第8節 封筒
(ロック達・・・・・・大丈夫かな)
エステルはレッドグリフォンの二階、ボスの自室のソファに座って四人の帰りを待っていた。屋敷を離れたエステルはダンテに連れられターガスへと移動すると、ダンテの元所属ギルドだというレッドグリフォンのボスに預けられた。「待っていろ」と言われたエステルは、オーディンの力を目の当たりにして自分も行くとは流石に言い出せなかった。足手まといになるのが明らかだからだ。
(私・・・・・・本当に弱いんだな)
時空の塔での事件があって少しは成長したと思っていたエステルだったが、今はそれが自分の思い込みであったと感じていた。あのときだって、ロックやダンテ、それにケーラーがいなければ、どうにもならなかったのだ。仮に自分がいなかったとしても、あの三人なら上手く状況を打開できていたはずだ。
「役に立ちたい・・・・・・」
心の声が、思わず口から漏れた。
「あいつらの、役に立ちたいのか?」
「へ? あ、はい!」
エステルはボスを振り向く。彼はエステルから少し距離を取ってソファに腰掛けていた。
「お嬢ちゃんは、ロックの弟子なんだってな?」
「はい! 私が賢者になれるように、色々課題を出してくれてるんです!」
「そうか。毎日、頑張って課題をしてるんだな」
「はい! 難しいけど、頑張ってます!」
そう言うとエステルは、にこっと微笑んだ。
「じゃあ、それでいいんじゃねぇか?」
「え?」
「ロックとは・・・・・・俺もほんの少しの付き合いだが、あぁ見えてちゃんと色々考えてる。そもそも、お嬢ちゃんはロックに『賢者』になれると思われてるんだろ? それだけでもすごいことだ。お嬢ちゃんのペースで成長できるように、あいつはしっかり導いてくれるはずだ。それを信じて頑張っていればいい」
「でも・・・・・・みんなが頑張って戦ってるのに、何もできないのは辛いです・・・・・・」
「お嬢ちゃん・・・・・・」
何ていい子なんだ--ボスは心の中で涙した。
ドンドンッ--!
「ボス、入りますよ?」
いきなり部屋のドアが開き、アルが姿を見せた。
「おい、返事聞いてから入ってこいって言ってるだろうが。ノックの意味がねぇ」
ボスが呆れ顔で説教する。
「すみません」
「で、なんだ?」
「ジェイが来てます。ボスに会いたいって・・・・・・通しますか?」
「はぁ? 何でまた?」
ボスが眉を寄せる。
「何か渡したい物があるとかで。書類みたいなんですけど」
「書類? まあ、構わん。通せ」
「分かりました」
アルは部屋を後にする。程なくして、顔面に刺青を入れたプラチナブロンドの髪の少年が部屋に現れた。
「お久しぶりです・・・・・・」
「ずいぶん久しぶりだな。元気でやってるか?」
「えぇ、まあ・・・・・・」
ジェイは視線を床に落とす。
「・・・・・・何か、渡したい物があるんだってな?」
「あ、はい・・・・・・これです」
ジェイは腕に抱え込んでいた大判の封筒をボスに手渡す。
「中身は?」
「あの・・・・・・ダンテ達が来たら渡してください」
「え? あ、おい!」
ジェイはそれだけ言うと、挨拶もせずにボスの部屋から出て行った。
「愛想のねぇ奴だなぁ・・・・・・」
「今の子は、ダンテの知り合いなんですか?」
エステルがボスに歩み寄る。
「ん? あぁ、一年前までうちのギルドに所属してた奴で、ダンテとも面識がある。だが何でダンテが来ることを知ってるんだ?」
ボスは訝しげな表情をする。
「その封筒、何が入ってるのかな?」
「ハハハ! 気になるかい? 開けてみるか!」
ボスはそう言うと、封を大胆に手で破り、中の書類を取り出した。
「結構あるな・・・・・・」
「見たいです!」
エステルがボスの手元をのぞき込む。
「7月15日--貸し主ヘルハウンド--200万ベリル・・・・・・って、なにこれ?」
「・・・・・・こいつは」
ボスが目を見開く。
「--?」
「何であいつがこんなもん持ってたかは分かんねぇが・・・・・・すごく大事なもんみたいだ--」
そう言うとボスは、ビリビリになった封筒に、書類を丁寧にしまい直した。




