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第二話

後ろに付いてくるノエルを気にしながらも、家族での食事に向かう。今日は正式に家族集まっての食事だ。


「お嬢様、本日は旦那様から何やら知らせがある様で。お嬢様の喜ぶ顔を楽しみにしておられました。」


後ろからノエルの報告する声がする。喜ぶ顔、ということは、何か贈り物が有るのだろうか。


明日、このロザリー・クローディアは8歳の誕生日を迎えるのだ。連日仕事に忙しいお父様が前日に祝ったとて、不自然ではない。


それとも、明日に園遊会でも催すのだろうか。園遊会は私の1番好きな催しでもある。専属のパティシエが腕を振るって作り上げる、輝くケーキや、着飾ったレディが沢山いる光景は綺麗なものが好きな私にとっては魅力的だ。

|(私はこんな性格だが、身分、容姿のおかげで友人と呼べる親しい者はいる)


そう考えた私は、若干胸を弾ませながら、ダイニングへの扉を開く事となった。








家族全員での食事はとても緊張する。お父様、お母様はそれなりに、壮年ではあるが、それによってより魅力が増している。お父様は顎に髭を生やしてはいるが、不潔感は無く、不思議と似合っている。お母様は艶のある髪を綺麗に纏め上げ、真っ赤な口紅を引いている。


私にはお兄様もいらっしゃるが、現在は隣国へ留学しており、大変立派な活動をしているらしい。


「ロザリー。話があるのだが、ノエルに聞いているね?」


食事がいよいよ終わる、という頃にお父様は口を開いた。


「はい。」


返事をすると、お父様は眉間にしわを寄せて、重苦しそうに話し始めた。


「いやな、ロザリー、君は明日で8歳だろう。君の兄、アダルバートも8歳で海外へ目を向け始めた。君のこれからについても考えるべきだろう、と王に相談した。色々な所へ行かせるべきか、と。だが、君はレディだ。些か不安がある。」


「……はい。」


「結論を言おう。王は、君が第二王子、アレクシス・ディースブルク王子に嫁入りしないか、とおっしゃった。結婚は先に延ばしてもらえたが、明日には婚約前の顔合わせだ。」




お父様の言う、アレクシス・ディースブルク王子。

残念ながら、第二王子。第一王子よりも王位継承権がない。だがしかし、とても有能だと噂だ。

上手くやれば、王太子も夢ではない、と。

婚約をしておくのに、此方も損はない。婚約者だという事で、私の位も上がる。


然し、そんな甘い話がある訳がないのだ。

王からの提案だ。彼方にも得が無ければならない。その得がわかるまでは、お父様は婚約という形で流したい、という事だ。


「明日は早い。ゆっくりと休みなさい。」


「はい。失礼します。」













部屋への長い廊下を歩く。後ろでノエルが安心した様に


「よくやりましたね、お嬢様。旦那様の前で何か粗相をしたら、私の責任になるところでした。」


と呟いた。いつもなら喚くところだが、そう、と気の抜けた返事をして、部屋までの道をそれる。


「おや。どこへ行くんです、お嬢様。」


「明日はお早いと……」


などの呼びかけには反応せずに、


「先に部屋に行って。」


と命令をする。







左に曲がり、3番目の部屋に入る。中央の花瓶を右にずらし、右の本棚の本「secret」を腕に抱えれば、壁に下へと繋がる階段が現れる。

この屋敷はとても広い。

隠し通路だらけで、お父様も把握していない扉も多い。この扉もそのうちの1つだ。昔、お兄様に教えてもらった。



下へ、下へと降りていくと簡素な部屋に出る。そこの部屋の隅で丸くなっている人影を見つけ、軽い足取りで近づいていく。







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