表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
源氏“裏側”物語 もしくはいずれの帝の御時にか光源氏の兄になってしまった不運な公僕の顛末記  作者: 松本紗和子
第一章:桐壺 もしくは主人公の水面下でバタバタする白鳥の足の如き裏側の活躍
11/33

第8話 安倍晴明はいません。だってここ、源氏の世界だもの

◇一宮:四歳  二宮(後の光源氏):一歳  九月下旬


 さて、あれから千寿にスパルタン手習いを施し、打倒源氏のクソ野郎計画を話し合い、大学助に漢字を習っていた。

 漢文に非ず、漢字である。前段階ね。

 皇族には書始め(ふみはじめ)っつって7、8歳くらいに初めて漢籍の読み方を授けられる儀式というものがある。

 いかに文字狂いの大学助といえども、その儀式の前に漢文を教えるのはちょっと……ってやつなんだろう。

 それに、確かに私は論語も史記も韓非子も貞観政要も読めるけど、習ってもいないものを「いきなり読めるようになりました!」ってことになったら、確実に周囲が動揺する。

 「実は前世の記憶が……」っていきなりいいだすわけにもいかないし、母上たちを混乱させたくない。

 その辺は千寿と話し合ってある。

 あと、こういう転生ものによくある内政もしようかって考えたんだけど……なかなか難しい。技術的な問題もあるし、環境や平安時代の習慣的な部分が問題になることもある。

 さらに、技術を教えるには現地に赴く必要があるかもしれない。私は皇族で、千寿は上級貴族の息子だから、そう簡単に出歩けない。できないことはないと思うんだけど、難しい。

