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第12節 調査

「よし! じゃあ、エステルにクイーン! 何か変わった物がないか調査してくれ!」

 ロックが二人に声をかける。

「分かったよ!」

「仕方ありませんねぇ。対価はちゃんと頂きますよ?」

 二人もロックに返事をすると、それぞれ当たりを付けて庭の調査を開始した。


「う~ん・・・・・・変わった物って言っても、ここのお庭自体が変わってるんだけどなぁ」

 しばらく調査してエステルがぽつりと呟いた。

 荒野の洞窟の中に突如として現れた楽園の庭--これだけで不審さはMAXだった。

「それはワタクシも同感ですね。まあ、でも魔法律を使った痕跡があるかどうかだけでも調べたらいいんじゃないですか」

 クイーンがエステルの側の木の枝に降り立つ。

「えっ!? 魔法律って! ここ、魔法律で作った場所なの!?」

「その可能性は高いでしょう」

 クイーンは冷静に解説を続ける。

「一月でこの庭を作り上げるのは、まあ・・・・・・不可能ではないでしょうが、かなり大変でしょうからね。魔法律で別の空間をごっそり移転させたと考えるのが、一番自然ではないですかね」

「でも・・・・・・それだってすっごく大変じゃない?」

 これだけの広い空間を移転させるのはかなりの魔力を必要とするだろう。それに

距離だってある程度ありそうだ。この地域は花が生息しやすい環境ではない。

「ロックならできますよ」

「いや、そりゃロックならできるだろうけど、ロックは特別じゃん・・・・・・」

「まぁ・・・・・・そうですか」

 クイーンは少し小首を傾げると、バサッと音を立ててエステルの元を離れた。

「魔法律の痕跡かぁ・・・・・・」

 痕跡って、どんなの何だろう・・・・・・エステルはいまいちピンときていなかった。魔法律を使った直後には、魔力の流れが変わったり、時空法なら歪みが生じたり、そういうのは比較的簡単に確認できる。しかし、そんなものはしばらくすると分からなくなってしまうのだ。クイーンは二時間前からここにいると言っていた。だとすれば、痕跡なんて今更確認できるはずがない。

「ねぇ、ロック~」

 エステルは調査の仕方を教えてもらおうとロックを探す。

 彼は簡単に見つかった。さっきエステルたちに指示を出した場所にそのままいたのだ。しかし、その状態はそのままではなかった。

「・・・・・・」

 エステルは木の根っこを枕にしてすやすやと眠るロックを見て心底脱力した。

「もう~~~、人に調査させといて自分だけ寝ないでよ・・・・・・」

 エステルの文句に、ロックはピクリとも反応しない。まるで死んでいるようだ。エステルは、先月、魔力を使い果たして丸一日昏睡状態に陥っていたロックを思い出した。

「四人もここまでテレポートしたんだもんね。そりゃ眠いか」

 エステルはロックの側に腰を下ろし、その顔をじっと見つめる。味のある顔だ、とエステルは思った。たとえ見た目は十五歳の少年でも、彼には六十五年生きたという実績がある。その実績が、顔に表れているような気がした。

「ふあぁ・・・・・・なんか私も眠くなってきちゃったよ・・・・・・」

 エステルは両手を口にあて大きな欠伸をした。そのままロックと一緒に横になる。

「風邪引くといけないからね」

 エステルは朝からずっと自分の物のように被っていたグリーンのストールをロックと自分の上にかけた。魔法陣は汚してはいけないと思ったので、外側に向けて地面に付かないようにした。

「うん、大きいから二人とも納まるね。ドミニクさんありがとう・・・・・・」

 エステルは、そのまま十秒も立たないうちに寝入ってしまった。


「・・・・・・」

 クイーンは呆れていた。

「あなたたち・・・・・・ワタクシ一人に調査を押し付けて寝るとは、いい度胸してますね」

 クイーンの嫌みにロックは全く反応しない。エステルも小さな身じろぎを一つしただけだ。

「はぁ・・・・・・もうやってられませんよ。ドミニクさんたちを迎えに行きましょうかね」

 そう言うとクイーンは青い翼を翻し、洞窟の入り口へと向かった。

 通路に出ようと少し高度を下げ『庭』と通路の境目まで移動する。その時だった--


「--!?」


 ピリッ--という鋭い音と共に、白い閃光が『庭』全体を包み込む。クイーンは魔法律の発動を直感した。しかしその一瞬でできることはない。


 光が消えた後、洞窟の内部にはただの『つまんない』空き地が広がっているだけだった--

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