プロローグ
設定が成り行きで考えたものですので矛盾があるかもしれません。その時は申し訳ないです
「……異世界って信じる?」
「……」
さて、問題だ。もしも友達が下校時間基、部活の時間に、科学部所属である私に、ちょうど理科室にいこうとしていた私に唐突に、ラノベや漫画にしかなさそうなモノを信じる?といってきたらなんと言えばいいか、六文字以内で答えなさい。なお、記号も文字に含むものとする。
……回答は──
「病院いく?」
模範解答なため他にも無視する、暴言、軽蔑などがある
「いかねえよ!」
激しいツッコミがかえってきた
「行ったほうが良いと思うよ、さすがに」
「さすがにってなんだよ!てかそのバカを見るような目をやめろ」
「バカをみるような、じゃないよ、バカを見ている目だよ」
「そういうことをいっているんじゃねえ!」
ったくよぉ、とキレ気味に歩くのを止めない私の横に、並んで歩く。
ここでさて、このバカについて説明。
蛯澤 奈津 <えびざわ なつ>
私と同じ部活で、実に女々しい名前ではあるが男だ。
名前とは反してスポーツ系といった感じだ。
やんちゃ坊主のような目。笑顔は正にやんちゃそのものだ。
「で、どういう風の吹き回し?異世界なんて、ラノベのよみ過ぎなんじゃないかしら」
「そうじゃないって……ああ、そうか、稲荷は噂話とか詳しくないんだよな」
カチンと。
「んん。まあ、うん」
「ハハ、勉強ばっかしてんな……いってえ!」
腹に手をグーにして、殴った。
まあ、当たり前だが腹に直撃した時とほぼ同時に彼は苦しみの表情をうかべた
確かに噂話とかまったくわからないけれど、そもそも興味がないだけなんだけどそれを知らないんだよな、とか言われたくはないし、さらにそれを私が一番と言っていいほどキライな勉強の所為にされるのは納得がいかない。
私は腹パンをくらわされ寝転がり、腹を抱えてもがき苦しんでいるなつをにらめつけるようにして見る。
「次言ったら、腰。」
「う、うい……」
ちなみになつに危害を加えたのはこれだけではない。まあ、大体はコイツの言動が問題なんだけど。
そっから数十分、ずうっともがき苦しんでいたなつはやっとのことで立ち上がり背中をぱんぱんと叩くと(私も手伝ったが、何故か痛いといわれ嫌がられた。次は背骨を折る)バッグをもって、またあるき始める
「それで?その噂って何さ」
興味本心。さっき、噂には興味がないとは思ったものの、なつが私に噂話をするのは珍しい。
なつとは幼馴染の仲なのだが、高校に入ってから、所謂パソコンのゲーム──主にFPSとかにハマってしまい、中学まであまり話さなかったのだが、私も好きだったため意気投合。そして今ではそういう話をする仲になった。まあ、だからそういう話以外のことをするのがすごく珍しいのだ。
「んっとね、さっきの異世界の話とつながるんだけど、ある特定のことをすると異世界にいける……っていうのがあってね」
「うーん、そんな珍しい感染症があったかなー……、」
私は悩むように首をかしげる。
「なんだよ?藪から棒に。」
どうやら奈津は私と違う話をしていると思いっているらしい。
「奈津は精神の感染病ってあると思う?……まさか新種の病気かな︙︙皆が異世界に行く方法があるとか噂を流して信じてしまう病気……」
「だから病気じゃねえって言ってんだろ!」
ちなみに、感染症とは違うがソレに似た病気はある。
感応精神病という名前らしい。詳しく知らない。
名前からしてヤバそうな感じがあるけれど。
「しかし、病気ってのは──特に、精神の方は自分から気づかないって言うよね」
にこやかな笑顔で奈津の方に向く
奈津はムッといた顔をしている
「だからってそれは病気にはいらない……つーか、話が進まねえ!」
ごもっとも。
「まあ、それでな?異世界つってもラノベみたいに唐突に。とか、落ちこぼれだから。とかでいくんじゃないんだよ。ちゃんと順序を組み立ててね?」
「くかー」
「寝るな!」
あるきながらも目をつむり、考えるように腕を組んで寝るフリをする。
「その順序ってなにさ」
「簡単にいえば、陣組んで、四人とかそこらの人と集まって、色々する」
前半までいい説明をしていたのに後半から突然適当な説明になるのがなんともやるせない。
