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第八十章 政府の反応  

十二月二十五日。

 サイト公開から五日後、内閣官房長官が定例記者会見で質問に答えた。

「首里城の出土品および関連する文化財については、政府として適切に管理しております。いわゆる『未完の神器』サイトについては、一民間人が公開した個人的な見解であり、政府として公式にコメントする立場にはありません」

 事実上の否定でも肯定でもない。無視に近い対応だった。

 だが、水面下では動きがあった。

 真壁からの暗号化メッセージ。

『鷺宮さん。サイトの公開により、内調内部でも議論が起きています。封じ込めるべきか、放置すべきか。結論は——当面は放置。理由は、サイトが学術的な裏付けを欠いているため、放置しても国家の安全に影響しないと判断されたため。ただし、サイトの内容が学術的に検証され始めた場合——対応が変わる可能性があります。』

「学術的な検証——」

 直人は考えた。サイトの内容を学術的に検証するためには、原本へのアクセスが必要だ。原本は政府の管理下にある。政府が原本へのアクセスを許可しなければ、検証は進まない。

 堂々巡り。

 だが——一つだけ、政府の手の届かないものがある。

 拓本。靴墨で取った、洞窟壁面の拓本。あれは政府の管理下に入っていない。

 そして——京都の町家から預かった、二重和紙の試作品。これも政府の手元にはない。

 原本がなくても、拓本と試作品があれば——独立した学術的検証が可能だ。拓本は壁面の文字の物理的な転写であり、紙自体の年代測定が可能。試作品は二重和紙の製造技術の物証であり、暗号の和紙が同じ技術で作られたことを裏付ける。

「早川。拓本の紙と靴墨の年代測定を、信頼できる機関に依頼してくれ。拓本そのものの年代ではなく、拓本に写し取られた壁面の成分分析だ。靴墨の下に、壁面由来の石灰岩の微粒子が付着しているはずだ。その石灰岩の年代を測定すれば——」

「壁面の文字が刻まれた時期を推定できる! 独立した年代測定っすね。原本がなくても——拓本から間接的に検証できる」

「ああ。そして京都の試作品も、紙の放射性炭素年代測定にかけろ。明治初期の紙であることが確認されれば——二重和紙の技術が明治に存在したことの物証になる」

「了解っす。——先輩、これ、学術論文にしたほうがよくないすか」

「論文?」

「はい。ウェブサイトは拡散力があるけど、学術的な信頼性がない。査読付きの学術誌に論文を投稿すれば——政府も無視できなくなる」

 直人は考えた。

「書く。——俺は修復士であって研究者ではないが、修復報告書なら書ける。二重和紙の修復過程で発見された構造異常についての技術報告。それを——」

「文化財科学の学術誌に投稿。しかるべき査読を経て掲載されれば——誰も無視できない」

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