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電波猫のお仕事  作者: おばば
石器時代編
7/122

7.電波猫と鬼ごっこ

 常ならば反射の無い魔力索敵に、微弱ながらも反応があったことに、私は当初歓喜した。感覚器に優れる我らは、大型の獣であろうと探知、逃走することに長けている。しかし身の危険がないことと、生活の充足はまた異なるベクトルデータだろう。

 平らに言えば、私は会話に飢えていたのだ。


 蛇殿の様にとは言わないが、魔力波を垂れ流している存在である。何かしら会話めいたものは出来ないかと、走査範囲の外縁ギリギリから魔力波を放つ。周波数は蛇殿との会話に用いていた値で、出力は私の検出限界の2倍程度。なに、これで気づかぬ程度の盆暗なら恐れることはない、と踏んでのことだった。


 反応は激烈であった。対象の背後から、幾つもの樹木の間を縫うように放った魔力波が、到達するや否や、爆発にも似た衝撃波に空気が震えた。猪突猛進、正しくその言葉を体現するかの如く、あらゆる障害物を薙ぎ倒し、その熊は私の隠れる藪中に向かってくる。


 あらゆる感覚器が異常を示す。急速な体温上昇、神経系の異常加速による電磁誘導によるものか、電磁の双方の強度上昇、なによりも。

 その圧倒的な巨躯が視覚を埋め尽くし、先程までの矮小な魔力強度が激増している。

 衝撃波で機能不全に陥っている聴覚系をキルして空いた領域に無意識下にプリセットした緊急反応に火が入る。しゃっくりと同じ原理で地面を蹴飛ばして、熊との交線外にある樹木に飛びつく。

 突然の横Gに視界の端が暗くなりかけることにかまっている暇など無い。鬱蒼とした樹林を枝から枝へ跳躍を繰り返す。背後に再度の爆発音。生木のへし折れる粘つく音に背筋が凍る。


 あんな物が尋常の生命な訳が無い。

 あのような使い方をして壊れない天然有機物を私は知らない。

 何よりも、未知であろう反応に対して、警戒や逃走よりも、一方的な蹂躙を即断する機構を持つ常命などいるはずが無い。


 あれは、動物の形をしているだけのナニカだ。

 そしてそれは恐らく、私の持つ魔力を喰らい、集めるための。



 怖気のする鬼ごっこはそこから、3日に渡って続いたのだった。


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