第13節 合流
「ねぇねぇロック!」
「ん? 何だ?」
「アカデミーの女の子の中で、誰が一番タイプ?」
「はぁ?」
屋敷の庭の果物を一通り食べ終えたロックとエステルは、気持ちの良い木陰を見つけて、どうでもいい話に花を咲かせていた。
「だから、誰とだったら付き合いたいって思う?」
エステルは満面の笑みで質問する。
「・・・・・・しょーもない。大体、俺は六十五だぞ。子どもが恋愛対象になるか」
「え!? じゃあ全員ダメなの!?」
「論外だ。俺はロリコンではない」
「ちぇー面白くないの・・・・・・あ、じゃあアカデミーじゃなくてもいいから、気になる子はいないの?」
「・・・・・・お前はどうしても俺と男女関係の話をしたいのか。そういう話は同世代の友達としてくれ」
「してるよ! そこでロックの話が出てくるから聞いてるんだよ」
「何で俺の話になるんだ」
「ここだけの話だけど・・・・・・ロック、結構モテてるんだよ!」
「・・・・・・」
「名前は教えてあげられないけど、みんな可愛いよ!」
ロックは頭を抱えたくなった。
「何歳以上ならいいの?」
「・・・・・・精神年齢が六十五歳以上ということにしておこうか」
「え!? じゃあ実年齢十五歳でもいいの!?」
「そうだな。だが俺の一番身近にいる実年齢十五歳の女の子は精神年齢五歳だ」
「・・・・・・それって私のこと?」
「さあな」
「ひ、ひどいよ! 私、そんなに子どもっぽくないもん!」
「だからお前だなんて断言してないだろうが」
「え? 私じゃないの?」
「・・・・・・お前としゃべってると、色々と考えさせられるな」
「?」
エステルは頭にたくさんのハテナマークを飛ばす。ロックは心の中で大きな溜息を吐くと、草の上にごろんと仰向けに寝ころんだ。
「--ん。どうやら来たな。ほう、スレイプニールと契約してるのか・・・・・・なるほどな」
「へ?」
エステルはロックの視線の先を見る。
「あ、あれ! ダンテとドミニクさん!?」
エステルはバッと立ち上がり柵のすぐ側まで駆け寄った。ロックもその後を追う。一方、ダンテとドミニクも二人の姿を確認し、柵の向かい側でオブシディアンから降りた。
「二人とも、来てくれたんだね! ありがとう!」
「エステルさん! ロック先生! 大丈夫ですか!?」
ドミニクが慌てた様子で柵に近寄る。
「結構、早かったな。七五点ということにしといてやろう」
ロックはのんびり返す。
「お前・・・・・・俺らを試してたのか」
ダンテがイラッとした表情を見せる。
「ははは! そう怒るな! これからどんなことが起こるか分からんからな! ちょっとくらいテストすることも必要だろう」
「もう早く出て来いよ・・・・・・大体、何なんだよこの鳥かご」
ダンテは柵を両手で掴み、前後に揺すってみる。しかし、びくともしない。
「お前・・・・・・それは無理だろう。意外と天然だったんだな」
ロックが憐れむような目でダンテを見た。
「--!? ちげぇーよ! どんなもんか確認しただけだ!」
「ロック先生、エステルさん、下がってください--ディアン、頼むよ!」
『承知した』
オブシディアンは全身に風を集めると、それを刃にして柵を切り刻む。一瞬にして大人が数人通れるような穴が鳥かごに空いた。
「すっごーい! それにすっごく格好いいね! ドミニクさんの精霊さんですか?」
エステルが穴から飛び出しオブシディアンの前に進み出る。
『フン・・・・・・スレイプニールのオブシディアンだ。なかなか見る目があるな、お嬢さん』
オブシディアンは鼻息を荒くした。
「私はエステルです! 助けてくれてありがとうございます!」
『まあ、大したことはない。ご無事で何より』
「スレイプニール、久し振りだな」
ロックがゆっくりとオブシディアンに歩み寄る。
『・・・・・・ロック、ロックと言っていたから、もしやと思ったが・・・・・・やはり、貴様だったかセシル・ロック』
「元気そうで安心した」
『御陰様で・・・・・・と、言っておこうか』
「え? 二人は知り合いなの?」
エステルはロックとオブシディアンを交互に見る。
「そうだ・・・・・・三十年来のな」
『・・・・・・』
二人は何かに想いを馳せ、寂しげな表情をした。
「おい、思い出話は後でいいだろ。これからどうすんだ? ゴルチエの屋敷に乗り込むのか?」
ダンテが会話を中断させる。
「ゴルチエ? ここは魔道具技師のゴルチエの屋敷か?」
ロックは少し驚いたようにダンテを振り向く。
「そうだよ・・・・・・大体、何でお前等ここに飛ばされたんだ。屋敷の人間には会ってないのか?」
「それがね・・・・・・」
エステルはこれまでの出来事をダンテたちに話した。
「僕の極楽鳥を召喚しろと言われたんですか・・・・・・? 何でまた・・・・・・」
ドミニクが困惑する。
「分からないんです・・・・・・でも、もしかしたらクイーンが屋敷の中にいるかもしれないし、一緒に行ってもらえませんか?」
「それは・・・・・・構わないけど・・・・・・理由によっては召喚できないよ? 大体、そんなに簡単に召喚できるものでもないし」
「ですよね・・・・・・」
エステルも困ったような表情を浮かべる。
「まあ、とにかく、あのじいさんには話を聞かせてもらわなければならん。--ん? どうした、スレイプニール?」
オブシディアンは首を捻って辺りをしきりに気にしている。
『まただ・・・・・・また、気配がする』
「何のだ?」
「オーディンは物質界にはいないよ」
ドミニクが不愉快そうな表情を浮かべる。
『しかし・・・・・・これは間違いなく・・・・・・』
「オーディンの気配を感じるのか? さっきもあったのか?」
『あぁ・・・・・・さっきは気のせいかと思ったのだが、今度は間違いない。屋敷の方からだ・・・・・・』
オブシディアンは気味の悪さを振り払うように全身を身震いさせる。
「何はともあれ、屋敷には行かねばならんようだな」
ロックはそう言うと、楽園の中心にあるゴルチエの屋敷を無表情に仰ぎ見た。




