第4節 オーディン
「何かどっかで見たことあると思ってたんだ・・・・・・」
『・・・・・・その程度か。貴様にとって私は、相当印象に薄いようだな』
オーディンは頬をひきつらせる。
『オーディン、セシル・ロックは終始こんな調子だ。貴方の印象の問題ではなく、セシル・ロックの脳内構造の問題なのだ』
オブシディアンがフォローする。
「スレイプニール・・・・・・お前は俺の味方ということでいいんだよな?」
『・・・・・・貴様等と話していると興が冷める。とっとと三十年前の決着を付けさせてもらうぞ!』
そう言うと、オーディンは手にした槍を頭上に掲げる。
「ちょ、ちょっと待て! オーディン!」
『何だ・・・・・・命乞いなら聞かんぞ』
「『彼』というのは誰なんだ? ジェレミー・コレットと契約解除になった後、そいつがお前を召喚したのか? そんな力のある奴が、まだいたのか!?」
『その質問には答えるつもりはない。死ね--!』
オーディンはロックに向かって槍を振り下ろす。ロックはそれを済んでのところでかわすと、オブシディアンの側へと移動した。
『倒せそうか』
オブシディアンが小声で話しかける。
「魔力が回復しきっていない。正直、今も少し眠い」
『・・・・・・それは無理ということか?』
「馬鹿を言うな! 魔力を温存して戦いたい。乗せてくれ」
『分かった、早くしろ』
ロックはオブシディアンに跨がると、フロートを解除して別の条文に集中し始めた。
オーディンは槍を天に掲げ上空に暗雲を集めると、ロック達めがけて複数の雷を落としてくる。天井を覆っていた鳥かごは木っ端みじんに粉砕された。
ロックも雷を避けるオブシディアンに掴まりながら条文を連発する。
「メガストーム(竜巻の法四十五条)!」
「グレイブランス(大地の法一三二条)!」
「ダークジャッジ(闇の法二七条)!」
庭の木々は暴風で薙払われ、地面は大きく抉られる。
しかし、一つも当てることが出来ない。
『おい! セシル・ロック! やる気があるのか!』
オブシディアンが声を上げた。
「うるさいな!」
『いくら向こうが動いているといっても精度が悪すぎるだろう! ちゃんと狙え!』
「狙いたいのは山々だ! だが、あいつが屋敷を背後にとるから・・・・・・!」
オーディンは常に自分の後ろに屋敷が来るように移動していた。これでは自由に狙うことができない。
「昔はこんなセコい戦い方する奴じゃなかったのにな」
『ドミニクは、無事だろうか・・・・・・』
「今、それを考えても仕方がない。できるだけ狙いやすい位置に動いてくれ」
『分かった』
オブシディアンは斜め上からオーディンを狙えるように移動しようとする。しかし、オーディンの雷は激しさを増し、徐々に移動どころではなくなってくる。
「くそっ! 狙えん! 屋敷、ジャマだな!」
ロックがイライラし出す。
『早まるなよ!? ドミニクがいるのを忘れるな!』
「分かっている!」
そうは言ったものの、このままでは埒があかない。ロックは何とか打開策を打ち出そうとしていた。
「--そうだ!」
『何か名案か!?』
「直接、物理攻撃を与える! スレイプニール、オーディンの懐に入ってくれ!」
『--!? 無茶言うな!』
「お前なら出来る!」
『やればできるみたいに言うな!』
オブシディアンは雷を避けるのだけで精一杯だった。
『ごちゃごちゃと・・・・・・随分、余裕のようだな。だがこれで終わりだ--死ね!』
オーディンは槍を両手で構えると、二人を目掛けて斜めに大きく薙払った。
「うおっ!」『くっ--!』
ロックはとっさに魔法律でバリアを張る。しかし、槍が創り出した疾風はそれよりも強力だった。何とか少し持ちこたえたものの、二人は柵を越えて庭の外に弾き出され、森の中へと墜落していった。




