第4節 責任重大
二人はまず気になっていた門まで歩いていった。しかし案の定、固く閉ざされている。
「はぁ・・・・・・やっぱりダメかぁ」
エステルは小さく肩を落とした。
「ふん・・・・・・頑丈にできてるな。だが問題ない。破壊できる」
そう言うとロックは、ナチュラルに条文を唱え始めた。
「え!? ちょっと待ってよ!」
「は?」
「クイーンが人質になってるんだよ! 勝手に出たことがバレたら、ヒドいことされちゃうかも!」
エステルの必死の訴えにロックはポカンとした表情をしている。彼は一瞬、口を開きかけたが、考え直したかのように口を噤んだ。
「ふん・・・・・・それではエステル、お前はこの状況をどうやって打破する?」
ロックが問いかける。その口振りは時空法の授業のときのようだった。
「え、どうやってって・・・・・・とにかく、クイーンが人質に捕られてる以上、私たちはここを動かない方がいいと思う・・・・・・」
エステルは思考を続けた。
「あのおじいさんは『極楽鳥』を召喚するのが、クイーンを返す条件だって言ってた。だから、取りあえず、ドミニクさんを呼んでこなくちゃいけないけど・・・・・・」
「どうやって呼ぶ?」
「そこなんだよね・・・・・・」
エステルは眉間に皺を寄せた。彼女にしては珍しい表情だった。
「あ、そうだ!」
「ん?」
「ラッピーを召喚するよ! ラッピーに、ドミニクさんを呼んできてもらう!」
エステルは我ながら名案だと思った。ロックも嬉しそうにニコニコ笑っている。
「それはいいかもしれないな。実際、ここがどこなのか俺にもさっぱり分からんが、さっきいた場所からそう遠くは離れていないだろう。あれだけ広い空間を移転するのはかなりの魔力を消費する。距離的には短かったと考えていいだろう」
「うん! あ、でも・・・・・・」
目の前に立ちはだかる鉄柵を見て、エステルは顔を曇らせた。
「ラッピー・・・・・・太いから通れないかも」
鉄柵の間隔は狭く、五センチほどしか開いていなかった。これではラッピーはおろか、小鳥さえ出られそうにない。
「ラッピーの名誉のために言っておくが、あいつはプチラピスとしては標準サイズだ」
デブ扱いされたラッピーをロックが擁護する。
「あ! そうだ!」
エステルは突然顔を輝かせると、首に巻いていたスカーフを外し鉄柵に近付いた。屈み込んで隙間からスカーフを外へ出す。
「ここで召喚すれば、ラッピーは外に出れるよ!」
「なるほど、考えたな」
エステルは足元に落ちていた木の枝を隙間に突っ込み、スカーフを丁寧に広げていく。表面にはラッピーの魔法陣が描かれている。
「昨日、頑張って描いてよかったよ~。よ~し、じゃあ行くよ! プチラピス--『ラッピー』!」
エステルの呼びかけに反応し、魔法陣から青い鳥の精霊が姿を現した。
『ぴ?』
召喚されたラッピーは不審そうに目をパチクリしている。自分とエステルの間にある鉄柵が気に入らないようだった。
「ごめんね、ラッピー。ラッピーを外に出したかったから、こんな形で召喚しちゃったんだけど・・・・・・ビックリしたよね?」
『ぴぴっ』
ラッピーは「気にしないでいいっぴ」と言った。
「実はね、私たち、カイラニっていう村の近くの洞窟から、ここに飛ばされて来ちゃったみたいなの。ここがどこなのかは分からないんだけど、カイラニからそんなに離れてないと思う。今、事情があってここから出られないんだけど、とにかくドミニクさんの力が必要なの。ドミニクさん、分かるよね? きっとカイラニの近くにいると思うから、ラッピーに呼んできてほしいの」
エステルはかいつまんで事情を説明した。
『ぴぴぴ?』
「え、何かな?」
「ここは危険な場所ではないのか、と聞いている。お前を心配しているようだ」
ロックがラッピー語を通訳する。
「ラッピー!」
エステルは感動してラッピーに手を伸ばす。鉄柵の隙間から、辛うじてラッピーの頭を撫でることができた。
「ありがとうね、ラッピー・・・・・・実は私たち監禁状態で、クイーンが人質に捕られてるんだけど大丈夫! ラッピーがドミニクさんを呼んできてくれたら解決するから!」
『ぴっ!?』
ラッピーはますます心配になった。しかも責任重大だ。聞かなければよかったと少し後悔した。
「じゃあ、よろしくね! 行ってらっしゃい、ラッピー!」
エステルは笑顔で手を振る。その横ではロックもニコニコしながら、自分とエステルの様子を見ていた。
ラッピーは、この人たちは本当に監禁されているのだろうか--と思った。




