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あるパーティーの備忘録-10

2.メイドさんを捕獲しろ


 酒瓶の中身を一気にカラにしたら、ガロンの気持ちも少しは落ち着いたらしい。若干すわった目でジュールをねめつけ、こう尋ねた。

「詳しく聞かせてもらおうか。神官が副業と言い切れる、その根拠をな」

「孤児だった(わたくし)は、バルナス様にメイドとして拾っていただきました」

「それは、いつのハナシだ?」

(わたくし)が7歳の時です。それ以来、バルナス様にメイドとしてお仕えしてきました。大地母神・ニスシャ様を信仰する様になったのは、それよりも後です」

「むう……」

 バルナスが割って入った。

「僕から説明しますよ」

「どちらからでも構わん。栄光ある神官が副業と貶められていることに対する、納得のいく説明さえ聞かせて貰えるのならな……」

 ガロンの唸り声にバルナスは苦笑を浮かべると、説明を開始した。


 僕の名前は、バルナス・ジュルラック。年齢は8歳。エフタル王国の中堅処の商会である、ジュルラック家の3男である。僕の祖父が商会を起こし、父親が大きくした僕の実家の隣は、大地母神・ニスシャの神殿だった。

 商家である僕の実家は、当然のように商売と幸運の神・サエリツを信仰していたが、隣にある大地母神・ニスシャの神殿に対して何もしないのは外聞が悪い。そこで、孤児院への資金援助という名目でニスシャ神殿に寄進していたのだ。


 孤児院への資金援助は商会の利益の1厘(1/100)と決まっており、その額を春と秋の2回に分けて援助していた。孤児院に資金を持っていくのは、去年の秋までは次兄の仕事だったが、この春から長兄の手伝いを本格的に始めたので、暇をしていた僕の仕事になったのだ。

 僕は護衛の戦士たちと現金を持った手代と共に、ニスシャ神殿の門を潜った。孤児院への資金援助に来たと告げると、すぐに応接室に通された。この神殿内では良い調度を使っている部屋なのだろうけど、僕の部屋の方が豪華かもしれない。

「孤児院への資金援助、感謝いたします」

 僕たちに対応してくれたのは侍祭(じさい)だった。侍祭というのは、神官の位の一つで、神官<侍祭<司祭となる。ぶっちゃけ、中間管理職である。まあ、子供と甘く見られて平の神官が出てこなかった分だけ、マシと考えよう。


 僕は何の問題もなく資金援助を終えると、神殿の中を視察してから帰ることにした。忙しい手代は商会に戻し、2人の護衛と共に神殿内をうろうろする。

「坊ちゃん、足元に気を付けてくださいよ」

 神殿内の石畳は、所々破損していた。修復まで資金が回らないのだろう。

「サエリツ様のところとは、えらい違いだね」

「サエリツ様の信者は商家が多いですから。ライバルに対して見栄を張るから、寄進額も多くなりますからね」

 我が家の護衛として長いベテランの彼は、それなりに内部事情に詳しくなっていた。

「ニスシャ様のところは、農作物での物納が多いって聞いたことがあるけど?」

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