第11節 ラッピーと少年
(う~ん・・・・・・どうやって探したらいいっぴ・・・・・・)
ラッピーは困っていた。ドミニクをカイラニから連れてこいと言われても、カイラニの場所も知らなければ、そもそも召喚された場所がどこなのかも分からないのだ。
(取りあえず、上から見てみるっぴ。正に鳥瞰っぴ)
ラッピーは思い切り高度を上げた。天気が良いので地上の様子はとてもよく見えた。
(大きな町があるっぴ。カイラニかもしれないっぴ)
ここを探すのが賢明だろう。もしカイラニではなかったとしても、近くの町であれば道標のようなものが立っているかもしれない。しかし--
(ちょっと怖いっぴ・・・・・・)
誘拐事件から日が経っていない今、大きな町を捜索するのはラッピーにとってかなり抵抗があった。仕方なく町の北門近くの空き地へと高度を下げていく。
『う~ん・・・・・・町の標札がないっぴ。何ともいい加減な町っぴ』
門の前まで来たラッピーは、ぴぃぴぃ文句を言いながら門の向こう側の町の様子を伺う。ガラの悪そうな人間がうようよしていた。
『・・・・・・カイラニじゃないなら、早々に退散したいっぴ』
ラッピーがそう呟いたときだった。
「そこのプチラピスさん、何かお困りですか?」
『--!?』
驚いたラッピーは声のした方を振り向く。そこにいたのはプラチナブロンドの髪と深いグリーンの瞳をした十五歳位の少年だった。ただの少年ではない--その少年は、
(ミルドっぴ・・・・・・)
顔の全面に彫られた異様な刺青は、彼がミルドであることを示していた。
「何か、お困りかと思ったんだけど・・・・・・僕で良ければ力になるよ」
少年はニコッと微笑んだ。その笑顔は、刺青さえなければ誰もが虜になりそうな魅惑的なものだった。
『え、えっと・・・・・・』
ラッピーは口ごもる。ラッピーはミルドに対して抵抗があるわけではない。ドミニクのことも好きだし、そもそも前の契約者もミルドだった。だが、初対面の人間を完全に信用することはできない。それはあの誘拐事件があって、改めて感じたことだ。
「警戒させちゃったかな・・・・・・迷惑ならいいんだ。ただ、ここはカイラニじゃないよ。ターガスっていう町なんだ。カイラニはあっちの山を登ったところにあるよ」
ラッピーは少年の指さす先を見る。しかし、ここからではカイラニの村は見えない。
『カイラニは、あっちっぴか?』
「うん、君の翼ならすぐ着くと思うよ」
少年はニコッと笑う。その表情は全く不快なものを感じさせなかった。むしろ心が洗われるような美しい笑顔だった。ラッピーはこの人のことは信用してもいいかもしれないと思った。
『ありがとうっぴ。あなたに会えてよかったっぴ。早速行ってみるっぴ』
ラッピーは丁重に頭を下げると、翼を翻した。
「あ、ちょっと待って!」
少年がラッピーを引き留める。
『?』
「君、ユリアお嬢さんのこと知ってる?」
『--? 誰っぴか?』
ラッピーはつぶらな瞳をパチクリさせる。
「そう・・・・・・知らないならいいんだ。急いでるみたいなのに引き留めてごめんね。後、今、君みたいな『青い鳥』の精霊が狙われてるんだ。捕まらないように、十分気を付けて」
『・・・・・・ありがとうっぴ』
もう既に捕まりました--とは、恥ずかしくて言えない。
「じゃあ、またね。本当に気を付けて」
『ありがとうっぴ。あ、ラッピーの名前は、ラッピーっぴ。あなたのお名前は?』
ラッピーは親切にしてもらった彼の名前を覚えておきたいと思った。
「僕・・・・・・? 僕は・・・・・・ジェイ。じゃあね、ラッピー」
彼はそう言うと、テレポートでラッピーの前から姿を消した。




