第11節 ロメオ
「別に俺一人でも大丈夫だったんですよ?」
「え・・・・・・?」
山道を登りながら、ロメオがドミニクに話しかけた。
「今じゃ滅多にモンスターなんて出ないですし、それに俺だって一応、戦えますから」
ロメオは腰に差した長剣を左手でパンッと叩く。
「ロメオさんは色んなことに気が付くタイプなんですね」
「へ?」
「あ、いえ・・・・・・冷静に周りを見ておられるような気がして」
ドミニクは少し困ったような笑顔を見せた。
「あの兄さんと姉さんの弟やってたら、冷静にもなりますよ。一人くらい、落ち着いてないとね」
ロメオもドミニクと同じような表情で笑った。
しばらく二人は無言で歩いていた。しかし村の入り口が見えた辺りで、突然ドミニクが言葉を発した。
「・・・・・・実は、僕もロメオさんと同じ年で、両親を亡くしてるんです」
「え?」
ロメオはドミニクの方を向きポカンとしている。
「あ、いきなりすみません・・・・・・似てるなって思ったんです。でも、僕は今のあなた位の年齢のときは、まだ気持ちの整理がついていませんでしたから・・・・・・すごいなって、思ってたんです」
「・・・・・・モンスターですか?」
「いえ、人間に殺されました」
「そ、そうなんですか・・・・・・」
二人はまた無言で歩き出した。村の入り口が近付いてくる。
「だからじゃないですか?」
「え?」
今度はロメオが言葉を発する。
「人間に殺されたんなら、仕方ないって思えるわけないですから。うちの両親の死は、仕方なかったんです・・・・・・事故だったから。ちゃんと馬車に乗って、モンスターの危険に備えて、それでもたまたま運悪く出会ったモンスターに馬車が襲われて崖から落とされてしまった・・・・・・誰が悪かったって訳じゃない・・・・・・」
「そうなんですか・・・・・・」
ドミニクは視線を落とす。
「気持ちの整理が付けられないのは・・・・・・」
ロメオが言葉を続ける。
「結局、仕方なかったって、思えないからなんですよね・・・・・・」
そう言うとロメオは、首からぶら下げていたシルバーのネックレスを右手で強く握りしめた。
村の入り口に到着すると、ちょうど墓地から戻る途中だったダンテとイルマに出くわした。
「お、外行ってたのか? ・・・・・・アイツらは?」
ドミニクとロメオという珍しい組み合わせに、ダンテは少し驚いた。
「不審な馬車が通る場所まで案内してきたんだ。ロック先生たちはまだ調査してる。それより、そっちの話は付いたの?」
「まあな」
「仕方ないから許してあげることにしたの」
イルマはもういつもの可愛らしい表情に戻っていた。
「でも、何でドミニクまで戻ってきてんだよ?」
ダンテは不思議そうに眉をしかめている。
「一旦戻ってダンテを連れてくるよう言われたんだよ」
ドミニクが苦笑いで答える。ロメオも少し呆れたように笑う。ダンテはなぜ二人がそんな顔をするのか全く分からなかった。
「お? 兄弟全員そろってるな! さてはイルマの機嫌が直ったな!」
一人のおっさんが四人を見つけて笑顔で声をかけた。首からぶら下げたタオルで額の汗を拭きながらこちらへ近付いてくる。
「ロベルトさん! それどころじゃないんですよ、あの洞窟が勝手に誰かにいじられてるんです!」
ロメオは興奮気味に声を上げると、ロベルトに小走りで近付いた。三人もその後に続く。
「あの洞窟って・・・・・・」
ロベルトの顔から笑顔が消えた。
「あの・・・・・・結界の祠の奥の・・・・・・」
「どんな風にいじられてるんだ?」
「金持ちの『庭』みたいになってました。緑で溢れてて、花や木がたくさん植えてあって、果物もなってました」
「ハァ!? 昨日俺が行ったときはそんなんじゃなかったぞ?」
「「「「えっ!?」」」」
四人の声が重なる。
「昨日、行かれたんですか? 何も変わった様子はありませんでしたか?」
ドミニクが興奮気味に詰め寄る。
「なかったさ。ただの空き地だ!」
ドミニクの表情が変わった。
「戻ります!」
「あっ! ちょっと待てよ!」
駆け出したドミニクを残された四人も全速力で追いかけた。




