第7話 ※
やはり・・・・・。
俺は深いため息をつきたくなった。
俺を一目見て、国王は俺が誰だかわかった様だ。
俺は、ベットから下りて挨拶をしようと思ったがそれを無言で止められた。
「・・・・・おっしゃる通り、私はシュアランス王国第1王子のフレイでございます。実は、追手に追われ魔の森に迷い込み、知らず知らずのうちにこちらの国に足を踏み入れた次第です。不法の入国心よりお詫び申し上げます。しかし、事情が事情ですので、何卒ご容赦頂きたい」
俺は、そこまで一息で喋った。
名前も忘れ去るほどの国にここまで下手に出る必要はないだろうが、不法入国をした身で居丈高に振舞うのは得策ではないと思った。
「・・・そうか。わが国にようこそ。追手に追われるなど大変な思いをされたようだな。不法入国など気にする必要はない。ここは忘れ去られた土地。安心して療養されよ」
にこにこと笑う国王の言葉にありがたく頭を下げる。
だが、療養などしている暇はない。
「ご配慮頂き誠にありがとうございます。が、しかし、私は早々に国に戻りやらなければならない事がございます。できれば馬を一頭お貸し願えませんでしょうか?国に戻り次第お礼をお送り致します」
とにかく、今は何が何でも国に戻らなければならない。その為になら金だろうと宝石だろうといくらでも用意するつもりで俺はそう言った。
「・・・・ほう。お礼・・・と」
国王の言葉に俺は頷く。
「この国にはない珍しい宝石が我が国にはあります。また、先程窓の外を拝見したところ、城の庭で食物を作らねばならぬ程、食に困っているご様子。この国の民に十分に行き渡る食料をこちらにお送りすると言うのはいかがでしょう?」
先程、部屋の周りを確認する為に見た景色から想像するにこの国は、生活するのも大変なのだろう。
少しでも国民が潤う様にそして、早々に納得してもらえるようにそう提案した。
「・・・・・なるほど。それはありがたい。が、しかし、馬を貸す事はできん」
国王の言葉に俺は目を丸くした。
ここまで、好条件を提示しているのにかかわらず、馬一頭ごときを貸さないと?
思わず頭に血が上る。
「・・・なぜでしょう?馬の1頭をお貸し頂ければ、馬1頭以上の物が得られると言うのに」
俺の言葉に、国王の笑顔はなくなった。
「まだまだだな。・・・・・ゆっくり療養されるがよい」
そういうと、国王は医者らしき爺を連れて部屋を後にした。
閉じられた扉は再び開く事はなく、沈黙を守っている。
その扉に穴が開くのではないかと言うくらい睨みつける。
「・・・・っ一体、何だと言うのだ!!」
たかだか馬一頭。
そう。たったそれだけの話しだ。
俺の身体の事など、この国には関係もない。
それなのに、身体に障るから馬は貸せない!?
意味がわからない!!
ふつふつと湧きあがる怒りを抑えようと深く息を吸った。
「・・・・なにも、馬など借りずとも勝手に出て行けばいい。どこかで馬を借りればいい話だ」
少し冷静になると、俺は誰に言うでもなく自分自身にそう言い聞かせた。
こんな所にいつまでも滞在するわけにはいかない。
その事に一人頷くと、俺はベットを出た。