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旅立ちの日

旅に出よう

深夜の帷の中、そう思った


「旅に出よう」


口に出してみるとやはり、これが自分のやりたい事なのだと、スッと頭に入ってくる

旅というものは良い

自分も何度か、幼い頃、親に連れていってもらったことがある。

と言っても、それは精々2、3つ隣の村へと情報や物資の交換に行くだけのものだったが。

旅に出ると、俗世間のしがらみ、家族、友人といった人間関係を一時的に置き去り、手放し、忘れることが出来る。

まあ、前述した自分の旅では、自分の幼さ(そのままの意味)で家族とは離れられなかった訳だが。

それでもまあ、普段いる場所から飛び出し、知らない場所に行き、見たことのない景色を見るというのは、自身に大きな衝撃を与えることに違いは無い。

というわけで自分は、旅に出る事を決めた。


「行ってきます」


家を出る時、家族への別れの言葉を口にした。

どれぐらいで旅が終わるかは分からないが、きっと長い別れになるであろうことを、自分は知っている。


旅に出るといっても、自分の身を守るための道具が必要だ。

獣や魔物は勿論のこと、悪漢に襲われでもしたら大変だ。

これでも、元々王都で騎士をやっていたらしい村のご老体から、剣を習っている。

大抵の相手には剣さえあれば勝てるという自負があった。


「失礼しま〜す」


そのご老体の家に、剣を貰いにきた。

そう、勿論無断でだ。

どうせ他に使うもの人などいないとはいえ、今やっている行為が人の理に大きく外れたものなのは違いなく、返事などされようものなら飛び上がってしまうだろうが、むしろ最低限の敬意として受け入れてもらいたい。


「好きだったよ」


長年想い続けてきた人の家の前で、そう告げた。

本人には直接告げないのかって?

最後の別れに想いびとに好意を伝える人間が、夜中に人家に忍び込み、頭上から言葉を投げかけるというのは、流石に人としてどうかと思う。


「まあ、俺はもう人じゃ無いんだけどな」


「改めて、今までありがとう」


そう告げて、俺は月光に照らされ赤黒く輝く、故郷の村から永遠に去った。


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