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第13節 装置

「遅かったか・・・・・・」

 ただの空き地と化した洞窟の内部を目の前にして、ドミニクは大きく溜め息を吐いた。

「おい、ドミニク! 何なんだよ一体!」

 一緒に走ってきたダンテがドミニクの隣でイラついた声を出す。

「ここにさっきまで『庭』があったんだ。ロック先生とエステルさん、それにクイーンもこの中にいた」

「え!? 誰もいねぇじゃねぇか!」

「だから・・・・・・遅かったんだよ」

「兄さん! ドミニクさん!」

 ロメオとイルマ、そしてロベルトも二人から少し遅れて洞窟に到着した。

「--!? 何もない!?」

 ロメオが空き地を目にして驚愕の表情を浮かべている。

「ここに、庭があったっていうのか?」

 ロベルトさんは眉を顰めている。

「いつも通りだけど・・・・・・本当にここだったの、ロメオ?」

 イルマはロメオに顔を向ける。

「ここだよ! さっきまで確かに『庭』があったんだ! ねぇ、ドミニクさん!?」

「えぇ、確かにありました。そして、つい先程『移転』したのでしょう」

 ドミニクは冷静に返事をすると、洞窟の入り口に引き返し、周辺を調べ始めた。

「あぁ・・・・・・ありましたね」

 ドミニクは地面にかがみ込み、小さな丸い水晶のようなものを拾うと、それを憮然とした表情のままのダンテに手渡した。

「--これ!?」

「えぇ、条件成就認識装置です」

「まさか--あいつらが中にいる間に何らかの停止条件が成就して・・・・・・!」

「いえ、おそらく解除条件でしょう・・・・・・まず、僕たちが、既に何らかの停止条件が成就し魔法律の効果が発生していた空間に足を踏み入れた。その後、僕とロメオさんがここを去った後に、次は何らかの解除条件が成就して、魔法律の効果が失われた」

「・・・・・・あの、できれば、俺たちにも分かるように説明してくれれば嬉しいんですけど・・・・・・」

 ロメオとイルマ、それにロベルトは、全く話に付いていけず、困惑の表情を浮かべていた。

「あ! すみません! えっと・・・・・・簡単に言うと、何かのきっかけで『庭』が現れて、更に何かのきっかけで『庭』が消えるという魔法律が仕掛けられていた可能性があるということです」

 ドミニクが分かりやすく解説する。

「きっかけって・・・・・・」

 イルマが尋ねる。

「分かりません。しかしおそらくは・・・・・・」

「精霊だろうな」

「でしょうね」

 ダンテとドミニクは肯きあった。

「僕たちが着いたとき、ここにはすでにクイーンがいました。おそらく、停止条件・・・・・・『庭』を出現させた条件はそれです。そして解除条件・・・・・・『庭』を消した条件も、クイーンのとった何らかの行動でしょう。はっきりとは断定できませんが」

「試して見りゃいいんじゃねぇか? ドミニク、何か召喚できるだろ?」

「そうだね・・・・・・では」

 そう言うとドミニクは腰に捲いていた方のストールを解いてバッと空中に広げた。


「スレイプニール--『オブシディアン』!」


「きゃっ!?」「うおっ!?」「うわっ!?」

 瞬間、鋭い光が辺りを包み込む。ドミニクの召喚に初めて立ち会った三人は、思わず顔を手で覆った。

 顔を上げたとき、三人の目の前には巨大な馬の精霊が悠然と立っていた。艶のある紫がかった黒い毛並みが、その精霊の高貴さを際だたせている。

「何か御用か、ドミニク」

 馬は気品のある、穏やかな口調で契約主のドミニクに話しかけた。しかしロメオたちは気絶しそうな程驚いていた。

「な、何・・・・・・こいつもクイーンと同じ精霊なの?」

 ロメオが厳つい外見のオブシディアンにビビって後ずさる。イルマに至っては目を丸くしたまま直立不動となっている。唯一、ロベルトだけが異なる反応を見せた。

「いやぁ! 驚いた! いい馬だなぁ、こいつぁ!」

「・・・・・・」

 遠慮なくベタベタ触ってくるオッサンに、オブシディアンは鬱陶しそうな顔をした。

「あ、ディアン久しぶり。えっと、用って言うのはね--」

 ドミニクは今までの経緯をオブシディアンに軽く説明した。


「成る程、解った。つまり雑用か」

 オブシディアンがドミニクをギロリと睨む。

「雑用じゃないよ。ロック先生たちの行方を掴むために喚んだんだ。そんな顔しないでよ」

「フン、まぁ対価さえ貰えれば文句を言う立場にはない。早く済ませよう」

「ありがとう、ディアン」

 ドミニクはオブシディアンに礼を言うと、条件成就認識装置をダンテから受け取り、元の場所にはめ直した。

「じゃあ、僕とディアンで行ってくるよ。戻るときは声かけるから装置外してね」

「了解」

 ダンテは返事をすると、ドミニクとオブシディアンの背中を見送った。そして、なぜもっと小さい精霊にしなかったんだと心の中で突っ込んだ。

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