第4話 Hymn of the Fallen
お久しぶりです。
すっかり年明けですね。
今年は本腰入れて制作しようと思います!
雑煮は食べましたがおせちは食べませんでした。
美味しいおせちはどんな味なんだろう?
第4話:Hymn of the Fallen
地面に叩きつけられた衝撃が、王都の広場を粉砕する。 土煙の奥、爆心地から渦巻いたのは、青に限りなく近い緑――深淵を思わせるアトモスだった。
「……遅れてすみません。少し、時間を忘れていました」
光の中心に立っていたのは、かつての幼さを削ぎ落とし、静かな覇気を纏ったアレク。 ミカエルは反射的に剣を構える。その威圧感は、一瞬「敵」と錯覚させるほどに変貌していた。
「っアレク……様!? ですか……っ!?」
「お久しぶりです。いや……ミカエル様にとっては三日ぶり、でしょうか...」
アレクは微かに口角を上げる。修行の地での5年は、現実世界の3日に過ぎない。そのズレが生む余裕が、絶望に沈む戦場に「異物」としての希望を叩き込んでいた。
「あいつ……形状からして生理的に受け付けませんね。願わくば戦いたくないですけどやるしかないですね。行きましょう、ミカエル様」 「ええ……。……頼りに、しています」
ミカエルは震える膝を叩き、再びディヴィヌム・ユディキウムを握り直した。
上空では、黒い立方体の怪物――ネクロイが不気味な旋回を続けていた。 六つの面が波打ち、無数の眼球がアレクたちを凝視する。その口からは、この世のものとは思えない多重奏のノイズ――「異形の祈り」が漏れ出していた。
「っく!!全ての面に目がある。こいつ死角がないようです。アレク様!一旦下がりましょう!」
「下がるのは賛成なんですけど、どうやって下がります!?」
ミカエルが六枚の翼を広げると、空が割れ、荘厳な門が出現した。そこから三人の影が飛び出す。
「カマエル、サリエル、ソラリウス――前線維持!」
「了解! あーあ、今日も今日とて地獄だぜ!」と、大剣を担いだサリエルが笑う。 「……厳密に言えばここは下界ですけどね」と、カマエルが冷静にメガネを直す。 「暑いアッツい! 盾が溶ける! これ労災降ります!? 特別手当出ますかあああ!?」と、巨大な盾を抱えたソラリウスが絶叫した。
ミカエルとアレクは、彼らが稼いだ一瞬の隙に背後へ下がり、最終打撃の打ち合わせを行う。
「どうしますか、ミカエル様」
「私が『ホーリー』を展開し、周囲の時間を圧縮……一気に速度を上げ、あいつの眼を潰します。今のアレク様の一撃は、おそらく私よりも重い。……ありったけを、ぶちかましてください」
「……」
「?……アレク様?、どうかしましたか?」
「いや。僕がミカエル様に『信頼されている』という前提で話が進んでいることに、少し……驚いているだけです。」
アレクの言葉に、ミカエルは自嘲気味に目を伏せる。 「……頼らざるを得ないのです。今の私には、それだけの力しか残っていない。……情けない、天使で申し訳ありません。」
「……いえ、そんなつもりじゃ。……あの人達。長くは持ちませんね。準備します」
アレクの周囲に、大気を物理的に押し潰すような緑のアトモスが収束していく。
ミカエルは自身の寿命を燃料に、白い光を爆発させた。 「――ホーリー展開。タイプ・ディヴィヌム」
世界の秒針が歪み、一秒が一日に引き伸ばされる。その神速の領域で、ミカエルはネクロイの六面全てに斬撃を刻み込んだ。
「……長くは持たない。頼みます!!」
「そちらこそ、隙を作るまで死なないでくださいよ!」
ネクロイが悶絶し、全方位に黒い光線を乱射する。 ソラリウスが間一髪のタイミングで盾を構えた。
「ぎゃああ! 盾が! 俺のボーナスで買った盾がああ!」
ソラリウスが叫び、ミカエルが「黙れ! 殺すぞ!!」と一喝する。
