第4節 カイラニ村
「おぉ! 賢者様が来なさったぞ!」
「ダンテだ! ダンテ、おかえり!」
「ダンテ! お前、相変わらずデカいなぁ! 元気だったか!?」
四人はカイラニ村の入り口で、村人総出の出迎えを受けていた。総出と言っても、辺境の村の住民は当然少なく五十名にも満たない人数だったが、全員がダンテを知っているだけに、彼を見つけたときの村人たちのボルテージはすごかった。
「おぉ、すごいな! ダンテ、お前、人気者だな!」
「大歓迎だね! よかったね、ダンテ!」
ロックとエステルは素直に感動を口にした。対してダンテは村の仲間たちのお祭り騒ぎに、本気で呆れかえっていた。
「お前らよ・・・・・・ヒマなのか? 何だよ、この横断幕は・・・・・・」
村の入り口をふさぐような形で設置された巨大な横断幕には、『ダンテ、おかえり! 調査官おめでとう!』の文字がデカデカと書かれていた。
「ダンテ、お前帰ってきて早々、ふてぶてしいなぁ! ただいま!とか、言ったらどうだ!?」
四十代半ば位の体格の良い男性が、満面の笑みを浮かべながらダンテの胸の辺りを思いっきり殴りつけた。
「イテッ! 何すんだよ、ジジイ!」
「ハハハッ! 相変わらず硬い身体だな! ビクともしねぇな!」
「だからって、痛くない訳じゃねぇんだぞ!」
ダンテが村の仲間たちと戯れて(?)いる間、ロック、エステル、ドミニクも数人の村人に囲まれ質問責めにされていた。
「あなた様が『時空の賢者』様ですかな? 生きているうちに賢者様に会えるなんて・・・・・・ありがたやありがたや・・・・・・」
一人の老人がドミニクの手を握り涙を浮かべる。
「いえ・・・・・・僕は、ダンテさんと同じ『調査官』です。『時空の賢者』は、こちらの金髪の男性です」
ドミニクはあえて『金髪の少年』とは言わなかった。
「おや! こちらの方が!? まぁ、随分とお若い! おいくつですかな?」
「六十五だ」
「おやまぁ! これはまたお若い!」
「・・・・・・耳、遠いのか?」
「あらぁ! 可愛らしいお嬢さんも一緒なのね! ダンテの彼女かしら!?」
今度は若い女性がエステルに声をかけた。
「えっ!? 私? 違いますよ! 私はロックの弟子で、今は『光の賢者』になるために勉強してるんです」
「まぁ! じゃあ、『次期賢者』様なのね! すごいわぁ! 『賢者』様に『次期賢者』様! こんな辺境の村に住んでて会えるなんて、思ってもみなかったわ!」
村人たちのテンションは収まることを知らなかった。
ダンテはもはや歓迎なのかお祭りなのか分からないこの状況下で、誰にも気付かれないように一人の少女の姿を探していた。しかし、見当たらない。
「・・・・・・なぁ、アイツらは?」
意を決して言葉を発する。
「あぁ、イルマとロメオか? おかしいなぁ・・・・・・みんなで出迎えるから来るように言っておいたんだが・・・・・・」
ダンテにパンチを食らわせた男性が気まずそうな表情をする。
「・・・・・・まだ、怒ってんのか?」
「う~ん・・・・・・そうだなぁ・・・・・・まぁ、怒ってると言えば、怒ってる・・・・・・かもな」
「はっきり言ってくれ」
「怒ってるぞ」
男性は言われた通りはっきり言った。
「そりゃあ、四、五年で帰ってくると思ってた家族が、もう帰らないなんて言い出した日には誰だって怒るさ。しかもお前には前科があるしなぁ。ま、でも今日はその話を着けに来たんだろう?」
「あぁ・・・・・・」
「心配するな! ここだけの話だが、ロメオの方は満更でもなさそうだったぞ? イルマだって賢い子だ。ちゃんと説明すれば分かってくれる」
「だといいんだけどな・・・・・・」
ダンテは学園では見せたことのないような弱気な表情をしていた。
「イルマさん、来てないのか?」
話を聞いていたロックがダンテに声をかける。
「あぁ、怒ってるんだとよ」
「う~ん・・・・・・まさかそんなに嫌がられるとはなぁ・・・・・・」
ロックが眉間に皺を寄せ、難しい表情をする。
「イルマさん・・・・・・俺のことも多分、怒ってるんだろうな。どうしよう・・・・・・俺も怒られるんじゃないか? 俺、女性に怒られるの苦手なんだ・・・・・・」
「オレもだよ・・・・・・特にイルマは」
四人は大歓迎団に別れを告げると、重い足取りでダンテの実家へと向かった--




