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Antinomy  作者: アノ・ヒデ
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Antinomy 第1話 Peace Blaker

前書き

争いはするべきか?

過去の偉人は『革新は戦争から生まれる』と言いました。しかし、その先に広がるのは、飢餓、疫病、そして何よりも『命』の喪失です。

この世界には、二律背反の真理が存在します。愚かで醜い人間の行動がある一方で、自己を犠牲にしてでも他人を救う美しい心も存在します。

私は、この矛盾に満ちた世界と人間が嫌いです。ですが、その温かさも知っています。

この物語は、私が探し求めた真理の答えです。私の辿り着いた結末が、あなたにとっての答えとなることを願って。

さあ、始めましょうか。

秩序主義国家「クラティア王国」


四大天使が主戦力となるこの国で、主人公アレクは、この世界の平和に錯覚していた。


飢餓も争いも疫病もない、完全な世界だと、そう信じていた。


いつも通り、友人のオットー・フレアと遊びに出かける。家の前では、母のミグルが見送ってくれた。


ミグルは温厚で、自分より他人を優先し、どこか抜けている性格だ。


そんな母の優しい笑顔が、アレクにとっての平和の象徴だった。


いつもの公園へ向かう途中、この国で一番の広場、ホロロル広場を通った。


今日は一段と騒がしく、国王ルクサリオン・クラトス・セラ・ラシス・が国民に挨拶をしていた。


その姿は、まるで絵本から飛び出してきたような威厳に満ちている。


(母さんを一人にしてるくせに、何が平和だよ。全く)