その喧騒を切り裂き、アレクが天高く跳躍した。 カオスピアに全エネルギーを圧縮しアレクは... 「――ラグナスペルギアァッッ!!!」
爆ぜる閃光。正六面体は断末魔をあげる間もなく、分子レベルで霧散した。
夕方の空。虹がかかり、ヴォイド災害は閉ざされた。
(カン!カン!カン!!)戦いの終焉を告げる鐘が鳴り響く。
煙の中から現れたアレクに対し、避難していた民衆から歓喜の声が上がった。
「アレク様だ! 我らの新しい英雄だ!」
「天使だけじゃ守れなかった街を、王子が救ってくれた!」
一方で、満身創痍のミカエルに向ける視線は冷ややかだった。
「天使のくせに、随分と手こずったじゃないか」
「結局、王子がいないと何もできないのか……?」
「普段は裁くだけ裁いていざというときはこれか!」
ミカエルは何も言わず、血に染まった羽を隠すように背を向けた。その肩が微かに震えているのを、アレクだけが見ていた。
「大丈夫かな、ミカエル様。」
数日後、天界の庭園。 全身に包帯を巻いたミカエルのもとへ、次女ガブリエルが蜂蜜の瓶を持って駆け寄る。
「姉さま! また無茶したでしょ! ほら、栄養摂らないと干からびちゃうよ!」
「……仕事ですから。それに、アレク様が助けてくれたわ」
「姉さまは真面目すぎ~。もっとラファエルみたいに、こう、要領よくサボればいいのに!」
「サボりじゃないよ……『効率化』って呼んで……」 三女ラファエルが、寝そべったまま蜂蜜をスプーンで舐めている。「……おいひぃ。ミカエル姉さまも食べる?」
「お前は戦場でも『お腹空いた』って寝てただろうが!」とガブリエルがツッコミを入れる。
「ガブもラファもウリ見てない?」
「……いる」 「わっ!? いたの!? ウリエル、気配消すのやめてよ!」 「……やだ。……ミカエル、頑張った。……これ」
ウリエルが差し出したのは、不格好に折られた一輪の花だった。 「……ウリエル...ありがとう。二人もありがとう。」 ミカエルの顔に、この数日で初めての、本当の笑顔が宿る。
「この平和は絶対守ってみせる。」
だが、その平和は文字通り「粉砕」された。
王都では「天使不要論」を掲げる革命派が急増し、秩序は崩壊寸前。 そんな中、ヴォイドを乗り越えた宴のが開かれ、無事に終わった。。。はずだった。
「私とした事が、すこし飲みすぎたようね。酒は飲んでも飲まれるなってユーディス様が言っていたのに。」
「なにはともあれ、革命派の人たちがなんて言おうと、私が致命的なことをしなければ国が落ちるようなことはないわね。妹たちのおかげね。」
ホロロル広場の中央に、黒い影が立っていた。 その影の足元には、真っ白な髪を赤く染め、光を失ったウリエルが横たわっている。
「……ウリエル?」
駆けつけたミカエルの声が、裏返る。 返事はない。ただ、風が彼女の血の匂いを運ぶ。
「殺したのは、俺だ」
闇の中から現れたのは、黒衣の男――。 そしてその背後には、死んだはずのウリエルと瓜二つの容姿を持ちながら、どす黒い虚無を纏った「何か」がいた。
天使の立場上、人間を自身の感情で傷つけることは許されない。
過去一人を除いて、それを破ったものは存在していない。
ディスの冷徹な宣言。 ミカエルの瞳から光が消え、代わりに底なしの「赤」が燃え上がった。 背中の白い羽が、末端からどす黒く変色していく。
「……ルシフェル。お前は……こんな、胸を引き裂かれるような怒りの中にいたのか」
天界が軋み、空から黒い雷鳴が轟く。
「――許さない。一人残らず、消し去ってあげる」
愛する妹を奪われた守護者の咆哮。 後に「ホロロル事件」として歴史に刻まれる、国全体を揺るがす戦争の幕が、最悪の形で上がろうとしていた。
やっとルシフェルの名前が出ましたね。
ナヘマとルシフェルが推しです。
物語の構成と締め方も全部確定しました!
しっかり分にして伝えられるように頑張ります!
では次回もよろしくお願いします!




