第1節 じいさん再び
五人が屋敷に続く道に出ると、その扉の前に細長い人影が見えた。
「あっ、あの人!」
「さっきのじいさんだな」
エステルとロックは顔を見合わせる。
「あの人が、極楽鳥を召喚しろと言ったんですね」
「正確にはストールに描かれている魔法陣の精霊を召喚しろ、と言っただけだ」
「同じじゃん・・・・・・」
エステルが口を尖らせる。
「同じではない。あいつがストールに描かれているのが『極楽鳥』だとは分かっていたかどうかは、とても重要な問題だ」
「えっ!?」
「まあいい。あいつと話をすれば分かることだ」
ロックは足を早めた。四人もその後に続く。
「お待ちしておりました」
五人が扉の前に着つと、燕尾服姿のじいさんが恭しく頭を下げた。
「いい庭だな。気持ちよく昼寝をさせてもらった」
「お褒めに与り光栄です」
ロックとじいさんは目を合わせた。
「説明する気はあるのか?」
「あなた方には大変ご迷惑をおかけし、申し訳ない気持ちでいっぱいです」
「・・・・・・」
「ストールはお返しします。持ち主の方には屋敷の中に入って頂きたいのです」
「お前、バカか? 持ってこい。クイーンが中にいないことは分かっている」
「それはできません」
じいさんはきっぱりと言う。
「ストールの持ち主のミルドの方と、『彼』が話をしたいと申しております」
「はあ? 誰だ、『彼』というのは」
ロックがイライラし出す。
「『彼』は・・・・・・ミルドの少年です。このストールの持ち主であるミルドの方と、どうしても二人で話がしたいと申しております」
「そんな要求、飲むと思っているのか? 見かけによらず、そうとう頭が悪いようだな」
「・・・・・・失礼なことを申し上げているのは百も承知でございます。ですが、『彼』はどうしてもストールの持ち主の方に聞きたいことがあると--お話に応じて頂けるのであれば、こちらの非礼の理由についても包み隠さずお答えするつもりです」
「非礼の理由を説明するのは当たり前のことだ。それを交換条件にすることはできない」
「・・・・・・では、お願いでございます。『彼』と話をして頂けませんか?」
じいさんは、ドミニクを真っ直ぐに見た。
「・・・・・・どうして、僕がストールの持ち主だって知ってるの?」
「何となく・・・・・・『彼』に似ていましたので・・・・・・」
「・・・・・・」
ドミニクは黙り込む。
「おい、ドミニク。行く必要なんてねぇぞ」
「・・・・・・ダンテ、ありがとう。でも僕、ちょっと行ってくるよ」
「「はぁ!?」」
ロックとダンテが声を揃える。
「ありがとうございます。では中へお入りください。お連れの方々は、こちらのテラスでお待ちください」
じいさんは深くお辞儀をすると、安心したのか少し顔を綻ばせた。
「ちょっと待て。ドミニク、何を考えてるんだ?」
ロックがドミニクの腕を掴む。
「ロック先生、僕も少し『彼』に興味があるんです・・・・・・」
「『彼』なんか、本当にいるのか分からんぞ」
「いえ・・・・・・います。いますよね?」
ドミニクはじいさんを真っ直ぐに見つめた。
「・・・・・・もちろんでございます」
『ドミニク・・・・・・この男は・・・・・・』
「ディアン、ごめんね。行かせてほしいんだ。大丈夫だから・・・・・・」
『どうなっても知らんぞ・・・・・・』
「ロック先生達のこと、任せたよ」
ドミニクはそう言うと、じいさんの開けた扉から屋敷の中へ入っていった。
『任せたと言われても・・・・・・』
恭しく扉を閉め、四人に向き直ったじいさんは、オブシディアンを見て少し口の端を上げた。
『私の手に負える相手でないこと位、分かっているだろうに・・・・・・』
オブシディアンは誰にも気付かれないように小さく呟いた。




