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第11話

すぅすぅと聞こえる寝息にほっと胸をなでおろす。

目の前で眠るフレディは、いつも空気を張り詰めている。何かを警戒している獣のようだ。


「・・・・一体何をそんなに怖がっているの?」


そっと呟いても寝息を立てて眠っているフレディには聞こえない。

まじまじとこの男を見るのは2度目だ。

1度目は彼を見つけた時。

キラキラと眩しい彼は異国の人だと言う事は一目でわかった。

まだ、この国から出た事のない私にはなんだか眩しい。


「他の国ってどんなところなんだろう・・・・」


フレディが眠るベットに肘をつき頬を乗せると、キラキラ光る髪の毛に思わず手が伸びた。


「わっ!髪の毛さらさら!!」


思わず声に出してしまった事に慌てて口を紡ぐ。

フレディは少し眉間にしわを寄せただけで起きる気配はない。

少し触れた髪は、その少しの間でもわかるくらいさらさらだった。


「・・・ちゃんと手入れしている髪なんだろうなぁ。それに比べて私のは・・・」


真っ黒な髪が嫌いなわけではない。

それなりに手入れもしている。でもやはり艶が違う。


「・・・他の国ってどんなところなんだろう・・・」


興味はあったが、日々の生活の糧になる畑から離れる事も出来ず、他の国へ赴く事など一度もなかった。

そもそも、他の国へ行くと言う発想がなかった。

どんなところだろうな~?と言うだけで終わっていたからだ。


「だからって、他の国に行く事はないだろうな~」


行くお金もなければ、この国でやる事はたくさんある。

だから、この人が回復したら他の国の事をたくさん聞こう!

ひとり納得して頷いていたら、なんだか私も眠くなってきた。

パタリとベットの上に上半身を倒すと、ぽかぽかする布団に誘われて眠りについてしまったのだった・・・・。




****************************


「おい・・・・おい・・・・」


身体が揺れる。

正確には揺さぶられている。

その行為に、しぶしぶ目を開く。


「・・・やっと起きたか・・・」


その声のする方に顔を向けると、キラキラと眩しい光が目を覚ます。


「ん・・・・んん?」


目が会うのはブルーの瞳。

あれ?私は何してたんだっけ?

寝ぼけた頭をフル回転させるのを遮る様にそのブルーの瞳を持つ人物から言葉が発せられる。


「・・・・重い・・・・」


その言葉に、そういえば随分とふかふかの枕だなと思い、やっと頭も目が覚めた。

ガバっと勢いよく上半身を上げれば、自分の失態に気づく。


「ご、ごめん!!!」


どうやら、私はフレディの身体を枕にうっかり眠っていたらしい。

そんな私をみて、フレディは驚いたように目を開けば今度はくくっと笑い声を洩らす。


「な、なに?」


慌てて髪や服装を整えるが、フレディの笑いは止まらない。

困ったように首をかしげるとフレディは笑いながら上半身を起こした。

そう思ったら、今度はにゅっと手が伸びてきた。


「よ、よだれ・・・・っく」


笑いながらフレディは自分の袖口で私の口元をぬぐった。

その行為に思わず赤面する。


「えっ!!んぐっ」


ごしごしと拭かれる私の口は恥ずかしいのを通り越してちょっと痛い。


「だ、大丈夫だから!!じ、自分で出来る!!」


そう言ったらやっとフレディは私の口元から手をどけてくれた。

・・・・笑いは未だに止まっていないが・・・。

恥ずかしい思いをしながら既に拭われた、口元をもう一度ハンカチで丁寧に拭う。


「ひ、姫がよだれとかっ・・・・・ない。ないだろ・・・っくく」


いつまでも笑い続けるフレディに思わず頬をふくらませ睨みつける。

が、顔は赤いままだ。


「ひ、ひどい!!そんなに笑わなくったっていいじゃない。・・・・寝ている間のよだれの管理なんて出来ないもん・・・・」


ふんと顔をそむけるが、やった直後、後悔した。


「ぶはっ!!」


フレディが先程よりもさらに笑ってしまったから。

その笑いになんて自分が幼い子供みたいな事をしたんだろうと思ったが、すでに後の祭り。

恥ずかしい思いを隠しながら椅子から立ち上がる。


「も、もう知らない!!それだけ笑えるなら元気でしょ!!心配して損した!!帰る!!」


そういうとフレディに背を向けて扉の方へと足を向けた。


「ご、ごめん。悪かった・・・・。っはぁ。そんな姫君なんて見た事がなかったからつい・・・」


一生懸命笑いを収めようとしているフレディの事をちらりと伺えば、深呼吸をしているのが見えた。

そして、フレディはこちらを向くとにこりと笑った。


「笑って悪かった。だからさ、もうちょっと付き合ってくれ」


その言葉に、しょうがないとばかりに私は腕を組んで向き直る。


「・・・・誰にも言わないと約束できる?」


じろりと睨むとフレディは肩をすくめた。


「よだれの事?・・・言わないよ」


「絶対よ!」


そういうと、私は元いた椅子に再び腰かけた。


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