実際、説明の途中で……最初は真剣味な声だったのに途中からめんどくせえといった感じの口調になっている。
「四人……はっは、まさか今からやるんじゃないよねー?」
「まっさかー?」
アハハハハハ、なんて笑いながら二人、廊下を歩いて行く。
幸運なことにここの廊下は今私達以外は誰もいない。いたとしたら引かれているだろう。
「しかし、異世界ねえ……逆に聞くけど、お前は信じてるの?」
首を傾げながら彼を見る
「ええ……ま、まあそりゃあ?」
どうにも自信なさげに言う。実際、面白半分ではあるのだろうが信じるか否かと質問をしたクセ、自分が信じないと言うのはどうなのだろうか。その噂の発信源はしらないが、それを知って信じていないならばまず私に話したりなどするわけがない。
「それは誰から聞いたの?」
「え?ああー……、二年生のさ、一ヶ月くらい休んだ子……中山さん?」
中山。つい一ヶ月前くらいに休みの事情も明かさず、先生曰く連絡すらよこさないで長期に渡って休んだという中山さん。噂では行方不明になっていたのだとか、何か危ないところにつっこんで大事にならないために休んだとか色々言われているがやはり真相はわかっていない。噂が風に舞うだけである。
「実は中山さん、異世界に行ったとか噂が立っているらしいよ?」
何故か誰も周りにいないのにこそこそと耳に顔を近づけて話す。
「バカバカしい。んなわけないでしょ」
それに反して、というよりかは半分いじる気分で大声で心の中はほくそ笑みながら言う
「アハハ、やっぱそうかな?でも地球があるなら異世界もあると思わない?」
「は?」
私の思いとは違い、困ったりもせず逆に大声で笑っている。それを見ながら少しがっくりとしてはいるもののなつのいっていることに首を傾げた。
「いや、地球が生まれたのって奇跡なんでしょ?それなら、その確率と一緒で異世界も存在してるんじゃないか……ていう」
うまく言えないようで、あーでも、とかううんとと唸っている。
「確かに地球が生まれたのは奇跡って言われているけど……。そもそもその異世界っつうのも人間が生み出した産物でしょう?」
"人間の作り出した世界"というよりかは人間の作り出した言葉ということだろう。造語。その発祥はわからないけれど。
「んん……でももしかしたら見たんじゃない?」
「初めて異世界を見た人が?」
「そうそう」
一理はあった。
まあ、そもそも誰が見つけたか、とかどうやって見つけたか。とかってのは昔に戻らないとわからないわけだしこんな議論をしていたってしょうがない気がする。
窓から夕方のオレンジ色な空が私達をてらす。いつの間にやら立ち止まって話していたらしい私たちは、どちらもやっと気づき、また歩き始める。
「しかし、どうやってはやったんかねえ」
歩いた時に話題展開。
私は溜息をついた。異世界に行く方法なんていう実にバカバカしく、実にありえることの無いものをどうやったらこんな噂になり、皆信じるようになるのだろうか。不思議だ。
「そこら変はオレにもわからないんだけどね。でもさっき言ったけど中山さんがいったって噂がたってるから信憑性の高い噂になってるみたいだよ?」
確かに中山さんは嘘をつくことは少ないし清楚で穏やかだ。
「ほら、中山さん、最近変わったでしょ?」
変わったという程変わってはいない。だが、なぜか以前とは違いハリがあるというか、威圧感があるというか……まあ、ともかく強くなった気がするのだ。
「中山さんには聞いたの?」
もちろん、中山さんが言ったんだよーなんて噂を誰かが流したとしてもだが信じる人は少ないだろう。確かに休んだとはいえ、その事情がわからないとはいえそんな非現実的なことがあるわけがないと高校生の頭ならわかるだろう。
「聞いた人がいるらしんだけどね。なんか、そんなワケないでしょーって」
笑っただけなんだって。
「……」
「どうした?」
私が無言なのが気になったのだろう奈津は首を傾げて私をじっと見てくる。
どうでもいいが彼は、体育会系ということもあってか、人の目をみて話すのだ。私にとってそれは正直苦手だ。
お前本当にPCゲームしてんのかって思う。
「いや、それ、普通にいってない反応でしょ」
「えーっ!?怪しいでしょ!!」
手をしたに振り回すようにやると、大声で眉を歪める。
