オフィスにて その2
加福さんは懲りない人だ。
今日も華麗に12階に降りてきた加福さん。
「加福さん、何かご用ですか? 」
「ああ、平峯さん。この前言ってた備品なんだけど」
「はい、ああ、あれなら今朝ようやく入りました」
「ホント? いやあー俺ってついてる男だね~」
「ふふっ、そうですね。じゃあ倉庫に取りに行って、後でお持ちします」
「ありがとう。じゃあいつも優しい平峯さんに、お礼を」
そう言って那波の手を取り引き寄せると、その腰を抱いて彼女のあごに手をかける。
ビキビキッ!
「ひえっ!」
今度は12階に殺気がはしる。
「おい」
見ると、アスラが顔をこわばらせて立っている。
ちょうど用事があって、13階から降りてきたようだ。
「その手を離せ」
「ふふーん、やーだもーん」
と、答えた瞬間。
加福は異次元空間に放り出されていた。
「お前みたいなやつは、そこで反省してろ」
だだっ広いスペースには大勢の男女がいる。
しかも。なにー? この俺を差し置いて、美女たちは他の野郎にばっかすり寄ってるー。
あーこんなとこやだー。元の世界に帰りたーい。
しばらくぼおーっとしていた那波がハッと我に返る。
「あ、あらアスラくん。何かご用? 」
「はい…。総務の許可がいることで」
「ふふ、りょうかい。でも…、変ね。さっき誰か来たような? 気のせいかしら」
「気のせいですよ」
アスラの幻惑で、加福が来たことをすかり忘れた12階の社員たち。
ちょうど時刻は昼休みに入るところ。
美しい女性たちがランチのお誘いにやってきて「加福さんがいなーい」と騒ぎ立てるまで、彼は両手に花の男どもを悔し涙で見る羽目になったのだった。