 あと第一にこれ。「何でそんなこと知ってんの?」ってヤツだ。漢文と同じように、習ってもいないものを何で知ってるのかって聞かれたら、答えに窮する。

 「実は死んでる間に神様から教えてもらいました」ってネタを使う手もあるけど、物の怪がどうたらこうたらとかなったら、平安時代では致命的になるかもしれない。

 そういうわけで、内政は慎重に、自重しつつ、ということで千寿と同意している。


 と、いうことで九月下旬(グレゴリウス暦だと10月末くらい)。

 私は無事、父・桐壺帝こと篤貞(あつさだ)帝にお礼言上に窺う日を迎えたのであった。


「おお……弘徽殿だ……」

「弘徽殿だよ、宮様……」

「……そなたら、何をいっておるのじゃ?」


 感動に浸る私たちを、周子ちゃんを抱いた母上が不思議そうな顔で突っ込んだ。

 仕方ないじゃん、一宮くんはここに住んでた時もあったんだろうけど、残ってる記憶が飛び飛びだから覚えてないんだよ。千寿くんはお初だけど。

 さて、弘徽殿。

 帝の日常生活の場である清涼殿に近く、後宮七殿五舎の中でも、最も格が高いとされていた。すなわち、ここを賜るということは、後ろ盾確かな皇后候補、ということになる。

 殿舎の真ん中に、馬道(めどう)と呼ばれる簡単な通路が通っている。そのため、身舎(もや)、つまり柱に囲まれた庇の奥の中心部分は、南北に分けられている。

 普段、母上は南側、清涼殿に近いほうを使い、私や周子ちゃんは北側を使っていたらしい。

 そして、北庇には私と周子ちゃんの乳母たちの局がある。他の女房達もどこかに局をもらってると思うんだけど、そのあたりはよくわからん。

 東にはそこそこ広い庭があり、萩の木と柿の木が植えてある。柿はちょうど収穫期にあたるらしく、たわわに実を実らせていた。

 今日、この日。

 私は父上に会うために、弘徽殿に帰ってきたのだ。

 周子ちゃんとおネコ様も一緒に。あと、千寿も。千寿は内裏が見たいって言ってたので、一緒に連れてきた。


「二人とも、中に入りや」

「はい、母上」

「はい、女御様」


 私たちが母に続いて身舎に入ると、女房達によって御簾が下された。

 弘徽殿の内部にはいい香りがふわりと漂い、二条烏丸の右大臣邸同様に豪華に飾り付けられている。

 私と母上のために畳(これも規則があってめんどい)が置かれていたので、素直にそこに座った。千寿のためには円座が置いてある。

 母上も座り、ふうと小さく息を吐いて脇息にもたれかかる。

 妹、周子ちゃんは母上の膝元に抱っこされていたが、すぐにはいはいして私と千寿の所にやってきた。


「にー」

「はいはい、女一宮。にーはこっちにいるよ」


 私が足の間に引き寄せてやると、何が楽しいのかきゃっきゃと笑っている。

 ああ可愛い。赤ちゃんって本当可愛い。

 ほっぺたもぷくぷくですごく可愛い。足の裏もふわふわで母性が溢れそう。もう女じゃなくなったけど。


「女一宮様はほんに一宮様がお好きで……」

「まことに。一宮様がおあやしになると、夕暮れにぐずっている時でもピタリ!」

「私たちの面目が無くなってしまいますわね」


 母や周りの女房達は、にこにこしながら私たち兄妹の交流を見ている。

 いやあ、ははは。私、子供大好きなんだ。

 喪女だったらか結婚してなかったし子どももいなかったんだけど、弟や弟の子供の面倒はよく見てたんだよね。

 おかげで、おっぱいあげる以外は何でもできるよ。


「それで母上、父上の所に行くのはいつなのですか?」

「ふむ」


 母上はちょっと考え込むと、


(ひつじ)の一つ(午後1時ごろ)とのことであった。間もなく迎えがくるであろう」

「はい」


 タブレットで見ると、今は……12時30分くらいか。


「それにしても、宮中ではどうやって時間を管理してるんでしょうか」


 周子ちゃんと戯れる私の所に千寿がやってきて尋ねた。周りがいるから敬語だし言葉を省いているけど、「正確な時計がない時代にどうやって時刻管理してるの?」ってことだろう。


「陰陽寮が漏刻(ろうこく)、水時計浸かって管理してるよ」

「おんみょうりょうってこちょは、おんみょうにがやっふぇるのれふか?」


 千寿は周子ちゃんにほっぺた引っ張られながら訊き返してくる。

 こらこら周子ちゃん。千寿くんが痛いでしょ、やめなさい。


「そうだよ。陰陽寮に漏刻が置かれて、漏刻博士(ろうこくはかせ)たちが管理してる。その漏刻を使って、時間が来たら太鼓を打って知らせてるんだ。……ですよね?母上」

「一宮は物知りよな。その通りじゃ」


  この時代、時間の管理や暦の制作、天体観測などは国家的な高等専門技術であり、陰陽寮に所属する陰陽師たちの仕事だった。陰陽師たちは平安の技術官僚(テクノクラート)だったわけだ。


「へえ……陰陽師って占いとかお祓いばかりしているの思ってました」

「ほほほ……たしかに、そちらのほうの活躍が目立つからの」


 感心したように言う千寿に、母上がころころ笑いながらもこう応えた。


「派手な祓いも荘厳な儀式も、確かに大事じゃ。しかし、く地味で、毎日続く目立たぬ職務もまた比べられぬほど重要なもの。そのような職務を行うような者達により、政が円滑に進むようになっておるのじゃ」


 おおう、母上……すごい、素晴らしい事言ってる。平安貴族という人の3%くらいしか気づいていない事(偏見)を、最上級貴族出身のお妃様が……。


「よいか一宮、千寿。前に出てくるきらびやかな者達のみではなく、影で人の嫌がることを黙々と、忠実に行う者達のこともしっかり見て、評価してやるのじゃぞ。それが人の上に立つ者としての責よ」


  母上、本当に平安時代の姫君?転生者じゃあないの?前世は現場勤務30年のベテラン技術者とか、大企業の創業者とか、そういうひとなんじゃないの?

