第十三話
「アレクシス様、お久しぶりです。」
隣にティムがいるので、敬語で話さなければならない。1回普通に話してしまうと、その後敬語で話さなければならないのがとても面倒くさい。
「アレクシス様。こんにちは。ティモシー・エーベルトです。今日は、ご婚約おめでとうございます。」
「ティモシーか。貴方もご婚約されたと聞いた。今日の段取りはどうなっている?」
「このようになっております。」
と、私が企画書を出すと、少し口元を緩めて
「ティモシー。貴方も婚約者が控えているのだろう?其方へ行って良い。」
「はい。ありがとうございます。」
とティモシーに指示を出し、失礼します、とティモシーが部屋を出た。
少しの沈黙の後、ふふ、と笑いながら、
「これ、提案したのあんた?」
と言い出した。
「半分正解。私とティム。」
「へえ。あんたはともかく、ティモシーは意外。こんな事考えられるんだ、あいつ。」
「いやいや、ティムはこういう事しか考えないよ。」
「王宮ではいつも固いのに。……はーあ。ついにあんたとの婚約が確定しちゃったのかー。」
とニヤニヤ笑いながら、こちらを見て来た。
ついに、今日は婚約発表だ。
数日かけて準備した会場は煌びやかで、由緒正しい方々が集まっている。
きっと、みんな私とティムの婚約発表だと思っているに違いない。
それにしても、まさかアレクシスまでも乗り気になるとは思わなかった。あんなに気力がないキャラで売ってるのに。今は気力がないっていうよりも嫌味な奴になってるが。
ちょっと可愛いかもしれない。
そんな事を思っていると、コンコンと小さくドアがノックされた。アレクシスと一緒に出てみると、其処には少しタレ目の可愛らしい女の子がいた。
「初めまして。第二王子様、公爵家御令嬢様。私は、バルト辺境伯の娘、アリエスと申します。この度、ティモシー・エーベルト様と婚約いたしました。貴方方もご婚約おめでとうございます。」
なるほど、淑女らしい淑女だ。ティムが好きそうだなぁ。
バルト辺境伯なら、辺境に領地を持ってはいるものの、最近は力をつけてきていて有力貴族になりつつある。
ティムの相手として不足ないだろう。
「こんにちは。アリエス様。宜しくしましょう?」
「はい。宜しくお願い致します、ロザリー様。」
最近は可愛らしい女の子とは話さなかったので、この子はとても癒される。
きゃっきゃうふふ、と私達が話していると、召使いが、もうそろそろご準備を、といってきたので別れた。
やばい、めっちゃいい匂いした。
「ロザリー、準備行ってらっしゃい。」
アレクシスは召使いとまだ話があるようで、ここで別れた。
「馬子にも衣装を楽しみにしてるよ。」
いや、やっぱり可愛げはない。