「それいいだしたら、どれもこれも怪しいよ」
「いやいやいや」
否定はしているものの、反論はしていなかった。
「だって──」
「ほら、もうついたよ」
もうこの議論は不毛だと思い、そしてちょうど理科室についたことを口実に私はほぼ強制的にこの無駄な会話を終わらせる
「ちょっとー!」
奈津は不満らしい。
別にこの会話が楽しくないワケではない普通に楽しくて良い会話だ。
奈津はいつもこんな調子だ。ボケて、つっこんで、殴って……正直この関係が一番たのしい。
あとストレス解消にもなる。
……。
そんなことを思って、理科室、と書いてあるドアを優しく開ける。
「おはよう」
「今何時だ?」
ドアを開けてそうそう、ボケとツッコミが飛び交うここが、理科室……即ち、科学部の活動場所だ。
科学部の部員数は私達と先生をあわせて六人だ。
少ないと言えば少ないのだが、正直何もしない部として有名なこの科学部にとって、それはきっとちょうどいい人数なのだろう。
そんな科学部のメンバー
三年生でおふざけ好きの荒崎 裕美先輩。
二年生で少し真面目でノリがいい 海崎 弥佳
同じく二年の 佐藤 結……名前が普通。
そして、私達二人。 奈津と汐里だ。
……あ、あと気だるけな先生の山崎先生。
「おいこら」
怒られた。
だが、けれど怒っている先生の口調は怒っているソレではないし、そもそも机に突っ伏して真顔でいる時点で怒っているのではないだろう。
この科学部には一年生がいない。仮入部時期から新入部員が入る当日まで、珍しく私はずっと一年生を待っていたと言うのに一人もこないとは。一年生に脅してでも入らせようと思ったくらいだ。
……少し期待したのだけれど、珍しく。
理科室だから、長机がいっぱいある部屋である。
そして、一つの机に三人、中心に謎の陣の様なものを囲むようにして座ってこちらを見ている。
はてさて、さっきの会話を思い出してみよう。
『簡単にいえば、陣組んで、四人とかそこらの人と集まって、色々する』
陣。そして、四人。
私が考え、止まっているうちに奈津は私を抜かしてその机に向かおうとしている。
背中が無防備すぎる。
思いっきり、そして、持久走のごとく、私は思いっきり走った。恐らくこの時に五十メートル走をやったならば、私の自己記録ならぬ、世界記録まで出せそうだった。
そして右手を曲げ、思いっきり助走をつけて前へと、即ち、奈津の背中に思いっきり向かってゆく。
座っている部員達が気づかないほどの速さで──。
バキリ、と背中に、見事に命中した手の先の背中からそんな派手な音がした。
そして、それとまるでタイムラグが発生したかのように後ろを見た後、目を見開き、
「いっってええええええ」
と叫んだ。叫び通した。
三人は目を見開き立っている。先生はぼうっと本をよんでいる。ブックカバーをつけていて、本の題名はわからない、が。
「な、ななななんあ、なにするのさあ?!」
「……死ね、カス」
「直球な罵倒!」
そういって、倒れ、悶ている。
「おめえどういったことだこのやろう!?さっき今やらないといっただろうが!!?」
「ん……あ……」
口をパクパクしているが、背中をおさえるだけで声を発していない。
正直、面白いけれど、まあ少し強くやりすぎたかな
とりあえずは、痛みをおさえるようにして、陣の書いてある真ん中の、長机の先にある雑においてある椅子に座った。
その光景を見ながら、少し優越に浸りながら、その隣の椅子に腰掛けた
「さすがにやりすぎた?」
「やりすぎだ」
真顔でそんなことを言われた
「しかし裕美先輩、聞いてくださいよ、こいつ嘘ついたんですよ」
「え」
「本当か?」
ギクリ、とそんな顔をしている。
「ええ、本当。さっき、異世界うんたらって話をしたんですけどね。そのときに、その方法を今やらないよね?っていったら、即答といっていいほどに、やらないっていいましたよ」
一見、真剣味のような顔で言う。
「ううん。本当?」
「たしかに本当ではありますが、でもだけれど、今はしないっていったんですよ!今!!」
「私はそういうことをいっているんじゃねえよ!」
言って、座っている椅子を蹴った。
それをみて、弥佳がまあまあ、となだめる。
かわいいから許そう。
