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電波猫のお仕事  作者: おばば
石器時代編
12/122

12.電波猫と冬

 寒さに目が覚めた。

 体のあちこちからこれでもかと言うほどの警告が飛んできていた。筋繊維の断裂、人類への殺傷未遂に対する倫理違反、魔力の枯渇、はてはいつの間にか首裏辺りに住み着いた虱による衛生管理違反まで。

 鬱陶しいな、と思った。

 そもそも腹が減っているのも、体中が痛いのも、感覚器から直接拾っている。そう何重に警告されて、だからどうしろというのか。警告のほとんどを無意識下に捨て去って、欠伸を一つ。

 

 雪が降っていた。


 昨日はロクに確認していなかったが、登った木の上からは辺りが良く見渡せた。曇天のなか、光量から太陽の位置に当たりを付ければ、北に向かって延びる緩斜面いっぱいに、橅や水楢などの広葉樹が繁茂している。幅広な河川が大きく蛇行して流れている。その水面から湯気が立っているのは、気温が水温よりも尚低いからだろう。

 南に目をやれば、葉を落とした木々の隙間に二つの頂点を持つ山が見えた。山頂は既に冠雪しているが、その合間から黒々と覗く岩肌から、その山頂は森林限界よりもかなり高いことが見て取れる。あちこちに針葉樹が群生しているのは、熔岩の上面だろうか、硬い岩肌に縋り付く様に這松が茂っている。

 腹が減った。

 しばらく真面に食事を摂っていないせいか、体は鉛の様に重かった。のそのそと時間を掛けて、木から地上に降りると、足元で落ち葉がカサリと音を立てた。

 熱源探査をばら撒くと、落ち葉の下を動く反応が幾つか拾えた。鼠かモグラかは知らないけれど、今の私にとってはご馳走に違いない。何匹かの獲物を狩り取って、ようやく腹が満たされた頃、私はようやく肚を決めることが出来た。

 対話しかない。

 たとえ、こちらを食糧としてしてしか見られない野蛮人であろうと、彼は紛れもなく人である。ならば対話こそが次なる目標であろうよ。

 やるべきことは多い。まずは言語の習得と、こちらとの対話を応じることになにかしら対価を示さねば、明晩、憐れな猫鍋にされることは目に見えている。

 面倒だな、と思うと同時に、久方ぶりに他者とのコミュニケーションを前提とした活動に、不思議な高揚感を感じた。

 さて、ではまずは手土産の一つでも持っていってみようか。


 


 


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