 私も、千寿も、そして女房達もめっちゃ感動して言葉も出ない。喋っているのはご機嫌な周子ちゃんだけだ。


「わかったな?」

「はい、母上」

「肝に銘じます、女御様」


 私と千寿が頭を下げると、母上は満足そうににっこり笑った。

 ……しかし、すごいな母上。こんなことさらっというなんて、平安時代のお姫様にしとくのは惜しすぎる。

 元々、母上は原典源氏物語の一番最初の章、桐壺で、


 人よりさきにまゐり給ひて、やむごとなき御思ひなべてならず、御子たちなどもおはしませば、この御方の御諌めをのみぞ、なほわずらはしう、心苦しう思ひ聞こえさせ給ひける。


 と書かれている。


 つまり、一番最初に入内して、家柄もいいので帝にすごく大切にされていて、子も産んでいた。

 そして、この御方の御諫めをのみぞ。つまりこのお方の御諫言だけは、とあるように桐壺更衣への嫉妬からのみではなく、“帝が理にかなわぬ行動をとっているために”諫言をしていたのだ。

 元々気が強いのはわかるし、女性の権利が制限された時代の人にしては行動力もある。その後のいろんな行動を見ても、右大臣(おじじ)よりも政治力があるんじゃあないかと思う。

 この時代の女性に生まれたのが不幸だ。男に生まれていたら確実に実権を握っていただろうし、21世紀に生まれていたらやり手の女社長、女議員として活躍していたかもしれない。総理にまで登っていたかもしれん。

 ちなみに、その諫言に対して桐壷帝といえば、なほわずらはしう、心苦しう思ひ聞こえさせ給ひける。ヨーするに母上の説教は無視できないけど面倒クセェって思ってた(意訳)って、アホかお前って感じだけどな。

 板垣信方の諫言を受けいれてバカ殿から方向転換した武田信玄や、テオドラ皇后に諫言されてニカの乱鎮圧に成功したユスティニアヌス1世を見習えや。

 さて、そんなことを思っていたら、女房が御簾の中に入ってきた。

 つい最近母上に仕えるようになった若い女房で、上総(かずさ)という名前の中級女房だ。


「一宮様、女御様」


 上総は身舎の中に入ってくると、母上の前にやってきて平伏した。

 迎えが来たのかな?でも、それにしちゃ様子がおかしいな。

 何だか困っている。


「おお、迎えかや」


 母上が機嫌よく言い、立ち上がりかけた。けど……。


「いえ、その……」


 上総はハイとは言わない。それどころか、言いにくそうにもごもごしている?


「お迎えでは、ないと……」

「迎えではない?」


 母上が首をかしげた。

 迎えじゃないなら何しに来たんだよ。だって今、えーと……12時45分だぞ。

 時間にゆったりした平安時代とはいえ、主上との謁見直前に無駄話するようなことしないだろ。

 何かあったのか?

