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012-長き慈悲か、又は短き苦痛か

アロイテの修行は続く。

今日は、ノルンによる正しい姿勢や仕草の練習であった。


「シン様はあまり多くを気にしない方ですが、悪い姿勢はあなたの体自体に影響を与えます」

「っ...は、はい!」


立ったまま、ノルンに体をいじられるアロイテ。

立つときの姿勢を、ノルンが正しい形に直してくれているのだ。


「アロイテ様の直立姿勢は、確かに立つ事はできますが、長く立っていると疲れる姿勢です。この仕事で座る事は少ないですから、長く立て、かつ美しく見える姿勢を維持する事が重要です」

「...はい、っ!」


アロイテは、正しい姿勢で立つ。

慣れない...しかしながら、今までよりずっと楽であった。

成長に合わせて身につけていく、人それぞれが持つ「正しい姿勢」。

オーロラが解析して、ノルンが調整したのだ。


「どうして、ノルン...様は、シンさ...様のことをよく知っているんですか?」


アロイテはふと気になり、ノルンに問いかけた。

ノルンはその問いを聞いて、一瞬呆然とした顔をした後に、笑った。


「ふふ、私はシン様のクローン...まあ、双子みたいなものです。身内の考えは似るという考えを信じるならば、私はシン様にこの世界で二番目に精通しているでしょう」

『一番は私です』


何か複雑な事情があるのだろうと、アロイテは実感した。

空の上では普通のことなのだろうか? とも思っていた。


「1日で随分上達しましたね」

「はいっ...!」


昼になれば、また食事が待っている。

アロイテのマナーは比較的まともという程度だが、ノルンはそれを評価した。


「シン様は王国式、帝国式、連邦式、他の国の食事の作法に精通しておりますが、この場合は連邦式のマナーだけでいいので、しっかりと覚えて行きましょうね」

「はいっ」


かつて存在したオルトス王国、ビージアイナ帝国、そしてシンの生まれた国...日本と、それに類する国家であるフランスやイタリア式のマナーをシンは身につけており、状況に応じて自在に利用できる。

連邦式は歴史の短さから短絡しているものの、その全てを把握している。

主人がこれならば、使用人にもそれなりの格式が求められるのだ。


「このペースなら、1ヶ月後には正式雇用できますね」

『ええ、ですが...勉強の方だけはどうしようもないので、少し荒技を使いますが』

「わかっています」


アロイテの修行は続く。

だが同時に、彼女は気づいていた。

体を使う事や、手を使う事は学んでいるが、知識面の教授が一切無いことに。

「学校」の存在を朧げながら知っているアロイテは、手を動かすより学んだほうがいい事もよく知っている。

だからこそ、二人の会話に不穏なものを覚えた。

そしてそれは、すぐに的中することになるのであった。


「アロイテ様、少しお話が」


食後、アロイテはノルンに話しかけられた。

ノルンは雰囲気は落ち着いているものの、何か後ろ暗そうな雰囲気を纏っていた。

まさか、また騙された?

そんな疑念がアロイテの仲に渦巻く。


『貴方には悪いのですが―――――』


直後、アロイテの後ろからぬるりと現れたアンドロイドが、アロイテを拘束する。

名をメタトロンと言う、正真正銘の戦闘機体である。


「すみません、短期間であなたに知識を教える手段を思いつけなかったので、違法な手段を使わせてもらいます」


その手法とは――――

かつて戦時に多用され、人道的な観点から連邦法で違法とされた手法であった。


「ま、待って、ください!」

「大丈夫です、苦しいのは一瞬ですから――――今回は少し量が多いので、時間はかかりますが......」


騙されて売り飛ばされるよりもひどい目に遭う。

その事を実感したアロイテは、首根っこを掴まれた猫のようにメタトロンに連行されるのであった。


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