王との謁見
城門まではなんとか駆け抜ける事が出来たが案の定、門番に止められる事となった。これでもし、何事もなく通過出来ていたら、この国の防犯対策を疑う所だった。
「貴様、何奴だ!股間をもっこりとさせやがって!」
「ええと、それはですね…、何と言いますか…、説明し辛いのですが…」
「ごちゃごちゃとうるさい奴だ!ええい、捕らえてくれる!!」
「えっ!ちょっと!待って!」
弁明の余地はなかった。それはそうだろう、誰だって股間を異常にもっこりさせた奴を怪しく思うだろう、今オレは魔法の鞘を着けて来ていたのであった。聖剣の存在が知られると不味いかもと思い、着けて来たが……裏目に出たか。やはり、着けないのが正解か…。
と、冷静に判断している場合ではなかった。
なんとか振り払おうとするが、聖剣の力が覚醒とか、そんな都合の良い物はなく、そのまま城の地下牢へ閉じ込められてしまった。
当初の予定と異なるが、これで城に入ることが出来た訳だね(白目)。…………どうしよう?大した罪は犯していないはずなので、すぐに解放されるとは思うが…。
考えに耽っていると、コツコツと足音が聞こえてきた。
石の階段が赤く揺らめく。現れたのは王冠を被り、でっぷりと太った王様だった。
「そなたが聖剣をお持ちか?」
「!?」
「フホホ、驚きなさんな。聖槍が輝き増したので、もしやと思い来てみたが……どうやらビンゴのようじゃの?」
なんと……そんなことまで分かってしまうのか。
どうやら伝説の物は惹かれ合う性質を持つようだ。
「股間に出すぎじゃよ。して、聖剣は?」
オレは何も言わずに、股間の魔法の鞘を外す。そこには、確かに王様の言うように輝きを放つ聖剣があった。なんて、屈辱ッ!!
「な、なんと……!これはこれは神々しい…!」
王様は手を合わせ、拝み始めた。
おい、これオレのチン◯コなんだけど…!
「しかし…、驚きじゃのう。まさか、それは体から生えているのか?」
「はい、そうです、王様。信じて貰えないでしょうが、今朝起きたらこうなっていました」
目上の相手なので敬語で話す。オレは立場をわきまえる男なのだ。まさか、見せて欲しいなどとは言わないだろうな?
「ちっーとで良いから、見せてくれんかの?いや、そんな目で見るな!わし、ホモじゃないから!」
疑いの眼差しを向けた。
「ほら、見せてくれんと対応できんじゃろ?はよ、見せてくれい」
「はあ、分かりましたよ……」
ボロン。
いや、実際には、ボロンなんて音は出てないけど。兎に角、聖剣と体の付け根の部分を王様に見せた。
「ほおー…ほほー、なるほどのう。こりゃあ、不思議じゃのう。こんな不思議なことも起きるのが、聖剣という訳かのう。よし、おぬしをここから出してやろう!ただし、じゃ!」
「そんなことはどうでもいいから、速く出して下さい!お願いします!なんでもしますから!」
焦りからか、『なんでも』って言ってしまった。『なんでも』という事は、相手側に全ての決定権があるというわけで、こちらに拒否権が無いことを示すのだ。
「ん、今何でもって……?」
「まったく、お約束は良いですから!王様なんですからしっかりして下さい!それで、条件があるんでしょう?」
「すまんのう、ではしっかりと聴くことじゃ」
王様はたっぷりとでっぷりと間を開け、口を開いた。
「えぇ~、コホン。そなたには衛兵になってもらう!!」
「…………」
「反応が薄いのう、もしかしてわし、今嚙んだ?」
反応が薄くて当然だった。もともとこちらは、衛兵か冒険者のどちらになれば良いかと聞きに来たのだ。
股間から聖剣を生やした衛兵か、股間から聖剣を生やした冒険者か。まあ、選択肢は二つに見えて一つに等しいのだが。
「いえ、嚙んでないです。もともとこちらは、それを聞きに来たので、お話しが速くて助かりました!」
「う~む、物分かりがいいのう、それはこちらとしてもありがたいのじゃが。何か隠しておらんかのう?他の目的など」
実はこちらには二つの目的がある。一つ目が前者で示した通りだ。しかし、重要なのは二つ目なのである。もし、冒険者、或いは衛兵になる事が出来たとしても、股間から刃物を生やした人間が歩いていいのだろうか、という問題だ。
想像してみて欲しい。
町中を股間を異様にもっこりとさせた人物が歩く所を。
親は子供の目を塞ぎ、家の中へ連れ帰り、こう教育するだろう。
「いい?あの人には近づいちゃだめよ?見てもだめよ?」と。
これが教育の方針としては何も間違っておらず、むしろその通りで十中八九、こちらに責任があるのだが。
それでは町中を歩くことすら、ままならなくなる。それは困るのだ。いくらチン◯コが聖剣になったとしても、人には皆平等の自由が与えられているわけであり、差別も良くない。普通に生活したいのだ、オレは。
「普通に生活したいとな?それは無理な話であろう?」
「そこで王様を頼りにしてるんですよ」
王様がチ◯コが大きくなっている人は安全である、と保証してくれたらいいのだ。哀れな事情でこうなってしまっていると。
非常に恥ずかしい話だが、致し方ないはず……少なくともこれ以外の案は却下された。
他の案としては、オレが外に出ないこと。チ◯コを切り落とすこと。町中の人をぶっ殺して、誰も口をきけなくすること。
一つ目の案はまだしも、二つ目、三つ目はこちらで却下させて貰った。二つ目は想像しただけでも、背筋がゾクッとするし、三つ目に関してはサイコパス過ぎて笑えない。ちなみに、案を出したのは母さんとミオン。
「それは難しくないかのう?『チ◯コが大きくなっていても安全』って、どこも安心出来る要素がないんじゃが」
「それは、王様が考えてくださいよ。そんな物にしたらいくら王様であっても、ぶっ飛ばしますよ?」
「ええ!?理不尽!!」
王様はわしが考えたのではないのに!と叫んでいたが、それは無視する事にした。なんやかんやでノリがいい王様だ。こんな人が王様でこの国は大丈夫なのだろうか?
しかしまあ、なんとか目標を達成する事が出来たという事だ。
そして……
「いい加減、檻から出してくれませんかね!?」
オレの声が牢内に大きく反響した。
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次は月曜日になると思います。
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