第2話:ルナード
小さい頃から皆が怖がる生き物が好きになる傾向があった。
例えば蛇が道端に居たらどうだろう。
普通は「うわぁ」と驚くだろう。
きっとそれを見て興味本位で近づいて可愛いと触れようとする変な子供は僕ぐらいなものだ。
だからだろうか。
僕が異国人すらも怖がらなかったのは。
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アスファルトはきっとものすごく熱いだろう。
道と言う道がゆらゆらと揺れているように見える。
そういえば…あの日も、こんな暑い夏だったような。
でも、ここまでは暑くなかったかなぁ…今年は異常気象だってニュースで言ってたっけ。
過去最高温度を更新した地域もあるとかなんとか言ってたっけ。
そんな外に出るのも億劫な僕の右手を引っ張る美奈は僕にとっては眩しく見えていた。
なんて真っすぐな目をしているんだろう。
それに比べて僕はどうだろう。きっと自分で自分の顔を鏡で見たらそれはそれは笑えないほど死んだ魚のような顔をしていることだろう。
――美奈は男勝りでいつも真っすぐだ。
逆に内気な僕は彼女に引っ張られてきた。
僕はそんな彼女を羨ましくも、かといい僕も美奈のようになりたいかと言われると、ちょっとめんどくさそうだからやっぱりいいやと思う程度だ。
「この林、懐かしいでしょ。」
「…まぁ。」
「…ルナード、元気にしてるかなぁ。」
美奈はまた“彼”の名前を口にした。
「…だから…消えた奴の話なんてやめろって。」
僕は美奈がルナードの話をすることを嫌がった。
それは…彼が―――何も言わずに僕の前から姿を消したからだ。
「…ルナードだって事情があったんだって。きっと今でも夏樹のこと心配してるって。」
「根拠もないこと言わないでよ…ホラ、さっさと行こうよ。」
ちょっとだけ不快だ。そんな顔を見せるがきっと美奈は動じない。
「あんたねぇ…まぁ良いけどさ。」
ホラ。美奈は僕がイラっとしてもお構いなしなんだ。
どうせいつものことだと思っているんだろう。
―――
僕らは林の中を進んでいく。葉で空が隠れており、薄暗い。
「暗いなぁ…」
「昔よりも木が大きくなっちゃって薄暗くなっちゃってるんだよね。でもここでおっきいの見たって話だし、すぐ見つかるわよ!」
「…僕としては会いたくないんだけどなぁ。」
「なぁに夏樹。怖いの?」
「怖いに決まってるだろ。」
僕は正直に即答した。
「異国人だっていい人ばっかりじゃないし…人間もそうだけど…知らない誰かが悪い人だったらどうするのさ。」
僕は冒険を選ばない。冒険してもめんどくさいだけだからだ。
「大丈夫よ、私に任せて!」
「はぁ…何をどう任されたのやら。」
美奈はどんどん奥に進んでいく。僕はそれを必死に追いかける。
「ハァ、ハァ、美奈…ッ、ちょっと速いって…」
ろくに運動していないツケが来た。僕はもう疲労困憊だ。
暑いし疲れたしもう帰りたいという欲が僕を支配しようとしたところで美奈は足を止めた。
「あて、どうしたのさ…」
背中にこつんとぶつかる僕。美奈は小声で言った。
「見て、あれ…例のおおきな…」
美奈は指を奥に指す。
するとそこには大きな影が見えた。3m~4mはありそうな…僕は美奈の4倍~5倍はありそうな大きな影が見えた。
だが、ここからだと全容は見えない。
大きな木々て隠れているからだ。
唯一しっかり確認できるのは巨大な尻尾だ。
怪物…のような。映画でしか見たことが無いような、怪獣の尻尾のようにも見えた。
「…寝息…かしら。眠っているみたいね…」
美奈は小声でつぶやいた。
黒い影はどうやら眠っているようだ。
「なぁ…もういいだろ。あんなでかい異国人絶対危ないって。」
異国人は大体人間よりも少し大きい人が多いけど…どんなに大きくても2m50cmぐらいだ。
だけど、今目の前にいる大きな何かはその1.5倍近くある。
僕らみたいな小さい生き物なんてあっという間に潰されてお陀仏だ。
アレが悪い奴だったらどうする。僕ら死ぬぞ。
そう思った僕は美奈の好奇心をなんとか鎮めようとする。
「もう少し近づいてみようよ。」
「…君は死にたいの?」
僕は美奈に言う。
「だってさ、このままにしておくのも危ないんじゃない?私たちで何かできるなら何かしたいじゃん。」
美奈はそう言うが何の武器もない僕たちに何が出来るというのか。
というか何故美奈は無謀にも何も持ってきていないのか。
いや、それを言ったら僕もだ。僕も家から何も持ってこなかったじゃないか。
―――死にたいの?
