あるパーティーの備忘録-11
「それと、勤労奉仕ですね。農園は勤労奉仕の農民たちで混雑していると聞いたことがあります」
僕らは軽口を叩きながら神殿内を歩き回る。僕らの足は神殿内の孤児院に向かっていた。
「これはまた……」
僕は孤児院の建物を見上げ、絶句していた。今にも崩れてきそうな建物の外壁には大きな穴が開き、内部の様子が見えそうだったのだ。
「孤児院なんて、どこでもこんなモノですよ。孤児たちに食事を与えるだけで精一杯と聞いたことがあります」
「ウチからの援助、役に立ってるのかな?」
僕の問いに護衛は曖昧に微笑んだ。
僕は数人の孤児を捕まえ、聞き込みを行った。どうやら、食事だけは提供されているらしい。
「ここを出た子供たちの行き先って、どうなっているのかな?」
「農奴になるか、スラムに行くか、そんな所じゃないですかね? 冒険者になるヤツラも多いらしいですが……」
僕は自分の幸運に感謝しながら視察を続けた。
「うわっ」
僕は段差につまづいてしまった。変に足首をかばってしまったらしく、激痛が走った。
「大丈夫ですかい?」
護衛が心配そうに覗き込んでくるが、答えられるほどの余裕は無かった。そのままへたり込んでしまう。
「神殿まで戻りましょう」
僕の足首の様子を確認した護衛が言った。足首は赤く腫れ上がり、ズキズキとした痛みが襲ってくる。
「痛ったぁ……」
「歩けますかい?」
僕は黙って首を振った。護衛はため息をつくと、もう一人の護衛に指示を出す。
「おい、坊ちゃんを背負え」
「うーすっ」
もう一人の護衛が頭の悪そうな返事をすると、僕の前にしゃがんだ。僕はベテランの手を借りながら、おぶさった。
「お怪我したの?」
女の子の声がした。僕が顔を向けると、茶色の髪の毛と茶色の瞳をした女の子が、僕の方を心配そうな顔で見ていた。汚れ、痩せているけど、優しそうな眼をした子だ。僕より1~2歳、年下なのかな?
「足首をひねっちゃったみたいなんだ」
「歩けないの?」
護衛の背中に背負われた僕を見上げながら、女の子が尋ねてきた。
「うん。ちょっと痛いかな」
女の子は痛そうな顔をすると、痛めた僕の足首を軽くなでてくれた。
「あたしが、おまじないしてあげるね」
そういうと、微笑みながらこう言った。
「痛いの、イタイの、飛んでいけー」