 千寿も同じことを考えているらしい。ちら、と私のほうを見た。


「……帝に何かあったのかな?」


 と呟くと、千寿が多分違う、と首を振った。


「だったら上総もきっぱり言うだろうし、違うんじゃないか」

「そうだよな……だったら、なんだろ」


 言いにくいこと、言いにくいこと。帝関係で何か……。多分、いや絶対ロクな事じゃないんだろうな。

 私たちが首をひねっていると、焦れたんだろう。母上がちょっと声のボリュームを上げて聞いた。


「はっきり申せ、上総。どうしたのじゃ」

靫負命婦(ゆげいのみょうぶ)様がいらして、その……」


 怒られると思ったのか、上総はびくっと肩を揺らし、またもごもごだ。

 よっぽど言いにくい事なのか?それとも、母上が怖いのか?どっちもありそう……。

 しかし靫負命婦か、どこかで聞いたことがある。

 私はタブレットを出して、電子書籍の中から源氏物語を選んで開いた。それに気づいた千寿が、さりげなくタブレットが見える位置にやってくる。

 あ、あったあった。靫負命婦って、桐壺更衣が死んだとき、帝が更衣の屋敷に慰問に出した女房だか女官だかだ。

 と、いうことは、帝に近しい存在の一人なんだろう。

 私の予想はあながち間違ってなかったらしい。母上の眉がぴくりと反応した。


「靫負命婦が?」

「はい……その……」

「そなたではらちが明かぬ」


 母上は上総に命婦を呼んでくるように命じた。

 中々答えない上総に焦れたこともあるだろうし、謁見直前に帝に近しい命婦がやってくるなんてロクな事じゃない。一気に機嫌が悪くなったようだった。

 むすっとした母上から解放された上総は、ほっとして立ち上がり、御簾をあげて身舎から出て行った。

 と、なるとここに周子ちゃんがいるのはよくないかなあ。そう思って千寿を見ると、同じ考えだったらしい。周子ちゃんをあやすのをやめ、母上に話しかけた。


「あの、女御様」

「なんじゃ、千寿」

「僕がいてはお邪魔になるでしょうから、女一宮様とともに北の身舎に下がっております」


 うんうん、それがいいよ。

 あっちで千寿と遊んでな、周子ちゃん。


「そうか、それがよいな。これ右京、外記」

「はい、女御様」


 母上が顎をしゃくると、二人の女房が私の所にやってきた。周子ちゃんの乳母達だ。


「一宮様、失礼いたします」


 外記と呼ばれた方が、私の足の間にいた周子ちゃんを抱き上げる。

 周子ちゃんは私といたいのか、袖を握っていやいやする。あーかわいい。


「やー、にー」

「ごめんね、千寿と一緒に遊んでてね」

「ぶー!」


 周子ちゃんはぶぶぶ、と口をとがらせて暴れたけど、外記に抱っこされ、抵抗むなしく北の身舎に連れて行かれてしまった。やー!んぎゃー!という泣き声が遠ざかっていく。

 ごめんよー、後でいっぱい遊んであげるから。

 千寿はスマホでここの写真を撮ると、部屋から出る前に小さく頷いた。私も頷き返す。あっちで周子ちゃんと遊びながら、話を聞いててくれるだろう。


 さて、それから少して。

 上総が一人の靫負命婦を案内してきた。

 20代半ばぐらいの、どうということのない顔立ちの若い女性だったけど、仕草や装束の着こなしはいかにも優美で、さすがは宮中の女房と感心させられるほどだった。

 靫負命婦は身舎に入ると、私と母上に向かって平伏した。


「一宮様、弘徽殿女御様に置かれましては、ご機嫌麗しく……」

「麗しくなどない」


 命婦の口上を母上がぴしゃりと遮った。

 母上は脇息に寄りかかり、不機嫌そうな顔で命婦に尋ねる。


「何の用じゃ、靫負命婦。わらわたちは主上への謁見を控えておる。無駄話をしている暇などないぞ」

「申し訳ございません」


 命婦が平伏したまま謝罪した。一体何に対しての“申し訳ございません”なんだろう。

 とはいえ、“申し訳ございません”程度で母上の機嫌がよくなるはずもない。ますます不機嫌になったみたいだった。


「用があるならば早う済ませよ」

「では、申し上げます」


 母上が軽く手を振って促すと、命婦は顔をあげた。

 そして、この弘徽殿に爆弾を投下した。


「一宮様の御謁見、しばしお待ちいただきとうございます」

「……なんじゃと」


 ええ……?

 一月前にこの日この時間って決まったんでしょ?何でずれちゃったの?

 しかも、すんごい直前に。

 何があったんだよ。


「女御様、主上は……」


 うん、何?

 弘徽殿の物すべての視線が命婦に向けられる中、彼女は一瞬息を止め、目をつぶり、意を決したようにこう言った。


「……お疲れにより、お休み中でございまして」


 ……。

 はァ?