か。
それを僕が聞かれたら違うと速答できるだろうか。
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「…グゥ…フガッ」
「!」
もっと近くまで行くと寝息が聞こえてきた。
僕は正直身体が震えている。だというのに美奈は本当に恐れを知らないのかどんどん近づいていく。
普通自分よりも圧倒的にでかいもので、しかも姿も大きく違う。そんなのに近づこうだなんて無謀過ぎる。
僕は…これ以上前に進めなかった。
「…」
美奈に声すらかけられない。
僕の声でこの大きな何かが目を覚まして驚いた拍子に僕たちは弾き飛ばされてしまうかもしれない。
そうなったら怪我じゃすまない。僕は一歩、一歩、後ろに下がる。
しかし…
バキッ
「…!」
しまった。木を踏んでしまった。しかも結構大きい音が鳴った。
「ちょ、夏…!」
美奈もそれに気が付いて僕を注意しようとしたが、もうその注意は無意味となった。
「…ん?」
大きな何かが動き出した。目を覚ましてしまったようだ。
「!」
僕は咄嗟に走り出し、美奈の右手を掴んで走り出す。
「な、夏樹!?」
「逃げるんだよッ!早くッ!」
僕は美奈を引っ張ってこの場から逃げだした。
「…誰か居るのか?」
声が聞こえる。僕は怖くて振り返れない。このまままっすぐ前を向いて、走るんだ。
「だ、誰かいるのだな?私の話を聞いてくれないか!?」
その大きな何かは僕らに話を求めてきた。
「な、夏樹!何か話したがってるわよ!聞いてあげようよ!」
「冗談じゃない!話なんて出来るわけないよ!!」
僕は美奈の言うことを無視して美奈の手を引っ張る。
「ま、待ってくれ!」
ドスドスと大きな足音が近づいてくる。
接近しているのが分かる。それはそうだ。僕は走るのが昔から遅い。学校でも下から数えたらすぐに僕の名前が出てくるほど僕は運動神経がゴミ以下だ。
でも、今僕は死にそうになりながら美奈を引っ張っている。
人は死にそうになると思わぬ力を発揮するという。僕はその可能性に賭けたんだ。そうでもしないと僕だけならまだしも美奈も危ないんだ。
「夏樹ってば!!」
「なんだよッ!」
「夏樹聞いて!あの異国人困ってるって!悪い人じゃないって!」
「そんなの何処に証拠があるんだよ!」
「もう!わからずや!」
美奈は僕の手を放して停止した。
「ば、馬鹿美奈!」
美奈はその大きな何かを見た。
「ドラゴン…!」
その姿は本で見たドラゴンそのものだった。
ファンタジー小説や子供の絵本にも出てくるその姿に誰もが憧れを抱いたことだろう。
そんなドラゴンが目の前に居る。
(ぜ、絶対殺される!)
