[2]夜半 / [3]夜中
短いので二つ一気に出します。
[2]
思ったよりも用事が早く終わったので、早めに押しかけた。
顔を見るなり焦った顔をする。
「待って! 片付けてないから待って!」
外で待つ。遅い。
きっと本当は宇宙人で、人がいないときの部屋は本当に居心地がいいように改造されているんだろう。それか、地球の生命体を調査するための器具を並べているか。様々な手段で生物を入手し、日夜研究にいそしんでいるのである。地球の科学では決して実現できないような装置を、今しもあの宇宙人は襖の裏側に押し込んでいるのだ。
「入っていいよー」
「夕飯作った」
「頂きます」
「頂きます」
「ねー、タイの肩に小さい魚の形した骨があるの知ってる?」
「……知ってるけど、彼氏さんに振る話題じゃないと思うよ」
「いや、そういうの聞きたがるかなーと思って」
「なんで?」
「豚肉おいしいよ」
[3]
夜中にふと目が覚めたら、隣にいなかった。
ぼんやりした頭で考えた。なんでいないんだろう。なんでいないんだろう。
どうして、いないんだろう。
きっと実は透明人間なんだ。
ちゃんと透明なときとそうじゃないときの切り替えができるんだけど、寝ていて自律神経が上手く働いていないか、変な夢を見たかして、つい透明になってしまったのだ。
確認するのは簡単だ。手を伸ばして周囲を確認すればいい。透明になっていても、幸せそうな顔で寝ているのが、ちゃんと触感で確認できるはずだ。やってみよう。
……眠い。体が重い。
だから、本当はすぐそこにいるのに確認できない。眠いから。でも大丈夫、ちゃんといる筈。いる筈。寝てる筈。大丈夫。いない筈がない。
いないはずがない。
水の流れる音がした。
「起こした?」
「みたい」
逆に、ちゃんと触れていさえすれば、たとえ透明になったとしてもちゃんと確認できるのである。