そう思い、蹴った足を戻す。
「んんーまあ、非はなっつんにあるかな」
淡々と裕美先輩が言う
「……そうすか。というかそのあだ名やめてください」
先輩が言うと素直なのは少しイライラする。
しょんぼりと顔をしょげる奈津は、あだ名に対して少し文句を言いつつ、私の方へと向いた。
「でも、さ。もしも、今から異世界にいく儀式をするよ、みたいなこと言って、信じた?」
まるで、バツが悪そうに目をそらしながら、真剣な声で、だが、モノ悲しげにしているなつ。
「信じられるわけないわな。というかその前に病院をすすめる」
「それさっきもやっていましたよね!?」
結局は、結果はかわらないのさ。となつに言い放つ。
本当に、かわりはしない。どうせバレるのだからしょうがないことなのだ。
……まあ、実際その儀式についていわなければよかった話なんだけど、な
「それじゃ、私は帰りますんで」
そういって、さっき座ったばかりの椅子を立つ。
そして、バッグをもって歩こうとしたときに、彼が、即ち奈津が袖を弱々しくつかんだ。
「……なんだよ」
「確かに、嘘をついたことは悪いと思うし、本当にそれは謝るよ、でもだけれど、やってみない?ね……?」
「却下」
涙目で語る奈津を、まるで崖から落とすようにバッサリと即否定した。
「……中学の時さ、全然話さなかったけれど、最初の頃は友達がいたよね」
「……?」
確かにいたが、二人。……でもその二人は──。
「でも、いつの間にかキミは、友達と話さなくなった。それどころか、友だちと話していた時の楽しそうな、穏やかな目を、まるでやり方がわからなくなったみたいに、キツイ目になっていたよね。それは高校でも変わらなかった」
「……」
中一の頃、仲良かった二人の友だちは、今ではどこへいってしまったのか。否。中ニのときから、遠くに行ってしまって、話さなくなってしまった。距離は、すぐ近くだったのに。たしかその時から、私は人と話すのが怖くなったのだ。
友達が怖くなったのと一緒で。
「怖くて、中学の時は話せなかったけれど、高校で、その目をなくして欲しいと思って、昔の目をもう一度、見たくって、話しかけた。そして部活も……」
そう、話が通じた、の前に彼から話しかけたのだ。かけてくれたのだ。気さくに、元気だった、って。そこから仲良くなって、そして部活に入らないかって言われて、いやいや入ったのが、この部活だった──いや、いやいやではない。内心は嬉しかった。信じ合える友だちがいることと、部活に誘ってくれたことが。
「……だから、楽しんでほしいの、この高校を──青春を」
悲しそうに、もう半泣き状態の奈津を私は真顔で見た。
そして、色々考えた後に
「プッアハハハハハ」
と笑った。
奈津が、そして皆がキョトンとした顔をしている。
「なによ、それ楽しんで欲しいって、十分楽しんでるわよ、私は……」
「……じゃあ」
「はあ、わかったわよ、やるわ、やーる」
そこまで言われて、やらないやつはきっといないだろう。ここまで言われてやらないヤツはきっと友達もいないだろうし──。
そう思い私は立った席にもう一度座って笑った。
「んで、私はなにするのさ」
そういうと、さっきまで(うざいくらいに)母親が息子の友達と仲直りした、我が息子を見るような笑顔でみていた裕美先輩が、先生の方を見た。
先生はさっきのシリアスな場面でもずうっと本を読んでいた、こっちに眼中が無いように。
「せんせーやるよー」
「おう」
そういって、本を置いてワクワクとした、さっきまでとは違う無邪気な子供のような目をしてやってくる。
……もしかしてこの人が流行らせたんじゃあないだろうな
「なんだ、そんな訝しげな目をして、さ、始めるぞ」
そういうと、先生はろうそくを丸い不思議なカタチ──円の中に星のようなものが書いてある、そんな陣の隅に4つ、置いた。
「じゃあ、まずそれぞれきちんと座ってくれ、稲荷、お前はその誕生日席な。」
「……」
皆が、さっきまでバラバラだった椅子を机に合わせて姿勢をピンと、良くした
そして、私も。
「よし、オッケーだ最高最高。それで、目をつぶってくれ、そして、何も考えるな」
感じろ、とは言わなかった。
私は、目をつぶる、真っ暗な世界が、広がる。
カツカツカツ、先生が歩く。
