊泳をやることに……ううっ、何事もありませんように……っ!


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