声が出ない。叫んで助けを呼びたいのに声が出ない。足が震える。やばい、殺される。
「待ってくれと言っているだろうに!私の話を聞いてくれッ!」
ドラゴンはそう言い、美奈の傍で停止した。
「み、美奈…!」
「あ、あんた、あたしたちを…食べたりしないでしょうねっ!」
美奈は少し怖いながらも強気にドラゴンに立ち向かおうとする。
ここまでくれば度胸がある…なんてレベルじゃない。
「た、食べるわけが無かろうッ!人間は食料ではないッ!私はただ聞きたいことがあっただけなのだ!」
ドラゴンはそれを真っ先に否定。
「だ、だってさ、夏樹。」
「…ハァ…もう…駄目…」
僕はフラッと立ち眩みを起こし、バタンと派手に倒れた。
そこから視界がどんどん暗くなり、美奈とそのドラゴンが僕を心配して声をかけ続けているけど…あぁ~…ゴメン、ちょっと休む…
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セミの鳴き声がうるさい。
ちりんと風鈴の音が聞こえる。ここは実家の…縁側だ。
「お、起きたか夏樹。」
「…ルナ…」
「ルナって言うなと言っているだろう。」
「あはは~…ごめんごめんルナ。」
「だから…まぁ、良い。今日は何処へ連れていってくれるのだ?」
「ん~…もう行くところ行っちゃったしなぁ~…どうしよっか。」
あぁ、これは昔の記憶だ。
僕が見ているこの光景はセピア色一色だ。
それにこの風鈴は音がうるさいからと僕が最近捨ててしまったから今は無い。
僕が…ルナと…ルナードと……
「…ム、声…すまない夏樹。今日は私の方が用事があるようだ。」
「またショウシュウ~?忙しいんだね。」
「まぁ、これも“騎竜団”の務めだ。我々異国人が君たちに認めてもらえるようになるための立派な仕事なのだからな。」
「う~ん…よく分かんないけど、良いことなんだよね。」
「そうなのだ。ではまた後でな。」
「うん、晩御飯残しとくからね~」
ルナはトコトコと歩いて出て行った。
思い出した。
ルナは…帰ってこなかったんだ。
それは夏の終わり、僕が4歳の頃の、8月31日。
―――僕は酷く泣いた。
親には内緒にしていたから、親は僕が何故泣いているのか分かるはずもなくきっと凄く苦労しただろう。
そして僕は…それから心を閉ざしてしまったんだ。
僕は、勝手にいなくなってしまったルナを…酷く恨んだ。
だから、僕の中にはルナの記憶が…あまり残っていないんだ。
夢だと思いたかった。あの夏の記憶が全て夢だったらいいのに。だったら、僕は世界に置いていかれなくて済んだかもしれないのに、
こんな、悲しい思い出を作らなくて済んだのに。
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「…ん…」
「アッ、起きた!良かった夏樹~…」
「み、な…」
僕は気を失っていたらしい。
場所は…僕は仰向けだ。上を見るとそれは空だった。つまりここは…家じゃない。
「…起きたのか。」
「…あっ、また気絶しそう。」
僕を覗き込んだのはさっきのドラゴンだった。
一気にまた気絶しそうになった。
「もう!夏樹!怖がらなくていいの!彼は悪い異国人じゃないわ!ねっ!」
「う、ウム…信じてもらえぬかもしれんが…」
ドラゴンは「驚かせてしまって申し訳ない」と丁寧に謝った。
「…はは、もういいや…で……話って…なんなのさ…」
僕はドラゴンに尋ねた。
「あぁ、いや…美奈殿には話をしたのだが…」
