変態の称号
さて、オレの心《チン◯コ》が無くなってしまった事はもうどうしようも無い。諦めて、状況把握に努めることにしよう。
まず何故、チン◯コが聖剣に変わっていた事に気づいたかの説明をしなければならない。
これについては、至って単純で、昨夜まで着ていた筈の下半身の衣服が、全て跡形も無く消えていたからだ。
やけに下半身がスースーするな、と思い下半身を確認したらこの様な自体になっていたのだ。
どうしようも無い。防ごうにも、防ぎ様が無かった。
次に、聖剣だと判明した理由についてだが、これも簡単で有名な昔話に出てくる形と同じ紋様を持っていたからだ。
一部の伝説の武具に施されている大鷲の紋様。
一生において、まず、出会う事のない一品だ。
聖剣の他にも、聖槍、聖鎚など、これらは確認されている物でしかないため実際にはもっと多くが存在しているかも知れないし、存在しないかも知れない。如何せん、数が少ないのだ。
確認される伝説の武具はいずれも、国宝とされ厳重に管理されていると聞いた事がある。度々、城に盗みを働こうとする輩がいるのは、そのせいかもしれない。
つまり、オレのチン◯コは国宝とされ、崇められ、讃えられる存在なのだ。
ま あ、調子に乗りすぎて切除とかは、ご勘弁願いたい所だが。
刀身は約一メートル、常に上を向き続ける向上心の高い奴。
笑えないが、笑うしかない。違和感が凄い。
状況把握はこんな所だな。まったく、とんでもない自体になってしまったな……。パンツもズボンも履けないし、外にも出られないだろう。そして、本来のチン◯コも消えてしまった。
お先真っ暗の人生になる予感。
トボトボとオレは、母が待つ朝食の席へと向かうのだった。
◇◆◇
「お、おはよう」
「あら、今日は早いのね、おはよ……?」
苦しい笑顔を作りつつ、下半身半裸で聖剣を見せつけるオレ。目を大きくして、オレの下半身を見続ける母。朝から奇妙な光景が出来上がってしまった。
「その……、腰に付く珍妙な物は何……?私が知るのとは、随分と形状がちがうみたいなんだけど……」
「ああ、これ?オレのチン◯コだよ?そんなに、ジロジロ見ないでよ。いつもと同じじゃないか。やだなぁ、母さん」
白目を剥き、現実逃避の嘘を吐いてみる。
「そ、そうだったわね。何もおかしな所は無かったわ、私もボケが来ちゃったのかしら?歳は取りたくないものね、フフッ」
「ハハッ」
母も少しずつ状況が分かってきたのか、目を逸らすようになっていた。親子そろって笑いあい、現実逃避をしていた。
「で、本当の所は朝起きたら、こうなっていました」
「昨日の夜は普通だったのよね?今、何か体調が悪いとか、他に体に異変が起きてるとかはある?」
「いや、何も。チン◯コが聖剣になっている事を除けば他は普通だよ。体調は、そうだなぁ、少し寒い位かな。パンツもズボンも履けないし」
「あら、本当、それ聖剣じゃない!気づかなかったわ。長年見つかっていなかったのに……世紀の大発見じゃない!」
そう、世紀の大発見ならぬ、性器の大発見である。
母が驚くのも無理は無い。隣国は今現在も聖剣を探しているのだ。聖剣一つで国の情勢は大きく変わり、戦争での立ち位置も変わる。それ程、強大な力を持っている。
「それ…どうするのよ?」
母がオレに尋ねるが、そんなことオレにだって分からない。隠そうにも隠せない程の大きさなのだ。
考えても結論は出ないと悟ったのか、母は朝食の準備をし始めた。それに倣い、朝食の席につく。何にせよ、まずは腹ごしらえだ。先人も「腹が減っては戦は出来ぬ」と言ったものだしな。
運ばれてきた朝食を前にテを合わせ感謝の言葉を込める。
「いただきます」
こうして、アーサー・ベクタの一日が始まったのであった。
◇◆◇
朝食を美味しくいただき、母とこれからの事について考える。
しばらくたった後、母は口を開いた。
「それで……やっぱり最初はズボンをどうするかよね。このままだと、『変態』だし。一つだけ手があるわね」
おっと、無理も無いが変態の称号を頂いてしまった。
しかし、ズボンは大切である、家の中なら良いが外に出れば、衛兵に捕まってしまうだろう。
「でも、母さん、パンツもズボンも履けないんだよ?一体どうすんのさ?あっ…」
途中まで言った所で気がついた。この問題を解決する方法があるということに。
「そう、ギルド『メイドリーム』に頼むしかないわ」
「そうだな、その手があった。見落としていたな。服が無ければ作ればいいんだもんな!」
ギルド『メイドリーム』通称メイドリは、その名の通りメイドギルドである。メイドギルドとは、ようはヘルパーさんとして、家の家事手伝い、ベビーシッター、専属メイドとして働いたりする人を育て、貸し出し利益を得るギルドだ。
しかし、同時に裁縫ギルドとしても活動しており、国の中でもトップに位置するギルドなのだ。
モットーは『速く』『優しく』『愛らしく』である。
「母さんも偶にはやるじゃん」
「そうでしょう?もっと褒めていいのよ!」
「でも、母さんどうやって行くの?オレはこんな格好だぞ?」
「あっ…」
どうやら、それを失念していたようだ。ただ、服を買うならばオレは行く必要が無いかもしれないが、今回の目的はオーダーメイド品だ。必然的にオレも行かねばならない。
「そ、そうだわ!あの子がいるじゃない!あの子に来てもらいましょう!そうしましょう!」
「ええ…あいつを呼ぶのか?あまり乗り気じゃないが…仕方ないか…」
「じゃあ、私が呼んでくるから、少しの間待っていてね」
そう言うと、母はすぐさま家を出て行ってしまった。
しかし、あいつはどうにも苦手だ。母はさも名案だと思っているようだが…。不安を抱きつつ、オレは素直に母を待つことにした。
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次回は土曜日になるかと思います。
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