そして、一人ひとり、こそこそと耳元で何かをささやき、それを小さい声で答える、それを全員似続けている。止まっては聞き、泊まっては聞き。そして、ついに稲荷の番になった。
先生は耳元に近づき──
「キミの名前は?」
単調的な口調。
「稲荷、汐里」
そして、稲荷も単調な口調で。
「好きなものh」
「キツネ」
即答。
それに少し先生は笑い、ありがとう、と言った。
「目は瞑ったままで、考えてもいいぞ、」
そう、いって、先生はニヤリと笑った。
──……
先生の靴の音はもうしない。座ったのかそれとも動いていないのか、気になるところだが、
いや、しかし、それでもこんなしんとしているのは少しばかり怪しい、さっきまで、ずうっと風の音や、鳥の声が聞こえていた。だが、名前を呼ばれ、好きなものを聞かれ、そして、考えてもいいと言われた時。その瞬間から、音は、まるでそこから消えてしまったかのように、はたまた、耳から鼓膜が消えてしまったかのように、何も、聞こえない。目をつむったままだ。
数秒、否。数分。
私はそろそろ、イライラしてきたころに。
「なんだ、これは、人の子︙︙?珍しいのお」
古風な喋り方、まるで幼い子供のような声。
まさか、イタズラで誰かがやっているわけではないだろう。
こんな声出せないだろうし、そもそもこの声『しか』聞こえないなどということは、ないであろう。
「ああ、ああ本当だ、珍しや珍しや、天照様はどこにおるのか、ネているのかの?」
さっきとは違う声、やはり、さっきのように幼い声。だが、少しばかり低い。
「……はっは、しかししかし、何故この娘は目をつぶっておるのかの?」
「さあな、意識をなくしているのではないか?」
「ふうむ、そういえば娘の体、というのは見たことがないなあ、少しくらい脱がしても大丈夫だろうか?」
「別に、問題な──」
「問題しかねえよ!?」
あ、しまった、ツッコんでしまった、というか目を開けてしまった。
だが、私はまず、ツッコんでしまったことよりも、目を開けてしまったことよりも目の前の光景に、声をあげそうになった。
そこは部屋なのか、それとも空間なのか、わからない。
真っ暗なのだ。目をつぶっている時よりも真っ暗、前に手をやっても、そこには何もない。
怖いと、恐怖した。
「何をしているのだ?」
低い声に私は肩をゆらす
恐らくは、目隠しされた人のように、手を前にふらふらと動かしていたのだろう、だが、その声の主すらもわからない状況じゃ、しょうがない気がする、が。
「……ここは、どこですか?」
恐る恐る、私はその声に聞いてみた。かすかに声が震えている。
「神世界受付センター」
えらく、すごい名前だけれど、
しかし、この話の流れ的に、私は本当に異世界に来てしまったのか?
だとしてもこの真っ暗の中で暮らすのだろうか?
異世界ってのはなんていうか、ファンタジー的で、村とか、魔法とかある世界だと思っていたのに。
「……天照様ー?」
と、私が考えているうちに誰かを、読んでいる。
天照──神世界と言っていたけれど、それが本当ならば天照というのはやはり。
「なんじゃなんじゃ、五月蝿いのう」
「あ、起きていたのですね」
「あんな激しいツッコミがあれば、な」
と、何か、キレ気味にそういった。
──天照、即ち天照大神。
日本の最大の神と言われる──。
というかいたのね。神様。
「んん。この人間──、名前はんっと……」
「稲荷です、稲荷、汐里。」
神様が言う前に私は言った。
目の前の状況にただでさえ混乱状態なのだから、神様に無礼しても多少はしょうがないだろう
「しょうがないわけ、あるか」
……神様だから心を読めるのかな
「当たり前じゃ。まあ、読めないやつもいるがの」
……。
「それで、神様、……天照様?」
「別にどっちでもいいわい」
半笑いしながら言う。
「……それにしてもお前が、楽羅の言っていたヤツか、確かに、可愛らしいのう」
「……楽羅?」
「ああ、こちらの話じゃ、」
気になるのだが、
そういえばのそういえば、天照様は私の姿が見えたのだが、やはりくらいトコロでも目が見えるということなんだろうか、まあ、あの天照様だし、大物だし当たり前っちゃあ当たり前なのだけれど
「ん?ああ?すまん、そういえば電気を付け忘れておったのお」
──、電気?
