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第二十四話

すでに胃が痛いのは気のせいだろうか。


セシリア嬢とはかれこれ3年程の付き合いになる。サロンに招かれた時に知り合ったのだが、第一印象が悪すぎる。お互い。


傲慢令嬢 対 傲慢令嬢だ。

争うのは目に見えているのに、何故大人は引き合わせたんだ、と文句を言いたい。いずれ、将来的には顔を合わせるが、子供の時のようにはならないだろう。


お互いが世界で一番の自分だったのだ。

セシリア嬢が召使いを呼んでいても、自分が呼べばこちらに来ると考え、私が手を伸ばした菓子を奪っても許されるとセシリア嬢は考えていた。


内容は今考えるとくだらないが、問題はそこではない。私が一番ではなかった、ということにある。


「なんですの!この方!ここは私の家でしてよ!!」


「私は公爵令嬢よ!何故伯爵令嬢の下につかなくてはいけないの!?」


と、まあ、お互いに頭にきていた。それ以降は親から厳しいお叱りがあったので、にこやかに過ごしている。





ここがセシリア嬢が滞在している部屋か。流石に私とは少し離れた場所に部屋をもらっていた。

それが、身分の違いからか、初対面の時のことが知れ渡っているからなのかは不明なところだが。


「セシリア様。ロザリー・クローディアです。少しよろしいかしら。」


「……ああ。ロザリー様。どうぞお入りになってください。」


一瞬の間が気になるが、許可を得たので遠慮なく、ズカズカと入り込む。


「セシリア様は此度、私が王家の晩餐会にお呼ばれしているのはご存知?(貴女は招待されていないみたいだけど)」


「ええ、もちろん。……陛下もご乱心のようですわね。(事件の犯人の疑いがある人を呼ぶなんて)」


わかりやすい嫌味を言えば分かりやすい嫌味で返ってきた。やめておこう、不毛だ。


「そこで、私が貴女をご招待しにきましたの。」


「まあまあまあ!貴女からのご招待なんて!是非。」


あからさまに態度を変え過ぎである。

いそいそと椅子に誘導し、紅茶まで淹れ始めた。ここまでだと逆に清々しい。


「まあ、ひいてはアレクシス様からのご招待です。決してお忘れなきよう。」


「承知しております。」


隠そうと思っているみたいだけど、アレクシスからの招待だと聞き、私の後釜でも狙っているのか、ニヤケが止まらないらしい。


部屋を出ると何やら中でバタバタと忙しなく動く音がする。気合いを入れて行くようでメイドも私に申し訳なさそうに部屋を出入りし始めた。


私が邪魔だから申し訳なさそうにしているのか、婚約者から外されるだろうから申し訳なさそうにしているのか。








部屋へ戻るとまあ、当然のようにノエルがお茶の用意をして居た。先ほどの様子から、セシリア嬢は記憶に残る子供の頃と変わらない(少し頭の弱い)子だった、と思う。


そのことを言えば、同レベルでなくては争いは生みませんからね、と返された。

それは私も頭が弱いってことか、ん?


「何はともあれ、裁判を受ける気持ちで晩餐に参りましょう。処刑はないとはいえ、社会的に今回が最後の晩餐にならないよう祈ってます。」


「この歳で最後の晩餐は頂きたくはないわ。ちょっと考えることがあるから、部屋を出て行ってくれる?」


「仰せのままに。」


さて、順を追って考え直そう。

婚約発表の日、アレクシスと私、ティモシーとアリエスが其々用意を終え、挨拶に回る頃、アリエス嬢が死亡しているところに私が出くわした。

だんだんと人が集まる中で第一発見者の私が疑われることになる。

王家の方々も形ばかりは疑っているふりをしている。


しかし、最近の国王は王権の増大に執心しているらしい。その中で第二王子の婚約者がいくら辺境伯令嬢だったとしても殺人をした、という事実をもつのは避けるべきだ。

自分で言うのは何だが、国内では私以上に王権増大に貢献する令嬢はいない。有力貴族を内に入れ込んで置いて損はない。


王権の強化にはもう一つの方法がある。

有力貴族の削ぎ落としだ。

公爵家と辺境伯が婚約によって懇意になれば、今後王家を脅かす一大派閥となりかねない。結婚は立派な政治材料となりえる。しかし、破棄となれば全ては水の泡どころか、令嬢の死亡によりマイナスになることもある。

事実、その公爵家と最近力をつけた辺境伯は少し落ちぶれた。


今回のアリエス嬢死亡は、王家にとって私が犯人じゃなくなりさえすれば、願ってもない事件だ。真犯人をあぶりだす事にも興味があるだろう。



王家が味方になってくれる可能性があるのだ。


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