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第十八話

部屋に帰った私は考えたが、まずはアリエス様の交友関係を洗ってみるまでにはどうしようもない。


王妃様は、「今度の夜会」と言っていた。それはおそらく、近々私とアレクシスがこの国で言うところの準成人_9歳を迎えることのお祝いだ。


成人年齢は18歳であり、この準成人は元の世界で言うところの二分の一成人式というやつだろう。

違うところは、この準成人になる事で実質的にできる事、認められる事が多くなる事だ。


海外への渡航、学問の実践、または専門的な師への弟子入り。自由度が高くなるのだ。

ちなみに、兄が準成人になった時は、海外への渡航の権利はなかったので、少し経ってからの出立となった。この改正があってからは、もう少し前にやってくれれば、と嘆いていた。


学問の実践とは、今まで知識として蓄えたものを、やっとの事で自ら証明する機会を得たのだ。

実験をし、疑問を抱けるまでに基礎知識を得る事が準成人になる前までの課題である。


専門的な師が無ければ特殊な知識はつかない、と専門職の減少を嘆いたことから始まった制度である。

この場合は、小さな子供には親から離れなければならないので辛いことではあるが、平民が官僚になれる機会がある数少ない道なので、この制度を利用する人も多い。


あと、この国特有といえば、「身分証明書」が配布される。元の世界でのようではなく、字の通り、身分を証明するものである。

王族、貴族爵位、神職、富裕平民、下層市民、その他。

富裕平民はいくら以上の資産と決められているようだ。そして、その他というのは、あのグリゴリーのような子のことを言う。準成人になって初めてその他の人について教えられるのだ。






と、まあ、長々と説明してしまったが、これが準成人式だ。私は中身が8歳ではないので少し恥ずかしい。

兄も、もしかしたら私が準成人すると知って帰国するかもしれない。


そして、王宮の大広間に国中の特権身分が集まるので、犯人もいるだろう、という話だ。



そうなると、私は当日には何もできなくなってしまう。あまり首を突っ込むのは良くないが、私の容疑もかかっている。そして多分、私の首もかかっている。


私は夜会が始まるまでにこの事件について動かなければならないのだ。














ロザリーがアレコレと考えている、ちょうどその頃。ロザリーの父と母は一通の手紙を挟んで向かい合い、呆れたような顔をしていた。


「やはりと言うべきだが、アダルバートから手紙が届いた。昔から妹を気にかけていたからな。そろそろ準成人だと気付いたのだろう。」


「まあ……アダルバートったら。そろそろ妹離れもしなさいな。」


「あれはな、ロザリーの我儘もアダルバートの影響であるといえなくもない。……何々、ああ、あれだけ最初の文は父母への文にしなさいと言ったのに、またロザリーの話だ。『私の愛しい妹、ロザリーがもうすぐ誕生日を迎え、準成人になると思い出しましたので手紙を送ります。おめでとう。準成人式の3日前には着く予定です。』……何?」


「え、3日前?今日で4日前よ?明日に着くの?」


「おそらくは、直前に出せば断れまい、という事だろう。あいつに継がせるのが不安になってきた。」


ロザリーの父は、目頭に手を当て溜息をつくが既に遅い。しかし、久しぶりに我が子が帰ることを知った父の顔は何処か穏やかだ。

母も通常は感情の起伏が少ないが、どことなく浮かれているようだ。






夜会までの間は王宮に滞在することになった。準成人式の日に両親と合流する予定だ。


「アレクシス、今なら大丈夫だろうけど、日付変わってるからなー。疲れてるだろうからやめておこうかな。」


夜空は星が広がっていて、帰ったらこんな物見られないという気持ちから、窓を開けて見上げた。


「……ローズ?」


下から声がするので見てみるとティムが何をするでもなく、庭に佇んでいた。声が少し震えているようだ。


ぐず、と鼻をすすり、泣いていることは分かったが、幸い暗いので分からなかった振りをした。


「あら、ティム。ティムも星を見ていたの?」


「ああ、綺麗だなと思ってな。お前もか?」


「ええ。気晴らしよ。」


「そっか。」


ティムの一言で会話は止まり、沈黙が流れたが、ティムの方からひっく、という声が聞こえるあたり、泣き止めないのだろう。


「なあ、他の国ではさ、故人って星になるんだって。」


ティムの方からそんな声をかけてきた時、私は驚いた。触れてはいけない話題だと思ったからだ。


「ははっ。あのさ、気遣ってんのバレバレだから。ローズのくせに何してんの。いつもみたいに無遠慮に言えばいいさ。」


「ティム!」


「ああ、冗談だよ。はー……綺麗だな、星。」


「……そうだね。じゃあ、私は寝るね。」


「おやすみ。」


1人になりたいだろうと思い、ティムへ別れを告げ、ベッドに横たわった。


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