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シスターの1日400円生活。

あれからしばらく経っただろうか。

相変わらず彼女はスマホを手にして顔色をコロコロ変えている。

割と自分は日頃ろくに何も喋らないのだが彼女は独り言が多いタイプで

「ウキー!」だのなかなか擬音化に困る発狂音を立てている。


最初のうちはうるせえなぁとおもってたのだが人間慣れるもので

今は今日もやってんなーとしか思わなくなってしまった。


今日はそんな彼女の食生活について語りたいと思う。

日給400円は伊達ではなく、彼女の食生活はマジで終わっている。

なお彼女の説明いわく、食事は全く取らなくても問題ないらしいが

普通の人間と全く同じように腹は減るし、エネルギーも消化するから

単に死なないと言うだけで実質的に食事は必要不可欠ということだ。

一般的にそれは問題大有りだと思うがそれを言っても無駄だろう。


日給400円しかないのはもはや稼ぎ0みたいなものなので

マジでろくなものを食べていない。

米は温情でタダでくれてやってるがひどい日は米に塩を振って食っている。


その他近所の雑草を拾ってきて炒めていたり

よく多用するのはもやしである。

正直俺はもやしは好きじゃない。味の問題もあるが

もやしは腐るのが早くて保存がきかないのが問題だ。

外に出るだけで体調を崩す俺にとってはこれは苦しい。


そんな俺はといえば……卵である。

割と生でも日持ちするし、火を通す前提ならもっと長く持つ。

最近は卵は値上げされて……等と言われるが俺から言わせればそれでもなお安い。

あとは野菜などを買わないといけないのだが……。

あのシスターは野菜を食べろといい、野菜という名の雑草を食べさせようとしてくるのだ。




……流石に雑草を食べる趣味はない。

前に一度だけ騙されたと思ってと言われ、無事騙された。

致し方なく、今日も買い出しに行くのだが、

何らかの野菜を買わなければならない理由で……。




なお今日はシスターは「シスター」である。

外出用の私服は封印しているという意味である。

正直凄まじく目立つのでやめてほしいのだが。

どうやらこの服装で通っているうちにシスターは

貧しい子どものために食事を買っている慈善活動家かなにかと思われてるらしく

安売りの値札がつく直前の食事を優先して譲ってもらえるそうだ。


まるで乞食のようで嫌なのだが……なんでも彼女いわく

施しを受けるのもまた大事なこと。などといっている。




そんなわけで今日も買い物である。

なお買い物は週に1日か2日。

理由は単純でそれ以上は体の負担が辛いからである。


見た目はグラマラスな美女、中身は子どもの名探偵もびっくりしそうな

彼女を連れて歩くようになり最初はいつも以上に疲れていた。

今は荷物をある程度持ってくれて助かっているのも確かだ。

食べ物は買わなくてもトイレットペーパーや歯磨き粉やら

生きてる以上買い物は必要だ。


彼女も必要なものを買っていく。

といってもほぼ食料品だが。

一般人とは違うから必要なものも少ないのだろうが……。

せめて同居している身としては洗剤ぐらいは買ってほしいと思う。

女性に直接聞くのも憚られるため、それとなく聞いたのだが

風呂も水だけで済ませているらしく……。


まぁ今考えるのはやめよう。

とりあえず食料の調達だ。


彼女といえば、買ってはいけないと言われた子どもがおもちゃを見るかのように

『今日は』精肉コーナーでステーキ用の肉を眺めていた。

俺も正直ステーキ用の肉は買う余裕など無い。

健康のためと味気ない食事をたまに彩るために

一番最低価格のものを都度安売りのときだけ買うぐらいだ。


しかしこの女にとってステーキ肉と特売の貼られたシールには

異常な魅力があったらしい。

いつもより長く売り場に張り付いて離れようとしない。


「言うまでもないけどそんなもん、買うかねないぞ」

「……」


そんな事は言うまでもなくお互いわかっているのである。

故に彼女も何も言わない。

言わないが未練がましく未だに肉を眺めているのである。


……。

肉を眺めてみる。

グラム単価400円の肉がグラム単価98円相当で1980円か。


肉はちょうど2枚入っていた。






若い頃、働いていた頃に何度か焼いたことがあった。

まだ実家に住んでた頃だ。

両親が料理が好きでステーキ用に厚手の鉄板があったが

今はそのような物は当然ない。


維持管理が楽なため今は鉄製のフライパンが一つだけ。

それをよく加熱して、予め塩コショウをまぶした肉をさっと乗せて

ざっと日本酒をかけ、すぐにひっくりがえす。

そして直ぐにまな板に移して包丁で食べれるように切り込みを入れて

温めておいた更に移して箸を添えて彼女の前に出した。




……美味しそうに食べる彼女を眺めつつ、俺も肉をほうばった。

久しぶりに食べる肉は美味いものだなと思った。

しかしそれ以上にうまそうに肉を食べる彼女が目に止まったのである。

『美味いか?』

そうきくこともなく俺は彼女を眺めていた。


眺めている彼女からは『過去』を感じる。

俺も食い終わった後、皿とフライパンに過去を見た。

昔の自分ならフライパンに肉を焦がしたりはしなかった。

最近はろくに料理らしい料理もしない、そのせいで腕もなまった。

誇るほど巧かったわけでもないが、それでも……。




まぁ今日はよだれを垂らして机に突っ伏している女を眺めて

自分を許すこととした。



美味い飯が食いたい。

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