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第四話:友に守られるためならば俺は喜んで我が身を優先できる


「うおー!これが魔法かあ!かっけえーーー!」


 異世界ではクールキャラで通すつもりだったのに!!()魔法とかテンション上がらないわけがないだろうよ!!


「まったくお子ちゃまだな〜タクトは。

 それでリアラ?その光の塊がどうなるんだ??」


 自分だってかぶりついて見ているくせによく言うよぴちぴち新鮮次女め!



 ⋯⋯おっと、つい口が悪くなった。平常心平常心。

 ――えー、俺たちは今。馬車のある樹海から少し進んだ場所にある日の通りの良い開けた空間に来ている。

 ギャルメイクにテンション爆上げとなったリアラが俺と三姉妹に本物(マジモン)の魔法を見せてくれると言い出したから移動してきたわけだ。


 俺たちの目の前には天へと掲げた両手に巨大な光の丸玉を作り出したリアラの姿。


 何度も言うが生の魔法にテンションが上がる!⋯反面、ものすごく既視感があるんだよなあ。 だってこれって。


「たくにー。 これ。 ゲンキダ――」

「マった! しずくストップ! 俺も思ったけどあくまでこれはリアラの魔法だからッ!」


 異世界中の元気を少しずつわけてもらった訳ではないはずだからっ!

 

「そんな事よりさ! な、なあ、リアラ? 早く魔法の続きを――」

 ついに痺れを切らした次女が先をうながす、も。

「さっしー、どーしよぉ⋯⋯これ殲滅型の魔法だったの」


 ――出たよお約束てんか――殲滅型!?

 

 色んな意味でバンザイお手上げ状態のリアラは、

『出したのはいいけど消し方がわからないのぉ』と半べそをかく。


 消し方が分からない。と言う事はゴミ箱に空き缶投げ捨てるみたくポイっとそこらに放てる魔法ではない⋯と。それでダメイドは無言で離れたのか。


 なるほどな⋯。俺も逃げるか。


 そうと決めたら一目散に!いち、にの、さん!

 秒速で準備運動を終えた俺は三姉妹に感づかれないよう靴紐を結ぶ仕草でクラウチングスタートの体勢をとる。


 勝負は一瞬。 次のリアラの発言がスタートの合図だ。


「ねえ、これもう――」

 よし来たッ!

「じゃあみんな、あとは任せたからッ! 俺はちょっくらお花摘んでくる!」

 ――言うが早いか、すぐさまスタートを切る俺、タクト!

 速い! 速いぞタクト選手!

 おっとしかし、そこに魔の足が忍び寄るううう!

「こなくそ逃さいでっかー!(※訳:あなたおひとりだけ助かるなどこのわたくしが許すとでも?)」

 ――瞬時にしゃがみ込み、足払いをしかける次女!かどまつさしみねえ!


 ⋯うわっと! 危ねえッ!この女、迷いもなく足払いしかけて来やがった!

 しかし勝利の女神が微笑んだのは⋯⋯おれにダッ!


さよなら少女達よ(グッバイガールズ)! またねっ!」


 次女の足払いなど予想の範疇。

 俺は立ち上がりざま手を突き出しそのまま前にダイブ。

 すね毛の一本もないモデル並みの御御足を飛び越え、逆立ち体勢から地面を手で押し出し見事に着地。


 あはは! パルクールの動画にハマって漁りまくったかいがあったぜッ!


「たくにー。 まじ。 さいてー」

「たっくん、さすがのお姉ちゃんも引いちゃうわあ」

「俺の蹴りを避けるとわ⋯腕を上げたなタクト!」


 三姉妹が俺を蔑む声が聞こえる。いや、聞こえない。

 今の俺の耳には風を切り裂き前へと進む勇敢な足音しか届かないのだよッ!

 

 自分でも分かるほどに満面の笑みを浮かべた俺は安全地帯へと辿り着く。

 そこはあのギャル嬢様のダメイド、レイラさんが佇む場所。


 ギャル嬢(様つけるのしんどい)の魔法がどれほどの範囲にどのような効果を及ぼすのかはわからないが、こいつ(・・・)のそばならば確実に被害は免れる。

 このダメイドがその被害範囲を読み間違う事はないからだ。


 まだ出会ってまもない俺たちだが大事な友や主人に守られるためなら笑ってこの身を優先できる――

 そんな覚悟を決めた俺達(クズ)の間には確固たる信頼があるッ!


