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第5話 ※

「ふぉっふぉ。元気になられた様ですな」


目を瞑っていると、扉をノックする音が聞こえ返事を待たずにその扉が開いたかと思うと、白い服を纏った年よりが部屋へと入ってきてそう言った。


「・・・あぁ・・・」


たぶん医者であろうその年寄りに曖昧な返事を返すとともに俺は、年寄りを警戒していた。

先程、聞かされた話によればここは他国である。しかも、あまり聞かないこの国の現状をわからない今、自分の素性を知られるのは非常にまずいだろうと判断した結果だ。


「ふむふむ。警戒なされておられるようじゃが、安心しなされ。この国は忘れ去られた国。何かを企むものなぞいやしませぬぞ?」


「・・・・なぜ、その様な事を言いきれる」


年寄りの言葉に思わず伯父を思い浮かべ反論してしまった。

・・・平和などありえない。表面上でいくら取り繕った所で、どいつもこいつも裏では何を考えているのかわかるわけがない。

俺は、それを今まで身をもって体験してきた。どこの国だって何かしらの利益があるとわかれば目の色を変える。


「ふむ・・・。まぁ、どう思われようと勝手ですがな。おっと、自己紹介が遅れましたな。私はこの国で医師をしておりますクワラと申します。さて、少し診察させていただきますよ?」


ふと、祖国の事を想いだしていると、右腕を取られギュッと握られた。


「うんうん。脈は安定しておりますな。・・・顔色も良いようですな。まぁ、疲労が溜まっていたのと、随分と食事を召されていなかったのとで目を回されたのでしょうな。何、美味しいものでも食べればすぐ良くなりますよ。では、私は食事の準備をさせましょう。胃に刺激を与えないよう、まずは粥からになりますがね」


医者はそういうと、部屋を後にした。

全てを見透かす様なあの医者にはあまり近づかない事にしよう。

再び一人部屋に残され、俺は辺りを見回した。

先程、目が覚めた時も思ったが、質素な屋敷の様だ。ベットから降りると、脇に置いてあった自分の剣を腰に差し、辺りを伺った。


「・・・・扉の前に警備はなしか・・・。随分不用心だな・・・・」


扉の向かい側には小さな窓があったのでそちらも念の為確認しておく。

やはり、こちらにも警備はなく、いつでもここから出ていける。


「・・・・何かの罠か・・・・それとも・・・」


本当に警備の人間をつけていないとでも言うのだろうか・・・?

そう考えて、自分のバカバカしい考えに頭を振った。

素性もわからない者を自由にするなどあるわけがない。

かならずどこかに私を見張るものがいるに決まっている。


「・・・バレる前にここを出なければ・・・」


私の正体が分かってしまった時点で私の運命はきまってしまうだろう。

そう思い、一番安全だと思われる窓から脱出しようと試みたその時に、再び扉からノックの音が聞こえた。

その音に、私は慌ててベットの傍まで戻ると、またもや返事をする前にキィっと扉が開いた。


「クワラ爺、彼の様子は・・・・」


そんな事を言いながら入ってきた人物はドレスに身を包んだ女だった。

女は、部屋に入って来て俺の姿を認めるなりにっこりと笑った。


「・・・よかった。大分顔色がいいみたい」


心から安堵したその表情と言葉に私は眉を寄せた。


「・・・世話になった事には礼をいう。しかし、私は今すぐにでもここを出なければいけない。申し訳ないが馬を用意してもらえるだろうか?」


しらじらしい・・・。そう思った。

心配しているふりをしながら、きっと何かしら企んでいるのだろう。

お礼を期待しているのか。それとも、すでに私の素性が分かったのか・・・。

とにかく、一刻も早くここを出なければいけない事は間違えないようだ。


「馬ですか?・・・まだ、お身体も完全に良くなったわけではないのにその身体で馬に乗るおつもりですか?」


私の言葉に女は先程の表情を崩し訝しげに私をみた。

やはり、何かしら企んでいるのだろう。


「問題ない。馬を用意してもらえないのであれば、私はこれで失礼する。後日改めて礼はする。心配するな」


こう言っておけば、もうこれ以上何かを言われる事はないだろう。

そう思っていたが、目の前の女はまた表情を変えた。


「あなた、自分の体調も管理できない癖にさっきから何偉そうなこと言ってるの!?病人は大人しく言う事を聞いてベットに戻りなさい!!」


そういうと、女は私の手首を掴みベットへと投げた。

!!!!!!!!!!!!!!?????????

な、投げた??


目を丸くしている間に女はてきぱきと私を寝かしつけ布団をかける。

これでも身を守れる程の力は身に着けていたはずなのに、私は全く動けなかった。

予想外の言葉や行動に驚いて・・・・。


「姫様。乱暴はいけませんぞ?仮にも病人ですからな」


これが姫!?


驚いていた私に更に追い打ちをかけるように先程の医者らしき爺が姿を現した。

(一体いつの間にこの部屋にいたのか全く分からなかった・・・)




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