そう思っているうちに、明るくなる、それは空間ではなく、部屋であった。
言うなれば相談センターみたいな感じである。受付は一つ一つ、壁で挟まれており、一人ひとり、話しやすいようになっている。その前には待合室なのかたくさんの椅子と、テレビがあった。
何故か私は受付の前あたりにぼうっと立っているだけ、その周りには何もない。
私は一歩も動いてない為、そこが空間だと思ったのだ。真っ暗の──空間。
そんな中、天照様っぽい人はわたしの前のうけつけで笑ってこちらを見ていた。
にこやかに。
天照様は以外にも女の姿をしている。
髪型はツインテールで金髪である。服はシンプルなジャージにフードを羽織っている。
座っているため、さすがにズボンがどんなのか、というのはわからない。
キツネ目で、可愛らしいと思った。
座っている割に、私の胸あたりまであるあたり、恐らく身長は高いのだろう。
神様、って想像してたのと違うな
「嗚呼、コレは借りの姿じゃよ?本当は姿なんて存在しないからの。神様は、いろんなものになれるが、元のカタチはないのじゃ」
元の形……かなりすごいことをいっている、が。
彼女は、特に何事もない笑顔で、「まあ座れ」といって椅子を触らずに動かした。
その言葉に甘え、その椅子に腰掛けようとした時──自分の姿が自分には見えないことに気づいた。
動くこともできない。
下を見てみても、自分の姿は見えない。言うなればゲームにある観戦モードのような感じだった。
混乱していた所為か、気づいていなかったのだが、瞬きだってしていなかった。
その状態に、神様は首を傾げている
「何をしているのかの」
……?》神様は私の姿が見えている?。
「……んん?ああ、そうか、人間は弱いからのお……ちょいとまっておれ?」
そう言うと、後ろを向き。
「おーいへびいー」
と叫んだ。
へびとはなんだ、と考えているうちに、壁を突き破るようにして、普通のへびが現れた。
それは、神様といえるのかわからないが、普通の蛇だった。
だが、目は汚れた赤色で、うろこがくっきりとうつり、白くて、鮮やかな色をしていた。
キレイだ、と私は思った。
そのヘビはうにょうにょと神様の方へと近づいてく
「もー、へびって呼ばないでくださいよー私には蛇神っていう名前がありましてね?」
と喋った。
……喋った?
私は唖然とした。ヘビが、ただのヘビが喋るなどということ、あるのだろうか?いや、もう神様だとか、この異世界(そもそもココが異世界なのかわからないのだが)だとか、信じられないことが連続しておきているのだけれど……。
「……夢か」
「へ?」
「は?」
ぼそり、とつぶやくようにして言う
「そういえば天照、このひとの子はなんだ?もしかして、私を呼んだのはこいつのことに関してか?」
夢ならばこんな風に喋ってもしょうがないか、きっと目をつむっているうちに寝てしまったのだろう。まったく、何をやっているのだろう私は。
その蛇神とやらの言葉を眼中にない用に心でつぶやき、ほっぺを思いっきりつねった。
きっとこれでいつもの理科室に戻って、皆が笑顔で迎えてくれるのだろう。先生はまた、飽きたようにして本を読んでいるのかな。
「……いたい」
「当たり前だろう、人間は弱いからな。」
当たり前の返答が返ってくる。
当たり前か?
引いているような目をされてしまう。心なしか、ヘビの方もドン引きしている気がする。
「なんだこの人の子は。情緒不安定なのか?」
引いていた。ドン引きしていた。
「……んー、恐らくこんな神世界にきてしまった所為だと思うんだけど」
「初めてか」
「まあ、それでほら、前にお前が持っていたあれを貸してほしいんだ、ええと名前なんつったっけ」
「ああ、妖力測定器のことか?」
「そうそれ、貸して」
「いいぞ」
夢ではない、夢ではない?夢ではない?!
この世界はなんだ?神世界?
私は彼らの会話を聞いておらず考えていた。
ここはどこなのか、何故自分が自分の姿を見れないのか。
結論は出せないまま、時間だけが過ぎてゆく。まさか本当に異世界にいくなんて、まさか本当に異世界があるなんて──!
そうして慌てているうちに、腕に何やら洗濯バサミで挟まれたような感覚になる。いや、実際に挟んだのだろう。
いつの間にやら神様が私のところに近づき、自分には見えないその体に何やら、電流計のような機械から伸びるコードの先の洗濯バサミをはさんでいた。
話を聞いていなかった私は何をしているのかわからず首を三回くらい傾げた。
そして、そんなことをしている内に、そんな電流計のようなものからピピピ、と音がでた。
神様はそれをじいっと見ている。真剣に。
「50.4……案外高い」
そういって、また笑う。
この神様は真顔というのが苦手なのかもしれないと思うほどに笑っている。
「何を図っていたのですか?」
「妖力」
「妖力?」
思わず聞き返す。
漫画などで聞くが、しかしそんなものが実在するというのだろうか。
「実在するよ。現実は小説よりも奇なり、ってね。」
「現実、じゃなくて事実ですよ」
「テヘ」
「カワイイ……!?」
妖力──何故そんなもの、図ったのだろうか。神様と妖力。関係はあんまし無さそうな気がするのだが。
「関係はあるのじゃよ。お前ら人間にとって、儂ら神様も妖のようなものだからのう。そんなことよりも、お前、現実にあり得ないこととか……そうじゃな、妖怪とか見たことあるかの?」
妖怪──私は考える。見たことなどない。小学生でも、中学生でも、そして……高校でも。でも、ただ昔のことだからか、小学生と中学生の記憶はまったくといっていいほど思い出せない。
それでもなぜか、あったことないというのは確信があった。
「無い、ね」
相変わらず、心を読めるというのは──神様にとっては便利なのだと思うが、私としてはすごく嫌になる。
人間であったなら殴っていただろう。
「ふうん、どういうことかわからないけれど……」
と、また考える。笑顔を打ち消し、真剣な顔をしている。
「……??」
「ああ、ごめんなのじゃ……ん、ああもう」
と、何か投げやりに、頭をワシャワシャとしている
「あ、あの……?」
「ダメーだ!この口調やーめる!」
と、言った。
口調?あの古風な口調のことなのだろうか。というかそれ、フリだったのでしたか。
「うんうん、だって、ほら君らが想像している神様って、古風な喋り方で」
確かに、それは言えている。私もそんな感じだと思っていた。
神様は昔から生きているというイメージがあるため、昔の口調が直っていないというか、昔の言葉しか知らないという感じがあるのだ。
「ロリ姿で、巨乳でキツネ耳が生えていて──」
「待って」
「ん?」
「その内容は偏っている。古風はともかく、それはロリコンで、巨乳派で、ケモミミナーな人の意見だと思う」
「だが、私に会った大半の人はそういっていたんだけれど……」
「……」
その発言は怒られそうでありそうだが、しかしこの……神世界はロリコンの人を必然的に集めてしまうのかな。
そしたら私はロリコン認定されている……!?