「私も大概ですが貴方もいい性格されてますね」

「あっどうもです」


 三姉妹とリアラから視線を外すことなく俺に称賛の言葉を送るレイラさん。

 俺は膝に手をついて息を整え、幼馴染と、知り合ったばかりのギャル嬢様(やっぱり様つけたくなった)の方へと振り返り。ダメイドにお礼の言葉を返す。

 

「⋯⋯⋯思ったより近いな」

 精神的にはかなりの距離を走った気がするが俺達2人と彼女ら4人の距離は、田舎のコンビニのレジから対面の扉付き冷蔵庫くらいにしか離れていない。

 距離感に疎い俺には数字であらわす事は出来ないが、少なくとも20メートルもは離れていないはず⋯?

 何か⋯⋯嫌な予感がしてきました。


「ねえダメイ⋯レイラさん? こんなに近くにいて大丈夫なんでしょうか? その、魔法の影響とか?」

「はい、ご心配なく。 お嬢様の魔法の影響はワタクシにはありません」

 

 そうなんだ⋯⋯同士がそう言うなら大丈夫なんだろな?よし、同志を信じよう!


 ――ん? ワタクシには? 


 その時、ギャル嬢様の手に浮かぶ丸い光の玉が形そのままに大きく膨らんだ。まるでバラエティ番組の罰ゲームでたまに見る破裂寸前の巨大風船みたいな⋯⋯


「もぉーむりぃーーー! みんなごめーん私と一緒に爆発してなのぉぉぉ!」


 ギャル嬢様のアルマゲドン的プロポーズとともに光の玉が爆ぜるッ! 爆ぜるうううう!?


「あああタクトォー!?」

「きゃああああたっくーーん??」

「たくにー。 どんまい」

「――どうして俺だけえええーー!?」


 光玉が爆ぜた余波で吹き飛ばされるおれと⋯俺ひとり!? 何で同じ位置にいるのにレイラさんは微動だにしてないんだ!? 密集している三姉妹も!? おかしいだろおおッ!?


 やーなかーんじーーーー!(ニャー)


「――グフウッ」


 魔法の爆発による直接的な痛みはないもののかなりの距離を飛ばされた影響で地面に這いつくばる俺の元へ気だるげな顔をしたレイラさんがやってきた。


 朦朧とした意識の中、俺は心の同志へと問いかける。


「レ、レイラさん、どうして⋯俺を?」


 どうして俺を裏切ったの?


 どうにか顔を上げた俺に、メイド服のよく似合う彼女はあくびをひとつ。


「申し訳ございません。

 ワタクシは結界魔法が得意な護衛もこなせるスーパーメイドなのですが。咄嗟のことにタクト様にだけ張り忘れてしまったようです。 

 まあスーパーとは言っても、しょせんワタクシは駄メイドですからね」


 ダメイドですからね――ダメイドですからね――ダメイドですから――ね。


 俺の頭の中にポツリと吐き捨てられたそれ(・・)がこだまする。


「そ、そんな⋯まさか」

 

 俺が呼び間違えたあの一瞬――はっきりと聞き取っていたというのか⋯⋯!?


「それではタクト様。 暫しおやすみなさいませ」


 もう一度あくびをしたレイラさんは俺に優しくお休みの挨拶を投げかけたあとスッと踵を返す。

 

『ああ、馬車へ運んだりは出来ませんよ?ワタシ、二度寝するんで。 仕方ないですよねーワタシ、駄メイドっすから』という冷たい言葉を残して。


 大切な幼馴染を置き去りにし、職務をまっとうする優秀なメイドさんを心の内で罵倒した。

 己の浅はかな言動を省みた俺は残る気力を全て振り絞り彼女へと言葉を叫ぶ。






 

「――⋯こんのッ!()メイドがーーーーーッ!」





雫「たくにー。 まじ。 あわれ」


沙清水「これに懲りたらちょっとは⋯はあ。 これで懲りるやつなら世話ないか」


愛花「今回はちょっとひどすぎたかなー? たっくん、友達を見捨てちゃダメよ?」


タクト「は、ん、ぜ、い、じ、で、い、ま、ず」


(地面に転がるタクトを木の枝でツンツンする三姉妹とどうにかして次女を転ばそうとたくらむタクト)



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