アレクはそう心で呟いた。

王の演説に夢中になっているオットーの横顔を、どこか冷めた目で見ていた。

アレク「もう行こうよオットー!」

オットー「わかったって!やっぱかっこいいなぁー」


アレクと母は、王の妃と子であることを隠している。それは、二人のささやかな秘密であり、日常の穏やかさを守るための盾だった。


公園に着くと、二人はいつものように討論を始めた。「じゃあ今日は鶏が先か、卵が先か!」


アレク「どう考えても鳥が先だよ!」

オットー「その鳥は卵から生まれるんだよ!?」

アレク「違う!鳥は進化して鳥になったんだ!」


その時だった。


空が、毒々しいパステルパープルへと変色していく。まるで絵の具をぶちまけたような、悍ましい色。


それに気づいた人々が、不安そうに空を見上げる。

そして、**ギギギ……**という不快な音を立てて、空に大きな亀裂が入った。


次の瞬間、国の最高戦力である四大天使の一人、ミカエルから全国民に退避勧告がなされた。


耳元のイヤリングから流れてくる緊急放送に、オットーは金縛りにあったように固まった。


アレクは彼の肩を強く叩き、避難を促す。

「しっかりしろ!行くぞ、オットー!」


その時、一瞬だけ、全身の骨が軋むほどの重圧を感じた。**ドォンッ!**という衝撃音と共に、亀裂から異形の怪物が現れる。


それは、まるで漆黒の嵐が具現化したかのような、巨大な怪物。


そして、それを囲むように、白い子供くらいの大きさの生物が無数の雨のように、**バタバタバタ……**と地面に落ちてきた。


「国の兵士と四大天使ミカエル様が戦ってる!」

広場へ逃げる人々の声を聞きながら、アレクは内心で焦りを感じていなかった。


この国は平和だ。人々は助け合える。今回もきっとそうだ、誰も取り乱さない、と信じていたからだ。


ホロロル広場にたどり着くと、そこはすでに人でごった返していた。国王が拡声器で民を宥め、ミカエルが広場を死守している。

国の兵士が総力を挙げるものの、広場以外は怪物の格好の的だった。


その時、アレクの脳裏に一つの考えがよぎる。

「母さんっ!!」

母の性格をよく知っているからこそ、余計に心配になったのだ。


来た道を最短で戻り、家へと走る。広場とは違う、醜い光景が色濃くなっていく。


人々は生き残るためなら、周りを蹴落とすことに容赦がなかった。


様々な考え、「最悪の場合」が頭をよぎるが、それでも「人」を信じて走り続けた。


家の前の道に出た時、眼前に広がっていたのは、無残にも焼け落ち、瓦礫と化した我が家だった。


まだ希望を捨てられないアレクは、瓦礫の周りを必死に「母さん!」と叫びながら探す。


「アレク!!!」


その声に、希望が胸に満ちる。瓦礫に下半身が埋もれた母を見つけた。


「私は最後でいいのよ、アレク。別に諦めてるわけじゃないから!」


その優しさに、アレクはイライラと呆れを感じた。母は、いつだってこうなのだ。自分のことより、他人を優先する。その性格が、今、母自身を危険に晒している事に。


アレクは周りの怪我人から助け始めた。

1人ではこの瓦礫を上げきれないと判断したからで、母親の言いつけを守ったわけではなかった。


ある程度周りの避難を終え、アレクは母のところに戻った。


アレク「今度はこっちを手伝って!」


瓦礫の下で苦しむ母を前に、アレクは必死に瓦礫を持ち上げようとするが、びくともしない。


アレク「おーい!、早くしてよ!!」


アレクが振り返るとそこには誰もいなかった。

そう、我先に逃げたのだ。


アレクは理解ができなかった。

焦燥感が全身を支配し、震えが止まらない。その時、母は痛みに顔を歪めながらも、瓦礫の中にある大きな木箱を押し出していた。


「アレク……これ……これだけは持っていって……!」

それは、父が命よりも大切にしていた、槍が入った箱だった。


「何言ってるんだよ母さん! そんなものより、まず母さんを……!」

アレクが箱を押し戻すと、母は今までにないほどの怒りで叫んだ。


その顔には、苦痛とこの状況への憤りが入り混じり、歪んでいる。

「いいから……! いいから早く……!!お願い、アレク……。これだけは、絶対に置いて行ってはダメ。」


涙を流しながらの優しい声と、歪んだ笑顔。

この世で自分の命よりも大切なものがあるという概念を初めて知ったアレクは戸惑いながらも、箱を引きずり出した。


蓋を開けると、黒い刀身に何も装飾のない、無骨な槍が収められている。


全長は2メートルほどで、見るからに重そうだが、アレクの手に馴染むと、信じられないほど軽く感じられた。


槍を持った瞬間、外にいる異形たちの色が、空と同じパステルパープルに変色した。


彼らは一斉に、**シュルルルル……**と、凄まじい勢いでアレク目掛けて突進してくる。


反射的に槍を振るうと、**ゴオオオオオオッ!**と轟音と共に一陣の嵐が吹き荒れ、4、5体の異形は影も形も残っていなかった。


「なんだ……これ……!?」

驚きながらも、アレクは母の元へ駆け寄った。

槍を使い瓦礫を押し上げ、ミグルを背負う。

彼女の息はすでに虫の息だった。


「母さん……母さん、大丈夫だよ。広場に行こう!」


涙を堪え、必死に走る。途中で健康そうな大人とすれ違うが、誰も助けようとしない。


ホロロル広場にたどり着くが、医者たちは軽傷の患者にすら手一杯だった。


「どいてっ……!あんたたち生きてんだろ!大した怪我もないくせに何してんだよ!!こっちは虫の息なんだよ!!!」


感情が爆発し、アレクは叫んだ。

ようやく道を開けてもらい、手当てを開始するが、医者は静かに首を振った。「もう……助からない」