心外だ!というか私は女だ……!
「まあ、だからそういう格好して誘惑しようとしていたんだけどね」
何故誘惑しようとしていたかは聞かないほうが良いのかなぁ。
そんなことをにこやかな笑顔で言っている、がかなりやばいこと言っていると思う。
「……話戻しましょう」
というか、私は通常時、ボケにまわるのだけれど、ツッコミは少し、アレなんだけどな。
というか、ほぼほぼキャラ崩壊になっている気がするんだけど。
「先程、妖力が高いと言っていましたけど、どういうことなので?」
「そのまま、妖力が高いってことだよ。普通──即ち、一般人は、通常時、20から30が相当の妖力なんだけどね」
「妖力、って0なことってあるんですか」
「それは死んでいるよ。そもそも、人間であれ、神様であれ、妖力は必ずあるんだ。死人は別だけどね。」
依然と変わらず、笑顔である。
その理論でいくならば、人でも、神様でも、妖怪であり、妖である、ということになるんだけど。
「間違ってはないよ。エヴァで言うLCLだよ」
「……んっと、エヴァはたしかに知っているし、アニメ、旧劇、新劇、すべて見ているけど、LCLってなにか、イマイチわかっていないんです」
イマイチわからないんだよね、Wikiよんでもイマイチわからなかった。
「私もよく知らない」
「なんで言ったんですか」
本当に神様なのかなと心配になるんだけど。
「まあ、つまり妖力は生命のスープ、ということですか?」
そしたら人類補完計画、はじまっちゃうんですが。あんなのはやだなあ。
「いや、違う。んーええと、そうだねぇ……まあ、要は動物として、生き物として、必要なものってことさ」
まあ、神様を生き物と定義するならば、だけど、と呟いた。
「それでいくと、全員が妖怪ってことになると思うんですよね」
「そうかもね」
彼女は私からずっと付けていた電流計のようなものを外した。
それで話は終わりと言わんばかりに、ずうっと話に参加できずにいた(ただ、興味がないだけかもしれない)ヘビに返す。ありがと、とヘビに手を振ると、ヘビはんじゃ、とどこかへと飛び出していった。
「……つまり、さっき妖怪を見たかどうか聞いたのは数値が高いから、ですか」
つまりは、そういうことだろう。人間を妖怪と定義せず、怪しいものと定義せず、言うならば、数値が高ければ妖怪が見える、という。
「……人とかの動物や虫は、妖力が10程度あれば見れる、妖怪は、まあ、種類によるけど、大体は40くらいからなんだ。」
また、彼女は腰掛けている。
「……じゃあ、神様はどのくらいなんです?」
普通ならば、強さ的には、動物<妖怪<神様だと思っているのだが……。
これもこれで、漫画とかの知識なのだけれど──。
「大体あってるよ。時々妖怪が神様を超える時はあるんだけどね。あ、でも動物が超えることはないよ。そもそも、動物のほとんどは妖力を感知してはいないしね。妖怪なんてのは名前そのものがアレだからね」
「……ううん、やはり人は下等な生物なのですね」
「人間というか、動物そのものだけど。まあ、それでもまれに、気づかないうちに妖力の高い子ができることがあるんだけどね」
「それが私ですか」
「……多分ね」
何か含みのある言い方をしていることに、違和感を感じる。そして、何故か目を逸らしている。心なしか冷や汗をかいているような気もする。
「……というかなんでこんな話になったのでしたっけ」
かなり話の方向が斜め上に行っている気がする。
「……ああっと、あ、そうだ。思い出した思い出した。たしかアレだよね、何故、私にキミの姿が見れて、キミが自分の姿が見れないっていう」
「そんなんでしたっけ」
なにかと、曖昧である。
ただ、この話中、ほぼ雑談といっていいほどの話のためか、緊張していた私は、和めたきがする。
神様には感謝しかない。
