出会い
幼女を収穫した。
いや、流石に冗談だ
件の旅立ちから数日後、俺はある馬車の一団が魔物に襲われている所を発見した
襲われている、とはいったが、馬車は血まみれで、殆どの人間は殺され切った後のようだ
今更助けに入っても手遅れかもしれないが、馬車の中を漁っているらしい魔物は退治しよう
馬車を覗いて見ると、中には今にも魔物に食い殺されそうな子供がいた。
幸運なことに、という言葉は多くの人が死んでいる場に適したものかは分からないが、、少なくともこの子の命に関しては、俺の助けが間に合った。
「大丈夫か?」
獲物に夢中な哀れな魔物を切り伏せ、奥で縮こまっている子供に言葉を投げかけた。
ところで、この場所は俺の村からあまり離れていない山中で、目の前にある大きな馬車はいささか不釣り合いに見えた。
だがまあ、その違和感はすぐに納得に変わった。
その子は、俺と同じ色の髪と目をした幼女だった。
ピンク髪にハート型の瞳孔とハート色の目かって?
そんな色だったら俺もコイツもどれだけ幸せだったことだろう。
その子は、金色の髪と緋色の眼をしていた。
それがどうしたって?俺は解説じゃない、、って言っても、自分で状況整理に考えてるだけなんだがな。
金髪と緋色の眼、それが表すのはある種族的特徴
「吸血鬼か」
そう俺が呟くと、その子はビクんと身体を震わせ、俺の髪と眼を見つめた。
この子は、おそらく俺の村を襲い、俺をこんな体にした吸血鬼の仲間だ。
大方、近くに根城でもあったのが、最近冒険者達にバレたのだろう。
吸血鬼はその恐ろしさを含んだ美しい見目から、生け捕りにする依頼がよく出るそうだ。殲滅、と生け捕り、では殺す確実性が全く違う。
その打ち漏らしが、俺の村を襲ったのだろう。
冒険者め、金に目が眩んで雑な仕事をしやがってと心の中で恨み言を吐きながら、俺は、目の前の幼女をどうするか考えた。
吸血鬼に、子供を産むという習性があるのかは分からない。
目の前のこの子も、見た目こそ幼いが、ほんの数日前まで人間だった俺の何十倍の時を生きていてもおかしくない。そうであれば、俺が次に瞬きをし終えた頃には、この幼女のお手手で体をバラバラにされていてもおかしく無いのだ。俺の家族や村の人達のように。
だが
「.......っ、.........っ!......っ!」
この場の全てが、それを否定している。
そもそも、まともな吸血鬼なら先程の魔物如きに遅れは取らないし、この子は奴隷紋を刻まれていない。
吸血鬼のような高い魔力適性を持った魔物に奴隷紋を刻むには、相当高級なマジックスクロールか設備が必要だ。実際の現場に、この魔物の襲撃ではぐれたであろう馬車以外にどれだけの商人や冒険者がいたのかは分からないが、流石に使われたのは使い捨てのマジックスクロールだろう。
だが、いかに高級で使い捨てだろうが、人など一捻りで殺せる存在に、隷属の魔法を使わないことはないだろうし、都合よく動けない程度に制圧出来る実力者も、そうはいないだろう。あるとすれば、元からまともに戦闘も出来ないほど弱っていた存在だけだ。こうしてこの馬車だけ人狼に襲われ逸れている所を見ると、その判断もやはり間違っていたのだろうが。
それに加え、俺の目や髪を見た反応がおかしい。
まるで、同族を、吸血鬼という存在を恐れているようだ。
「吸え」
俺は腕を差し出し、そう告げた。
この場での最適解ではないだろうが、ある程度の安全の保証が、俺の良心に迷いを振り切らせるに至った。
「…...!?.........(かぷっ)。」
戸惑いながらも、恐る恐るその幼女は俺の腕を噛み、血を吸った。口に腕を突っ込む必要はなさそうだ。
俺も道中で、倒した魔物や獣の血を吸い、吸血鬼になった当初よりは力をつけた。
「うぉっ.....」
それでも、その幼女に血を吸われた時、意識が途切れそうになった。
吸血鬼は、食料として人や魔物の血を吸うが、どうやら同族から血を吸うのはそれとはわけが違うらしい。まるで全身が液状になって、腕から噴き出しているようだった。
「んっ、んっ、ぷぁ。」
どうやら満足したようで、そいつは俺の腕から口を離した。
「ありが...とう」
「いや、大丈夫だ。立てるか?」
「ん...」
最低限動けるだけの力はついたようで、俺の手を取り立ち上がったそいつに俺は聞いた。
「俺の名前はレオン、お前の名前は?」
「わたし、の、名前.....。」
「...分かった、お前の名前は」
こうして俺は、吸血鬼の幼女、アルフィを仲間にした。
こいつ、幼女をビビらせて、餌付けして、誘拐しやがった...!