「美奈でいいわよ。でさ!このドラゴンさ、自分の名前も思い出せないんだって。気がついたらこの世界に居たんだって。」
「記憶が…無いってこと?」
僕は尋ねるとドラゴンは頷いた。
「そのようだ。私は…その、珍しいのか?美奈殿…ではなく、美奈に異国人のことは聞いたが…私のような者は珍しい…と。」
「そ、そりゃそうだよ…この世界にはドラゴンは存在しないし…空想上の生き物だもん…異国人は町に大勢居たけど、みんな人の姿と獣の姿を合わせた様な姿ををしているから…君みたいな…獣?竜?みたいな姿をしているのは見たことが無いかも…」
「そうね~…まぁ…異国人の中にはあなたみたいな元々は獣だけど人の姿に変身してる…っていうのも居るって聞いたことはあるけど…まぁなんにしてもよ。どう見ても異国人で間違いないわよね。」
僕と美奈の意見は同じだった。
このドラゴンは間違いなく異国人だ。でも、それだけしか分からなかった。
「だが…」
「だが?」
「何故であろうか…私はこの場所を知っている気がするのだ。」
「ここを…?」
「あぁ…私は…短い間ではあったがここで暮らしていたような…そんな気がしてならぬ…」
ドラゴンは辺りを見渡し、表情を緩ませる。
「とても落ち着くのだ。だからつい、居眠りをしてしまった。」
ドラゴンは改めて夏樹たちに「申し訳ない」と謝罪した。
「…なんかさ、凄く今更なんだけどさぁ、夏樹。」
「何?」
美奈が話しかける。美奈は少し間をおいてとんでもないことを口にするんだ。
「…もしかして…ルナードじゃない?」
「……は?」
「…?」
ドラゴンは首をかしげる。
「美奈、僕よりもルナードのこと覚えてるくせに何を意味わかんない事言ってんのさ…」
「だって、あたしここでずっと暮らしてるけど!異国人がこの辺に居たって話、ルナードぐらいしか知らないもの。」
美奈はこのドラゴンがルナードではないかと、とんでもないことを言い出した。
ルナードは僕よりも小さい小型のドラゴンだ。
こんなにでかくない。確かに少しゴツゴツしていて、黄色に茶色がかったような鱗色をしていたけども…
それでも、大きさが違いすぎる。
「…そのルナードというのも…私と同じドラゴンであったのか?」
ドラゴンは尋ねる。
「うん、あなたよりずいぶん小さかったけどね。あたしたちがずっと小さい時に夏樹の家に少しだけ住んでたの。」
「住んでたというか…勝手にあがりこんできたんだよ。親に隠し通すの大変だったんだぞ…」
僕はため息をつく。思い出しただけでも親の目をかいくぐった…苦労した日々を思い出すよ…
「でも、楽しかったでしょ?」
「…まぁ…そりゃ…ね。その時は…だけど。最後はあっけなかったよ。仕事かなんだかで招集がかかってさ。そのまま帰ってこなかったんだ。」
僕は顔をしかめた。
「…僕を、裏切ったんだよ。」
「夏樹…」
「…ウゥム…」
ドラゴンは頭を抱える。
「ど、どうしたの?」
「ルナード…ルナード…何故だろうか…とても懐かしいような…」
「ほら!やっぱりルナードだよ夏樹!ルナードが帰ってきたんだよ!記憶飛んじゃってるけど!」
美奈は笑顔で僕に言うが、僕はまだこれがルナードであることを断定するには早すぎると思っていた。
それに…
「…ていうか…話ってなんだったのさ。」
僕はドラゴンに尋ねる。
「あ、あぁそうだった。君たちに頼みたいことがあってだな…」
ドラゴンは頭を下げる。
「私をしばらくの間、保護してくれないだろうか?」
「…保護って…言い方…」
「保護って…どういうこと?」
言い方が気になるが、それはつまり…このドラゴンを拾ってくださいってこと?
