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第七十九章 公開  

十二月二十日。

 直人は決断した。

 暗号のすべてを——公開する。

 学術論文でも、メディアへのリークでもない。もっと直接的な方法で。

 直人は、これまでの調査で得られたすべてのデータを——スキャン画像、拓本の写真、早川の解析結果、真壁のレポート(個人情報を除外したもの)、照屋家の口伝——ウェブサイトにまとめて、公開した。

 サイトの名前は「未完の神器」。

 早川が一晩で構築した。シンプルなデザイン。テキストと画像のみ。

 トップページの冒頭に、直人はこう書いた。

『このサイトは、明治初期に日本の各地に埋め込まれた暗号体系の調査記録です。暗号は百五十年前に設計され、「未完」のまま現在に至っています。

暗号の設計者は、後世の人間に判断を委ねました。何を書くか。何を約束するか。それは設計者が決めることではなく、受け取った人間が決めることです。

このサイトを公開するのは、暗号を私たちだけのものにしないためです。暗号は、発見した個人のものではなく、この国に生きるすべての人のものです。

空白は、あなたのものです。』

 公開から二十四時間で、サイトのアクセス数は十万を超えた。三日後には百万を超えた。

 SNSで拡散された。ニュースサイトに取り上げられた。テレビの情報番組で特集が組まれた。

 反応は——分かれた。

 歴史学者の一部は慎重な評価を示した。「物証の検証が不十分である。公開された画像とデータだけでは、学術的な結論は出せない」。正当な指摘だった。

 一方で、市民からの反応は熱かった。「百五十年前の人が、私たちに手紙を書いてくれていた」「空白を埋めるのは私たちだという考えに感動した」「沖縄の照屋さんの話で泣いた」。

 そして——批判もあった。「国家の秩序を揺るがす無責任な行為だ」「修復士風情が国家の象徴に口を出すな」「陰謀論にすぎない」。

 直人はすべてのコメントを読んだ。賛同も批判も、すべてが——声だった。

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