母は最期まで微笑んでいた。


「アレク。よく聞いて欲しい。

その槍は……何があっても、誰にも渡してはダメ。

兵器としても使ってはダメよ……。

あなたが昔から言っていた理想の国には程遠いけど、できる。あなたなら……。

これから幾千の困難や挫折、超えられないと思うほどの壁もあるでしょうけど……たまには逃げてもいいのよ。私は、いつでも味方だから。

ただ……友達や、これからできるかもしれない恋人を悲しませることだけは……しちゃダメよ。

最終的に実現できればいいんだから。」


最後の微笑み。ミグルは弱々しく手を伸ばし、アレクを呼んだ。


「……アレク、こっちへ」


顔をぐしゃぐしゃにしながら、アレクは母に顔を近づける。


「愛してる」


額にキスを落とし、母は静かに息を引き取った。


「う……あああああああああああああああああ……!!!!」

母の死。

その理由を求めて、アレクの思考は混乱する。


「誰のせいだ、誰のせいだ、誰のせいだ、誰のせいだ!?」


その答えは、絶望的な光景の中にあった。


虚ろな目で逃げ惑う人々。その心に渦巻く醜さ。そして、全てを破壊する異形たち。


『全部……全部、全部全部全部全部!!……滅ぼしてやる……!!』


その瞬間、アレクの心が槍と共鳴し、怨嗟の念を象徴する紅いオーラとラインが刻まれた。


アレクはただ、破壊衝動に突き動かされるままに、異形たちを屠り始めた。

一振りごとに風が荒れ狂い、町はさらに破壊されていく。アレク自身に、もはや意識はなかった。



ミカエルは巨大な異形と交戦中だった。

「パワーだけで言えばガブリエル並み...!」

「私だけでは守ることはできてもこのネクロイは倒しきれない...!」


異形はネクロイと言われる相手のコアであった。

倒す事ができれば、周りの異形も一瞬で消えるという。


ネクロイは一旦下がり距離をとった。

ミカエルも息を整えた。


次の瞬間、ネクロイはとんでもない量の生命エネルギーをあたりから吸収した。


ミカエル「嘘でしょ。そんなの打ったら間違いなく広場も消し飛ぶ......!!」

「ガブリエル達はまだなの!?!?」

「もう、私がうまく流すしかない。」

「やってやる。」


ネクロイが体を変化させ、眩い光とともに一撃を放った。


遠くにある国境付近の山が吹き飛んでいるのが見えた。


ミカエル「なんとかできた...」


ミカエルは片腕を無くしていた。


ミカエル「ネクロイを片付けたとして、残りのスメルトはどうする...。考えたくないな。」


遠くで轟音が響いていた。

ミカエルが検知領域を最大まで広げた。

異形=スメルトの姿はもうなくなっていたのである。


ミカエル「私が手を貸すまでもなく、スメルトを一掃したか……ありがたい。しかし、誰だ?まさか王子が!?」

遠くから一瞬見えた姿にミカエルは確信した。


ミカエル「まずい、王子だ。止めなければ……!」

暴走するアレクは、ミカエルと巨大なネクロイの戦場へと乱入する。ミカエルは両者の攻撃を捌きながら、この状況を打開しようと賭けに出る。


ミカエル「アレク!あなたのその力を、怨念を最大限私にぶつけて見なさい!!」


アレクは無意識のうちにミカエルを標的にし、有り余る生命エネルギーをミカエルに向けて放つ。


空間が大きく歪み、強大なエネルギーの奔流がミカエルを襲う。


「タイミングを外せばもう片腕では済まないな……だが、あのネクロイを今すぐに消し去るにはこれしかない。」


それは、世界の理をねじ曲げるほどの、強烈な「怨念」の顕現だった。

光の奔流に飲み込まれた戦場は一点にエネルギーが集中し、**グワアアアアアアアア……!**と空間を揺らしながら回転し始める。そして、ミカエルが自身のエネルギーを込めて、異形に放った。


耳が張り裂けそうなほどの断末魔の叫びと共に、異形は崩壊していき、虚空へと消え去った。


ミカエルは安堵の表情を見せ、力尽きて崩れ落ちるアレクを静かに抱きかかえる。いつも聞こえてくる街からの歓声は、どこからも聞こえなかった。

遠く、燃え盛る町を眺める丘の上。

白いコートを纏った白髪の美少年が、この光景を静かに見つめていた。


少年「へー、僕以外にいたんだ! 笑。あの槍を使える人間が。」

兵士「ニヒル様!相手の四大天使が引いていきます!!」

ニヒル「おっ!まじでー!?ラッキー!そのまま進軍してー!」

兵士「はっ!」

さらに別の世界の中心にある、自然の国でも、目覚めたものがいた。

〇〇「起きたのね。……おはよう」

続く。

あとがき

第1話「Peace Breaker」を読んでくださり、本当にありがとうございます。


アレクの覚醒と、その後の暴走。そして、彼の周りで起きた悲劇は、物語のほんの始まりに過ぎません。

このあとがきを書いている今、私は改めて自分の哲学と向き合っています。人間が持つ愚かさや醜さがある一方で、母ミグルのように、無償の愛や自己犠牲といった美しい側面も確かに存在します。この二律背反の真理を、私はこれから先もずっと描いていきたいと思っています。

ニヒルや〇〇、そして他のキャラクターたちがこれからどう物語に絡んでくるのか、各国の思惑がどう動いていくのか、ぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。


今後の更新は、毎週日曜日の22時を予定しています。(たまに随時更新)感想や誤字脱字の報告、お待ちしております!

それでは、また次の話でお会いしましょう。

アン・ヒデ

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