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第3節 二度寝

(ど、どうしよう・・・・・・)

 エステルは頭が真っ白になった。

(餓死って・・・・・・私たち、皆ここで餓死しちゃうの!? それって、ここから出られないってこと!?)

 エステルは改めて周囲を見渡した。エステルの心境とは裏腹に、穏やかで、平和を絵に描いたような『楽園』が広がっている。しかし、『楽園』はどこまでも続いているわけではなさそうだった。

(柵がある・・・・・・門も、一応あるんだ)

 屋敷から一直線に延びる道の先に、大きな門が一つあるのが見えた。門からは高い鉄柵が続き『楽園』をぐるりと取り囲んでいる。しかも鉄柵は『楽園』の周囲だけでなく、空に向かってドーム状に延びていた。まるで鳥籠の中に閉じ込められているみたいだとエステルは思った。これではたとえ『フロート』を使ったとしても脱出できそうにない。

(出るとしたら、あの門からってことになるんだろうなぁ。でも、絶対閉まってるよね・・・・・・)

 一応、確認しておきたいと思ったが、すぐ側で寝息を立てているロックを見てエステルは躊躇した。今、誰か悪者--さっきのじいさんも含む--が来て、ロックを殺してしまったら『賢者の力』がその人物に承継されてしまう。エステルは、急に世界の命運が自分の肩に乗せられたような気がした。

「ちょっと! ロック、ほんとに起きてよ! 私には荷が重すぎるよ!」

 もう一度ロックを揺さぶる。

「もう! ロックってば!」

 更に強く揺さぶってみる。しかし、ロックの目は閉じられたままだ。

「ロック! お願いだから起きてよ! ねぇ!」


「ぐう」


「・・・・・・」

 ロックの口から、わざとらしい寝息が聞こえた。

「起きてんじゃん!」


  バシッ--!


「イタッ!」

 エステルに胸の辺りを平手で叩かれて、ロックは思わず上半身を起こす。

「痛いなぁ・・・・・・何も叩くことないだろう」

 胸の辺りを大げさにさすりながら、彼はエステルを恨めしそうに見た。

「いつから起きてたのよ!?」

「あんなデカい魔力で移転させられたら、イヤでも起きるぞ」

「--!? じゃあ、最初から起きてたの?」

 エステルが目を丸くする。

「最初とは?」

「私が起こしたときだよ!」

「あぁ・・・・・・あの時は二度寝してた最中だったんだ。俺が魔力を感じて起きたとき、お前はまだ寝てたからな。悔しかったから、もう一回寝てやったんだ」

 ロックはハハッと笑った。

「意味分かんないよ! てか、起こしたとき気付いてたんでしょ!? 起きてよ!」

「うるさいなぁ・・・・・・今、起きたんだからいいじゃないか」

「よくないよ! 私・・・・・・一人ぼっちで、すっごく怖かったんだからね・・・・・・」

 エステルはポロポロと涙をこぼし始めた。

「--!? な、泣くなよ・・・・・・悪かった、悪かったって」

 ロックはようやく反省しだした。

「あのおじいさんと話してるときだって、すっごく不安だったのに・・・・・・ロック・・・・・・寝たふりしてたなんて・・・・・・」

「いや・・・・・・アイツには悪意が感じられなかったから、大丈夫だと思ったんだ・・・・・・」

「魔法律で攻撃されたのに・・・・・・?」

 エステルはロックをじろっと睨んだ。

「あ、あれは、お前の行動が意外だったから・・・・・・アイツも最初は危害を加える気はなかったと思うぞ?」

「私が悪いって言うの!?」

「ちっ違う! もう悪かったって、許してくれよ・・・・・・」

 ロックは初めてエステルに本気で怒られ、かなり参ってしまった。

「・・・・・・もういいよ。取りあえず、ここから出る方法考えなきゃ」

「あ、あぁ・・・・・・」

 彼はエステルに軽く見限られた様な気がした。

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