第3節 結界の祠
「うわぁ・・・・・・なんか、荒野って感じだね。砂埃とかすごいよ~。こんなところで生活できるの?」
「ケンカ売ってんのか、お前」
四人はカイラニから約一キロ離れた小さな祠の前にテレポートしていた。草木のほとんど生えていない赤茶色の空間は何とも殺風景で、人はおろかモンスターさえ出てきそうにない。
「こんなところに祠作ったのか。まぁ、ここならカイラニもターガスも結界内に納められるが・・・・・・」
ロックはぶつくさと文句を言いながら祠の中にある結界石に手を伸ばす。結界石は無色透明の鉱物で、結界を張る際に使用される魔力の器だ。この中に光の魔法律『ホーリーライト』で光の魔力を入れることによって結界が完成する。ただ、魔力は有限なので、最低でも年に一度は魔力を入れ直す必要がある。
「あぁ、なんだ。まだ結構、残ってるじゃないか」
結界石に手を触れたロックが、ホッとしたように呟いた。
「入れ直さなくても済みそうですか?」
ドミニクがロックの後ろから祠の奥をのぞき込む。
「あぁ、全然大丈夫だ。『ついでに結界見てこい』なんて言うから、ほとんど残ってないのかと思ったが・・・・・・バークリーも心配性だな。後、半年は持つぞ」
ロックは結界石から手を離すと、くるっとダンテの方に向き直った。
「ここ担当してる祭司を知っているか?」
「え? まあ、知ってるけどよ・・・・・・」
ダンテの目が泳ぐ。
「かなり質のいい魔力の持ち主みたいだな。そいつが来てる限り安心だろう。さすが光の神殿の祭司といったところか」
「そんなにすごい奴なのか・・・・・・?」
ダンテが尋ねる。
「そうだな。賢者ほどではないが、それに近いくらいのレベルだろう」
「マジで!?」
「仲良くしといた方がいいぞ」
「どっちかって言うと関わりたくないタイプなんだけどな・・・・・・」
ダンテは頬の筋肉をひきつらせる。
「ねぇ、もう終わったの? 早く行こうよ~! うわっ目に砂入った!」
先ほどより風がひどくなり、あちらこちらに小さな竜巻ができていた。エステルは砂埃に捲かれ、ボロボロと涙をこぼした。
「大丈夫か? そうだな、早くカイラニに向かった方が良さそうだな。カイラニがここよりマシな環境であることが前提だが・・・・・・」
「行ったことあんだろ! こんなにヒドいとこじゃねぇよ! 普通に人住めるからな!」
ロックの言い草にダンテがキレる。
「うぅ~、髪の毛ボサボサだよ・・・・・・」
エステルはもう髪も顔もぐちゃぐちゃだった。
「エステルさん、これを被ってて。ちょっとはマシだと思うから」
ドミニクが肩からストールを外しエステルに頭から被せた。
「えっ、でもこれ『極楽鳥』の・・・・・・」
「いいんだよ。丈夫だから。それに召喚する予定も無いしね」
ドミニクはふふっと笑った。
「でも! こんな大事なもの借りられません!」
エステルは食い下がり頭からストールを外そうとする。しかし--
--ゴゥ!
「きゃあ!」
一際大きな風が吹き、エステルは思わずストールで顔を隠した。
「・・・・・・うぅ」
「いいから、借りておいて」
「・・・・・・すみません。ありがとうございます」
エステルは大人しくストールにくるまった。
「じゃあ行くか。俺、もうテレポートしんどいから歩くぞ。ダンテ、道案内頼む」
「あぁ、分かった」
カイラニは結界の祠を抜け山道をしばらく登ったところにあった。坂は少し急だが、登るに連れてだんだん風が弱まってくる。ちょうど、風の通り道を避けたところにカイラニの村は作られていた。
「あ・・・・・・」
突然、ダンテの足が止まる。
「ん? どうした?」
「どうしたの、ダンテ?」
ロックとエステルがダンテを仰ぎ見る。
「いや・・・・・・ちょっと・・・・・・」
ダンテは二人の身長からはまだ見えない村の入り口を確認して絶句した。
「ふふふ、すごい歓迎ぶりだね」
ドミニクがクスクス笑う。
「え、もう村?」
「なんだ、出迎えてくれてるのか? 早く行くぞ」
「あ、ちょっと待てよ!」
ダンテを追い抜かし小走りで村に向かったロックとエステルを、残された二人も少し早足で追いかけた。