「まあ、要は、妖力の違いの所為です。この神世界では基本的に神が優遇される。即ち、妖力は神寄りになるんだ。だから、妖怪や、人間は妖力が小さくなる。」
普通に説明しているが、さっきの話からでは到底、わからないようなことがでてきたのだが。
彼女は依然と、笑顔だ。
「あー世界について説明していなかったっけ。んじゃちょっと待って……、まず世界って言うのは……」
なんて、そう切り出して、手から突然、どでかい本を出現(召喚?)させ、長きに渡る説明が始まろうとしていた。
今の私、即ち、異世界へと飛び出す直前の私は、後悔していた気がする。
まあ、会話できたことは良かったと思うんだけど。
時間が全然わかんなかったから、何時間か、正確にはわからないワケだけど、恐らくは半日、十二時間くらい、話していたと思う。
ただその時間と比例しているどころか、反比例レベルに内容が薄っぺらかった。いや、時間からしたら、そのくらいなのだが、実際は深い話だった。
イマイチわからなかった。
だからこそ、自らまとめて、少し整理がてら、思ってみようと思う。
まず、世界とは、簡単に言えば3つあるらしい。
妖怪の世界と、人間の世界と、神の世界。
妖怪の世界では妖怪の妖力が。
神の世界では神様の妖力が、上がるらしい。
だが動物の世界は、妖力が低いためか動物も妖怪も、神様も上がらないらしい。
そこらへんは神様もよくわからないらしい。
そして、だからこそ私は神世界に来て、神様の妖力があがり、動物の──私の妖力が下がり、自分自身に姿が見えなくなった、らしい。
つまりは元あった50という数値から、10くらいまで下がった、ということらしい。
50から10まで下がるということは普通の人間は死んでしまうのではないかと思ったのだが、どうやら、相談センターのみだけ、保護しているらしい。
下がる分には下がるが、死に至るまでにはならないらしい。
……便利な設定だ。
他にも、妖力がパーセンテージを超える……即ち100を超えると神力になるらしい。
そんな話が約数時間に渡って話されたとなるとかなり引くのだだけれど、というか、私的には、語彙力とか、もろもろ神様にはないのかな、と思う。
そんな数時間の中で一つ、話していたのが、神様はカタチが存在しないということだ。
「さっきも言ったけど神様はさ、君らでいう、んっと、カタチが存在しないの。この姿だって、私が想像して、作ったもの。だから神世界の世界はさ様々なモノがいるんだ。面白いよね」
なんて、面白おかしく語っていた。
見てみたい気がするけど私は死んでしまう気がする
「恐らくは、気絶だね」
それ見れないじゃん。なんてことは言えないが
「聞こえてる」
そうでした。
「そういえば」
なんて、唐突に切り出したのは、神様。
正直、そういえばの要素はなかった。
「元々、異世界の為にここにきたんだよね」
「あ」
そういえば、そうであった。まあ、実際はいやいやというべきか、はたまたつれられてというべきか。
というか、ここが異世界だと思っていたのだが──。
「違うさ、いや合ってはいるけど、異世界ではあるけど君が行くべき異世界ではないよ。ここはいうなれば中継地点のようなものだね。私とか、いろんな神様がここにきた人間とか、キツネとか犬とか猫とか、まあ動物が来たときに要望があれば聞くのさ」
だからー、なんていって突然と透明で、いうなれば近未来的な画面が神様の手の先に現れ、何か、指先でスマホをいじるが如くポチポチしていた。
何をしているのか覗いても、それはただの透明な画面にしか見えなかった。
「君はここから次元移動をするんだ。さて、何か要望は?」
今まで史上最大の笑顔といってもいいその笑顔を見つつ、私は実感した。
本当に異世界に行くのだと。嗚呼、本当にいいのだろうか?いや、ダメだろう。
だから──そう思いながらも私は、友達を思いながら私は。行い放つ。
「帰ることは出来ないか?」と。
アスペルガー並の回答を。
友達を思って、そう言った。