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今川城御前試合




今川城の奥に庭で、御前試合が開催された。

名だたる大名が推薦すいせんした剣士たちが揃っていた。


使うのは木刀でなく、竹刀だ。

槍を使う者は、先が竹刀に改造されている。


木刀での試合は、大怪我がつきものだ。

下手をすると死ぬ事もありうるのだ。


この御前試合を願ったのは、やはり大名だった。

かれこれいくさが無くなり、名を広める場がなくなった。

強い剣士を雇うのも、大名の趣味となっていた。


第1試合目が始まった。


柳生宗厳やぎゅうむねよしが不動のまま立っていた。

この宗厳は、上泉信綱かみいずみのぶつなより伝授された新陰流の剣豪として名高い人物だった。


それに対するは、播磨志津子はりましずこは黒田官兵衛が推薦した。

無名で歳は28歳だった。

手に持っているのは長刀であった。先は竹刀タイプになっている。



見届け人が「始め」と言い放った。


動いたのは志津子だった。鋭い一撃が宗厳の足元を襲い続けた。

右足、右足、左足と執拗しつように攻撃が続く。


宗厳も動く寸前に、その足が狙われた。


一気に踏み込んでも懐に入れないことは、宗厳の重々分かっていた。

終始、長刀の攻撃範囲に置かれ続けた。


体を回転した途端に、凄い勢いで宗厳を襲い首に当たる寸前にピタリと止まった。

宗厳の突き出した片手での突きは、届かなかった。


「勝負あった」と見届け人が言い放った。


見ていた者からどよめきが出ていた。

黒田官兵衛を見た志津子は、笑顔だった。




第2試合目が始まろうとしている。


松平家から本多忠勝ほんだただかつが出ていて、今川義元や松平元康に向きお辞儀をしている。


そしてその相手は、伊達家からの推薦の男だったが、控えの間から中々出てこなかった。

しかし、そこから出てきた進行役が言うには、賊に襲われて大怪我を負った。


その賊は捕らえられたらしい。捕まえたのは、忍者の月丸であった。

服に付いた血痕けっこんが決め手であった。


なんでも昔に遺恨いこんがあって、偶然にここで出会って刃傷騒にんじょうさわぎになった。

一瞬で、大名から注目を浴びた伊達政宗は、苦々しい顔をしている。


仕方ないので、2試合目は本多忠勝の不戦勝となってしまった。

俺が知っている者が、試合に出るので楽しみにしていたのに・・・



第3試合目が始まろうとしている。


薩摩からの推薦は、瀬戸重直せとしげなお

毛利からの推薦は、高杉新八たかすぎしんはち


この両者は異様な雰囲気を出していた。


瀬戸は盲目であった。

高杉は左腕が無かった。


この両者は、以前に試合を行なって引き分けになっていた。

その試合で、瀬戸は盲目になってしまった。

高杉は左腕を木刀で叩かれても我慢して、反撃で相手の視力を奪った。

その木刀の打撃が原因で、腕を切り落とす羽目になった。

そんな凄い一撃を我慢した高杉も凄かった。



瀬戸重直は、盲目なって御役目御免おやくめごめんの身となった。

それからは酒びたりだった。


ある日、ゴロツキに絡まれた。殴る蹴るにあいながら、殴る気配や音で人物が見えた気がした。

地面に落ちていたまきで撃退してしまった。


その後は猛練習の日々を過ごした。

投げられた石を避けるまでなっていた。瀬戸の才能が開花した瞬間だった。




高杉新八は、剣士の道をあきらめずに日々努力していた。

しかし、以前のように鋭い打ち込みには程遠い。


子供たちのコマ回しの遊びを見ていて、幼い子が回るコマを触って怪我をした。

その時に、ハッとしたのだ。

自分自身がコマのように回れば、鋭い打ち込みにも負けないと感じた。


日々回って、目を回す日々だった。

人間、慣れとは凄いもので1ヶ月で目を回すこともなくなった。

それ以降、回り方の改善を行い努力した。

今日、御前試合に立てるのも、努力の賜物たまものだった。




瀬戸は、御前で真剣で望みたいと言い放った。

普通でない言葉に驚く試合見届け人は、「あのように言っている。高杉新八は如何いかがかな」


是非ぜひも無く」と答えた。


そして見届け人は、俺の方を見た。

俺は竹中半兵衛の方を見た。竹中半兵衛はうなずいた。

仕方ない、俺も頷いた。


真剣に持ち替えて、見届け人が「始め」と言った。



瀬戸は上段に構えた。

高杉は中段のまま右にゆっくりと移動。

瀬戸は見えるように、その向きに体を合わせた。


30分も、静まり返った試合が動いた。

高杉が体を回転させながら瀬戸へ近づいた。

途中で逆回転になって、移動の向きが急に変わった。


それに合わせるように小刻みに動く瀬戸だった。


高杉の回転は、地を這うように動いていた。

足さばきは激しく交差して動いていた。

そんな動きができるのかと、皆は驚きの目で見ていた。



高杉は回転したままジャンプした。

瀬戸は、刀を一瞬で振り下ろした。


高杉は瀬戸の後方に、着地して崩れるように倒れた。

高杉は胸を斬られて瀕死の状態でもがいていた。


瀬戸は首を斬られて、頭が地面に転がっている。

それなのに瀬戸は、立ったまま動かなかった。


試合場は血の海だ。


俺が駆けつけた時には、高杉新八は息をしていなかった。




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