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第6節 嵐

「ふぅ・・・・・・よかった。全然、怒ってないじゃないか」

 居間のテーブルに着いたロックがほっと溜め息を吐く。

「姉さんのことですか?」

 ロメオがロックの方へ顔を向ける。

「あぁ、さっき村の入り口で会った男性に脅されたからちょっと心配してたんだ。迎えにも来てなかったし・・・・・・そう言えば、どうして二人はダンテを迎えに来なかったんだ?」

「どうしてって・・・・・・恥ずかしいじゃないですか。あんな大勢で出迎えて・・・・・・それに、姉さんは昼食の準備で忙しいし」

「まぁ、そうか・・・・・・」

 ロックは一応、納得したそぶりを見せたものの心の中では何かが引っかかっていた。

「皆さん、お待たせしました! どうぞたくさん召し上がってくださいね!」

 ローストビーフを大皿にたっぷり乗せて、イルマがキッチンから姿を現した。その後に続き、ダンテがマッシュポテトと温野菜が山盛りになった皿をそれぞれ片手で運んでくる。

「へい、どうぞ」

 ダンテがふてぶてしい態度でテーブルに皿を置く。

「わぁ、すご~い! おいしそう! これ全部、イルマさんが作ったんですか?」

「ふふふ、そうよ」

「大したもんだな。俺も料理には自信があるが、ローストビーフは流石に難しいからなぁ」

「ほんとにおいしそうですね。遠慮なく頂きます」

 イルマ渾身の手料理は見た目通りとてもおいしかった。ローストビーフも野菜も、かなりの量があったにもかかわらず、六人全員でぺろりと平らげてしまった。ロックに至ってはローストビーフの作り方を熱心に聞いていたくらいだ。


 食事も終わり、テーブルの上が片づけられると、食後独特のまったりとした空気が流れ始めた。ダンテはすっかりリラックスしきって、いつもの調子でイルマに話しかけた。

「全くよ~、ロベルトのオッサンがお前が怒ってるなんて言うから、ビクビクしながら玄関開けたのによ~、すげぇいつも通りでビックリしたぜ」

 ダンテはケタケタ笑い始めた。

「・・・・・・ロベルトさんが、私が怒ってるって?」

 イルマはキッチンに立ち、ダンテに背を向けたまま棒読みで言葉を返した。

「じゃ、俺仕事に戻るから」

 ロメオがいそいそと隣の部屋へと入っていった。

 残されたイルマ以外の四人は、その場の空気が徐々に張り詰めていくのを感じた。だが、もう逃げられない。

「あ、あぁ・・・・・・だけど、怒ってないみたいでよかったって・・・・・・」

 ダンテは思ってもいないことを仕方なく口にした。誰の目にも最早イルマが怒っていないようには見えなかった。

「ふ~ん・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


「怒ってないわけないでしょっ!!」


「きゃっ!?」

 イルマの大声にエステルが飛び上がる。ロックとドミニクも不覚にもビクッとしてしまった。

「だいたい何!? 調査官って! 何の調査するのよ!? それ、お兄ちゃんがやんないといけないの!?」

 イルマは布巾を握りしめたままダンテに詰め寄る。

「いや、やらないといけないっていうか・・・・・・」

「四、五年で帰ってくるって言ったじゃない!? いっつもそう! まだ帰らない、まだ帰らないって! ターガスに行ったときだって、一ヶ月って言って三年帰ってこなかったじゃない! 今度は一生!? ふざけないでよ!」

「あのときと今とは状況が全然違・・・・・・」

「どこが違うのよ!? 一緒じゃない! 待ってる方からしたら一緒なんだから!」

「ちょ、ちょっと冷静になれよ! 今日はその話をするつもりで来たんだ!」

「無理よ! 絶対にイヤ! 危ない仕事なんでしょ!? ロベルトさんが言ってたわ! せっかく村がモンスターに襲われなくなったのに、どうしてわざわざ危ないことするのよ!? お兄ちゃんまでルカみたいになっちゃたら、私耐えられないわ・・・・・・」

 イルマの最後のセリフは消え入るようだった。目には涙が浮かんでいる。

「・・・・・・俺は死なねぇよ」

「そんなの分かんないじゃない!」


  バンッ--


 イルマは布巾を握りしめエプロン姿のまま家を飛び出していった--

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