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あるパーティーの備忘録-03
「大きいかの? ワシとしては、小声のつもりだがの?」
すっとぼけた顔でガロンが答えた。
「馬車の車輪の音が無ければ、後ろの方々に聞こえてしまう所ですよ」
ジュールはニッコリ笑って続けた。
「もう少し、ご自分の声の大きさを自覚していただかないと、余計なトラブルを招きよせてしまうのではありませんか?」
優しそうな顔をしているのに、なかなかに辛辣である。こういう時の口調は主人であるバルナスにソックリなのだが、本人にその自覚はないらしい。
「あいかわらず、さらっと毒を吐くのぉ。ワシがヘンな性癖に目覚めてしまったら、どうしてくれるんじゃ?」
「そうなりましたら、ご自分で解消してください。大きな街であれば、そういうお店もあると思われます」
ジュールは冷たい目でガロンを見ていた。
「つれないヤツじゃ」
苦笑で誤魔化すガロンであったが、内心でこう思っていた。
“優しそうな見た目の娘が、氷のような冷たい目で罵るというのは、なかなかにクルものがあるんじゃな……”
すでに立派なヘンタイの域である。