 え、待って待って。お疲れによりお休み中って何よ。

 いや、約束してたでしょ一月も前から。この時間ぐらいにって決まってたでしょ?え、意味が分からん。なんで寝てるの。起きろよ。


「お休み中じゃと……?」


 母上がきれいに書かれた眉を跳ね上げた。ほら額に青筋が出ちゃったよ。母上色白いからまた綺麗に見えるんだ青筋。

 命婦は母上の機嫌を取るように、深々と頭を下げた。


「はい。故に、しばし、しばしお待ちいただければと……」

「……我らは一月も前よりこの日と時刻を指定されておったのだぞ」


 ごもっともごもっとも。だから母上、そんな怖い顔しないで。

 ねえ帝、お休みになるほどお疲れって何したの。どこかで地震とか飢饉でもあって、緊急対策会議でもしたのか?

 けど、お爺は今日も普通に出勤してたしなあ。何かあったってなったら必ず母上に連絡来るけど、そう言うのもなかったし。

 朝からカバディの試合でもしたんか?

 というか予定があるのわかってるんだから、お休みしちゃうぐらいお疲れになるようなスケジュール立てんなよ。秘書役しっかりしろよ。


「私からは、何とも……」

「……むう」


 母上は小さく唸った。命婦を怒鳴ったって、何の解決にもならない。そう思ったんだろう。

 でも、このままというわけにもいかない。なんで延期になったのか、いつごろ行けばいいのか、そのへんはっきりさせとかないといけない。

 だから、命婦とちょっとその辺を詰めなきゃならないな。というか、どれぐらいで起きるんだろ、夜まで寝てるとかないよな。さすがに寝過ぎだし。ホント何したんだ?


 ……その時、ピンときた。


 母上のネコ目もすっと細まって、何かに気づいたようだった。そしてもしかしたら、周りの女房達も気づいたかもしれない。

 たぶん、女の勘ってやつだ。でも言いたくない。母上も言わないでほしい。

 

「……もしや、桐壺更衣と御同衾中なのではあるまいな」


 母上がドスの利いた声で言った。言っちゃった。

 背中から脂汗がだらだら流れ始めたのがわかる。顔大丈夫かな?引きつった顔してないかな?いや引きつっててもいいよこんな状況、みんな忘れてるけど一宮くん数え4歳満3歳だぞ!

 ふええ、怖いよう。地獄の底の釜の蓋が開く音って、こんな音だ多分。

 周りの女房達も桐壺の更衣って言葉に反応して、厳しい目で命婦を睨む。そして命婦は硬直してる。口を開くのが怖いのか、みんな黙ってる。

 重苦し~い沈黙がしばらく流れた後、


「…………はい」


 若干顔を青ざめさせた命婦は、母上から目をそらして頷いた。

 頷くなよはいじゃねーよ取り繕えよ!上手にはぐらかせってわざわざ地雷を差し出して踏ませるなよ!踏みそうになったら穴掘ってよけとくとかしろや!


「……御同衾ですって」

「もう、昼も過ぎたのに?」


 女房の誰かがめっちゃ冷たい声で囁き合っている。ねえ帝のことそう言う声で話していいの?

 部屋の温度がどんどん下がってく。今日10月末(旧暦9月下旬)にしてはだいぶあったかいのに、急に吹雪いてきたのかな?


「なん……じゃとォ」


 母上の白い顔が見る見るうちに赤く染まり、眦が吊り上った。若干、目が血走ってきてる。これはヤバい。千寿、お前あっち行って正解だよ。

 ヒィッ、角が見える。般若の角が見えるッ。母上にかぶせたやつ誰だ!般若の面はまだ生まれてないのに!どこから持ってきたんだッ!

 母上は赤く小さな唇を開き、吠えた。日本の国土を幾度も襲い、特撮ヒーローと戦ってきた怪獣たちよりも恐ろしい雄叫びだった。雌なのに。


「おのれェェ、桐壺更衣ッ!!」


 ああああついに噴火しちゃった!誰がどーやって宥めるんだよ、これ!

 誰か陰陽師呼んできて!鬼!鬼がでたんだってばーッ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