第4節 女子会
「へぇ~~! ほんとにかわいいね!」
「でしょ~!」
寮に帰ったエステルは、夕食を済ませると、同室のクレアと一緒に借りてきたばかりの新刊を読んでいた。というより鑑賞していた。
「あ、でも私、この子の方が好きかも!」
「え~、絶対こっちだって~!」
どの精霊が一番可愛いか--エステルとクレアは答えなんてあるはずのない議題について、真剣に議論をしていた。
「決めた! 私、この子召喚する!」
「え~、この子にしてよ~」
「ダメダメ! この子なの!」
エステルはようやく『一番可愛い』子を決定した。
「『プチラピス』ちゃん! この子にする!」
エステルが一番可愛いと思ったのは、鳩ほどのサイズのフワフワとした青い鳥だった。つぶらな黒い瞳がとても愛らしい。本によると、主に伝書に用いられる精霊らしい。伝書鳩でいいのではと言う指摘もあるが、この精霊を利用する魔法律家は多い。可愛いからではなく、手軽に召喚でき、知能も高いので臨機応変な行動を取ってくれるからだ。
「どうしよう~、名前何にしよう」
「召喚してから考えなよ」
「それじゃあ、遅いんだよ。契約時に名前つけないと、契約自体、無効になっちゃうんだよ」
「へぇ、そうなんだ」
『召喚法』選択でないクレアが感心する。
「『ラピスちゃん』ってどうかな?」
「結構、被ると思うよ・・・・・・」
「だよね・・・・・・」
エステルは考え込む。
「あ、じゃあ、『ラッピー』ってどうかな!?」
「それは・・・・・・被らないような気がするけど・・・・・・エステルはいいの?」
「え!? いいよ、全然! 変だった?」
「う~ん・・・・・・でもエステルがいいんならいいと思うよ」
「何よそれ~! 変じゃないもん! 絶対『ラッピー』にするもん!」
「だから別に反対してないじゃん」
クレアに『ラッピー』を気に入ってもらえず、エステルは少し拗ねた。ベッドに潜り込み、こっそり他の名前も考えてみる。しかし思い付かない。
「ねぇ、ところでエステル。今ね、ロック先生が調査官探してるっていう噂あるんだけど、何か聞いてる?」
「え!? そうなの!?」
エステルはベッドから跳び起きた。
「その反応じゃ、知らなかったみたいだね・・・・・・」
「知らないよ~! 何でロック、私に教えてくれてないの~! ヒドいよ~! 今日だってさぁ、ダンテと話があるからって、研究室追い出されたんだよ~! 今まで、そんなことなかったのに!」
エステルはくすぶっていた不満をぶちまけた。
「・・・・・・」
「ん? クレア?」
クレアが渋い表情をする。
「もしかして・・・・・・」
「え、どうしたの? クレア?」
「あ、あのね、エステル! 冷静に聞いてほしいの! 私も友達に聞いただけで単なる噂なんだけどね!」
「え、また噂? てか、クレアが興奮しすぎでしょ!」
クレアはベッドの縁を掴み、エステルの方へ身を乗り出す。指に力が入りすぎて爪の先が白くなっている。
「実はね・・・・・・あの二人、付き合ってるんじゃないかって、言われてるの!」
「え~~~~~~~~~っ!?」
エステルの絶叫は寮中に響き渡った。
「分かんないよ! 分かんないんだけどね!? あの二人って、仲いいじゃない? だから、みんなもしかしてって言ってるの!」
「絶対ないと思うんだけど! みんなって誰よ!」
「アンジェラとミリーとリーザだよ!」
「三人じゃん!」
「でも学園中にまことしやかに流れてる感じなんだって! ダンテさんがユーリ君から乗り換えたって!」
「みんなバカじゃないの!? ないから! 絶対に! 言っといてよ、その三人に!」
「・・・・・・う~ん、エステルがそこまで言うなら違うのかなぁ」
クレアが若干つまらなそうな顔をする。
「違うよ! クレア、目を覚ましてよー!」
エステルは、二人の交際を力一杯否定した。
しかしその晩、エステルはショックでなかなか寝付けなかった--




