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創世の日に その1

 番外編を始めます。

年末までには1つ終わらせられるといいなっと思ってます。

 フィリアたちが暮らす世界、クロッセリア。

そこでは年の終わり月である幸月こうづきにとある祝日がある。

創世そうせいの日』というその日は、創造主クーレイルが初めてから世界を造り出した日とされている。

この『創世の日』は多くの国民が仕事を休み、家族や恋人と過ごす人たちが多い。



 そんな聖なる日の当日――、フィリアは珍しいことに随分と気合の入った服装をしていた。


「これ、変じゃないかなぁ…? うー、なんか落ち着かない…」


所在無さげに雑踏に立つ彼女は灰色の、裾にフリルがあしらってあるブラウスにベージュのズボンと合わせた革靴、そして上からフード付きのポンチョという装いだ。

いつも魔法使いのローブか、店番用の専用服しかあまり来ていないフィリアにとってはだいぶ冒険した服装だった。


「コーネリアさんが、絶対これっ!って言うから着てみたけど、わたしには似合わないと思うんだよね…」


自信無く呟いているフィリアは気がついていないが、周りの視線を見ればその認識が間違いだということは一目瞭然だ。

一見、ひとりだけで立っている彼女はフリーに思えるために、試しに誘ってみようかと様子を伺っている男もそれなりの数がいる。ただ、それに気がつかないのがフィリアという少女なのではあるが。


「はぁ、それにしてもちょっと早く着きすぎたかなぁ」


考えてみれば今日の待ち合わせは朝の11の刻だ。しかしいつにもまして緊張しすぎたフィリアは落ち着いて家にいられなかったのでさっさと家を出てしまい、おかげで決めていた時間よりも40巡前も前に待ち合わせの場所に到着してしまっていた。


「つくづく、なんかほんとに子供みたい…」


自身の行動を思い返して、その残念さに彼女は思わずうなだれる。

こういう子供っぽいところをなくしていきたいと思ってい入るのだが、如何せん浮かれすぎるとすぐにそのことが頭から抜けてしまう。


「魅力的な大人の女…。頑張って目指したいなぁ」

「……無理じゃないか?」

「うひゃぁっ!」


誰にも聞こえないと思って呟いた声に、思わぬ反応が帰ってきてフィリアの身体が跳ねた。

自身を驚かせた相手に眉を寄せて振り向くと、そこには学園時代からの友人であるネイトが悪戯が成功した子供のような顔で立っている。


「ネイトっ! もうっ、驚かせないでよ…」

「すまない、驚かせるつもりはなかったんだが妙に真剣に考えていたようだからな」


絶対嘘だ、とフィリアは半眼でネイトを睨むが、当の本人はどこ吹く風でまったくそれを気にしていない。それどころかどこか楽しそうにしている彼にフィリアは頬を軽く膨らませて怒りを表現するが、小柄な彼女がそれをしても全く怖くはなく、まるでどこかの小動物のようになっていた。

それを微笑ましく眺めているネイトの服装は、これまた普段とは違う仕立てのいいスーツである。いつもの騎士服はその苛烈さを確かに表現していてよく似合っているとは思うが、こういう服装もいつもと違う大人びた雰囲気があっていいなぁとフィリアは思っていた。


「とりあえず待たせてすまなかったな。もう少し早めに来れば良かったか」

「え、ううん! そんなことないよ、わたしが早く来すぎただけだら気にしなくていいってば」


すまなそうに眉を寄せて謝るネイトに、ブンブンと頭を振りながらフィリアは伝える。実際、あまりにも早く来すぎたのは彼女の方で、ネイトはこれでも予定の時間よりも15巡程度は早く来ているのだ。


「だが、誘った方が相手よりも遅く来るのはなんとなくだが悪いことをしたような気なる…。よければあとでお茶でも奢らせてくれ」

「あ、うん。それでネイトの気が済むならいいけど…。でもほんとに気にしなくていいからね? わたしが勝手に先走ってただけだし」


ここで提案を受け入れておかなければ後々面倒なことになりそうだったので、フィリアはそれに頷くとことにした。変なところで真面目すぎる人だよね、と彼女はいつも内心で感心してしまう。


「とりあえず、早くいこっ! せっかく早く来たんだしねっ」


フィリアがくるっと横に半回転しながら通りの方に寄り、ネイトに笑いかける。

服装からしていつもとは違う雰囲気の彼女の様子に、ネイトは思わず顔が赤くなるのを感じた。


「どうしたの?」

「……、いや、その、なんだ。その服、よく似合ってるな」


ぶっきらぼうなネイトの褒め言葉にフィリアはもう一度、自分の服を見下ろしてから頬を赤くする。まさか褒めてくれるとは思っていなかったので、彼女にとっては完全な不意打ちだった。


「いくぞ…っ!」


そう照れ隠しに強めの口調で言って、ネイトはフィリアの手に自分の手を重ねて繋ぐと。そのまま少し強引に彼女を連れて歩き始めた。


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