そんな道端で捨てられている猫とか犬とかと勝手が違いすぎるでしょ…
「私は何も思い出せずこの地に迷い込んでしまった。だが…ここの懐かしさに触れていると何か思い出せそうなのだ。幸いにも私が忘れているのは思い出と名前だけのようだ…一通りの家事は出来る。どうだろう。」
「ドラゴンも家事とかするんだ。」
「家事って、まず家に入れないでしょそんなでかいと…」
「一応、君たちの言う一般的な異国人…のような姿にはなることが出来る。」
「えっ」
ドラゴンは目を閉じる。
ドラゴンは気が付いたら一瞬で姿が変わってしまった。
2mないぐらいの高身長で少し筋肉質でガタイの良い男性の姿だ。
「どうだろうか。」
「すっご!あたし異国人はあまり見たことないけどこんな感じだよね!夏樹!」
「う、うん。町で見てた異国人とほとんど変わらないかも。」
「そうか…良かった。初めて変身魔法を使ったが…上手く言ったようだ。魔力が足りず、少し大きくなってしまったようだが…」
「魔力?」
またファンタジー用語だ。僕らにとってはその程度の認識なんだけど、このドラゴンにとってはそうじゃないんだろうな。
「あぁ…この世界の魔力はほとんど無いに等しいほど少なくてな…ロクに空を飛ぶこともままならぬようだ…」
(そういえば…昔のルナードも何処か行くときは歩いて行ってたような…あれは…飛べないんじゃなくて飛べなかったんだ。)
「ね、夏樹。ルナードを助けてあげようよ。」
美奈は僕に言うが…もう美奈の中ではコイツはルナードらしい。
「ルナードって決まったわけじゃ…って…つまり?」
「あんた1人暮らしなんだから異国人の1人や2人来ても大したことないでしょ?」
「えぇ…」
この…ドラゴンを…うちで…?
「…夏樹…と言ったか。思い出したらすぐに出ていく。それまでの間だけで良いのだ…あまり時間をかけぬよう私も努力して見せる。」
「…」
僕に悩む選択は無さそうだ。まず美奈が「受け入れろ」と言わんばかりの形相で見てくる。
そして…このルナード…と仮定しているドラゴンもまた、寂しそうな目で僕を見る。
今は人間の姿をしているから余計にその表情からくみ取りやすい。
拒否権なんて、ないじゃないか。
「あー…分かったよ…」
「さっすが夏樹!やったねルナード!」
「ム、あ、あぁ…だが、良いのか?」
「いいよ別に…」
正直、美奈の言う通りだった。
僕はわりと色々なことにどうでもよくなっている。このドラゴンに追いかけられたときは必死になってしまったけども、それで気を失うぐらいには必死というものに慣れていない。
だから、落ち着いて聞いてみれば最終的に行きつく先は…“どうでもいい”だった。
「そうと決まったらルナード用の生活用品が必要じゃない!?ホラ夏樹!買いに行こうよ!車出して!」
「…美奈が行けばいいじゃん…」
めんどくさ。
そう思ったので僕は美奈に丸投げしようとしたが…
「あたし免許持ってないもん。」
「マジかコイツ…田舎暮らしで免許持ってないとかどんだけだよ全く…」
僕は文句を言いながら、家に向かって歩き出した。
「な、夏樹。」
ルナードが申し訳なさそうに話しかける。
「その、ありがとう。世話になる。」
「…ん。」
僕は適当に返事をした。僕は何もするつもりはない。勝手に思い出して勝手に何処かへ行けばいい。
きっとこれもまた、この夏が終わる頃には何もかも元通りなんだろう。
そうに違いない。
でも、僕の胸には少しだけ熱を感じたんだ。
僕は小さい頃から皆が怖がる生き物が好きになる傾向があった。例えば蛇が道端に居たらどうだろう。
普通は「うわぁ」と驚くだろう。
きっとそれを見て興味本位で近づいて可愛いと触れようとする変な子供は僕ぐらいなものだった。
だからだろうか。
今、僕は…少しだけ、このドラゴンに…興味がある。
だから、僕も彼を…
「行くよ、美奈、ルナード。」
ルナードと呼ぶことにした。
「えへへ、ルナードよろしくね!」
「あ、あぁ。もうその名で決まったのだな。」
「あったりまえじゃん!ルナードは記憶が飛んでてもルナードだよっ。」
「根拠もないくせに…」
この時、僕はまだ知らなかった。
もう25歳のいい年した大人になった僕が体験した…このドラゴンとの出会いが、この新しい夏の記憶の色が鮮やかに染まっていき、やがて思い出すらもセピアではなくなっていくことを。
僕はまだ、思いもしなかったんだ。
この出会いは、僕のこれからも、過去の傷すらも変えてしまうってことを…




