今川城御前試合③
第5試合目が始まろうとしている。
その男は、蝦蟇渋郎と名乗っていた。そして素手であった。
ただし、手には手甲と足には具足が付けられていた。
そしてこの男は、異常に足が長い為に身長も2メートルはあった。
そしてこの男は推薦でなく、公募で勝ち上がった1人であった。
なんでも足を振り回して戦うスタイルで、何人もの強豪を倒していた。
素手で相手を倒す古武道の一種で、蝦蟇流と名乗っている。
何処かで古武道を習い、自己流にアレンジしたものだろう。
そして、相手をするのは、狙撃隊の1人だった柏木源九郎。
接近戦になった時に使う、銃剣の達人だった。
忍者隊の格闘技を取り入れて、発展したものだった。
ここで使われるのは木製のライフル銃で、先には竹製の剣が付いていた。
俺も見た事があるが、銃剣をくるくる回して戦う姿は凄いものがあった。
互いの御前にお辞儀をして、向き合った相手にもお辞儀をしている。
そして準備も整ったようだ。
見届け人が合図の「始め」と言い放った。
蝦蟇渋郎は、サッと体を沈めた。
まさにガマが地面に這っている姿に似ている。
源九郎は、一瞬だが困った顔をした。
槍ならいいが、銃剣で足下を攻撃すればスキが出来てしまう。
そしてその瞬間だった。蝦蟇が速い移動から蹴りを放った。
なんとか銃剣で防いだ。しかし体を回転させながら蝦蟇の回し蹴りが襲ってきた。
仰け反ってかわしたが、次の回し蹴りが低く襲ってくる。
仰け反った勢いでバク転してかわした。
両者は睨みあった。
「やるではないか? 大名の家臣は腑抜けだと思っていたが違う奴もいるもんだ」
「お前もやるな。俺らは戦った経験が豊富だ。そこらの大名と同じにするな」
蝦蟇はジャンプして空中から蹴りが襲う。
銃剣で受けた。更に連続の蹴りが襲ってきた。
すばやく持ち替えて銃床で蹴りを打ち返した。
バランスを崩しながら、回転移動に入った蝦蟇が更に低い蹴りを放った。
又も銃床で蹴りを叩き付ける。
「ガン」と音がした。
引き抜こうとするがビクともしない。
仕方ないと思ったのか、足を縮めて固定された足に近づくと右足を突き出してきた。
またも銃剣で受止めた。
そのスキに一気に後方へ移動。
又も睨みあった。
「やりおるな、最終奥義を出す羽目になるとは思いもしなかった。これでお前は終わりだ」
更に低い姿勢で回転して来る。
その回転に勢いが付いてきた。
放たれた蹴りは威力があって、銃剣で防いでも衝撃を受けてしまう。
防ぐしかない程だ。
次の蹴りが凄かった。防いだがその勢いが体にも当たった。
体がふらついた所へ、回し蹴りが襲った。
蝦蟇は変だと思った。あれ? 空気を蹴ったように衝撃がない。
その瞬間だった。背中に撃痛が襲った。
蝦蟇の背中に銃剣が刺さっていた。
蝦蟇が蹴ったのは、布だった。
源九郎は、忍者が使う変わりの身で目くらましをした。
そしてジャンプして、蝦蟇の中心点に銃剣を突き刺した。
見届け人が「早く救護班を呼べ」
又もや救護班が出動して、担架で運ばれていた。
背中には銃剣が刺さったままだ。抜かなかったのは、出血をさせない為だった。
見届け人が「勝者、柏木源九郎」と大きな声で言った。
大名から唸る声が聞こえていた。
俺はお構いなく拍手をおくった。
柏木源九郎は、てれるように頭を掻いていた。
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