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030-かくして...黎明が終わり、暁が始まる

二週間後。

クロファートプライムは大いに沸いていた。

獣人の救世主であり、ユグドラシル星系を囲むヨルムンガンド星系群を丸々所有する経済的な意味での台風の目が訪れているのである。

しかも、それだけではない。

上層の一等地に屋敷を建てた彼等は、巡洋艦二隻と戦艦一隻で都市に降下して来ていた。

無数の都市所属のエスクワイア(人型兵器)を、ドローンが威嚇するような状態であり、かなり物々しい。


「.....上から見るのは初めてです」

「そうだな。ごみごみした街だ」


艦隊は直接屋敷に降りていく。

屋敷を囲む四隻分のシップヤードにゆっくりと降りていく。

その頃、都市部ではデモが起きていた。


「軍事占拠を許すなーーっ!!」

「人間の支配の復活を防げー!!」


叫んでいる彼らは、下層の民の事など気にもしていない。

自分たちの権利の事には気を払うのにである。

だが、それは「悪」ではない。

足元を這いずる虫に気を払うほど、人という生き物が善であるはずが無いからだ。

これから変えていくのだ。

虫が小さく弱いものではないと。

生きている、同じようなものだ。

そう考え方を改めるような世界へと変えるのである。


「対空砲で歓迎....というわけではなくて助かった」

「そうするつもりであれば、そもそも戦闘衛星で撃って来るでしょう」

「あんな低出力の砲台で? 正気でないでもなけりゃそんな事しないぞ」


シンはアインスと話している。

その中、アロイテは窓に張り付いて外を眺めていた。

先に戦艦が降下し、巡洋艦があとから降りていく。

周囲を固めていたドローンは、エスクワイア隊を徐々に押し出すように動き出す。


『ECMを解除します』


ECMによる通信封鎖が解除され、エスクワイア隊は撤収命令を受け取って退避していく。

デモ隊はドローンによる催涙ガスの散布で退散させられ、戦艦はシップヤードに着陸した。

現地で雇った整備員たちが駆け回り、ガントリーに固定された戦艦は、降下してきたドローンを収容し始める。


『着陸しました。現在周辺の安全度を高めている最中ですのでお待ちください』


屋敷をシールドが取り囲む。

主力艦級のシールドを張り合わせたそれは、主力艦級の最終兵器にも数発耐える。

あとは、遮蔽物をスキャンし、的確な位置に射撃ドローンであるワームⅢを配置すれば、警備は終了である。


「会食は三日後か」

『相当の批判が予想されますが?』

「問題ない」


ブリッジで暫く過ごすシンとアロイテ。

警備の整備が終わると、整備員の退避。

熱源・生命反応スキャンを行い誰もいない事を確認すると、シンとアロイテは地上に出た。

シールドに阻まれているので風は吹かないが、植えられた植物の匂いが彼女の鼻腔をくすぐる。


「........私は、何をすれば」

「居るだけでいい....とは言わない、学ぶことだ。知れば、学べば、やるべき事、自分の運命が自然と見えてくるはずだ」


シンはそれだけ言うと、空を見上げた。

軌道上すれすれに待機するアバターが見えていた。

実際には自転や重力の関係で当たらないのだが、住民にとっては突きつけられた銃口と同じであろう。


「黎明だ」

「え?」

「この星は今、黎明にある」

「....?」


シンはそう言い、アロイテの方を見た。

彼にとって、アロイテはクロファートの未熟さの象徴だ。

幼い彼女が、一人で生きていかなければ行けない。

それは、彼の出身地である地球では当然の事ではある。

しかし、それより遥かに発達した技術が普及したこの世界で、言い訳は許されない。

全員が平等に幸せになる事は出来るのだ。

黎明はやがて夜明けに。


「さ、これからだ。まずは屋敷の中を見せよう」

「はい!」


アロイテを連れたシンは、屋敷の中へと消えていった。


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